『SING/シング:ネクストステージ(吹替)』

TOHOシネマズ上野、スクリーン2入口脇に掲示された『SING/シング:ネクストステージ』チラシ。
TOHOシネマズ上野、スクリーン2入口脇に掲示された『SING/シング:ネクストステージ』チラシ。

原題:“Sing 2” / 監督&脚本:ガース・ジェニングス / 製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー / キャラクターデザイン:エリック・ギヨン / 編集:グレゴリー・パーラー / 音楽:ジョビィ・タルボット / エグゼクティヴ・ミュージック・プロデューサー:ハーヴィー・メイソン・Jr. / 日本語吹替版音楽プロデューサー:蔦谷好位置、日本語歌詞監修:いしわたり淳治 / 吹替版音響監督:三間雅文 / 声の出演:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、スカーレット・ヨハンソン、トリー・ケリー、タロン・エガートン、リック・クロール、ガース・ジェニングス、ジェニファー・ソーンダーズ、チェルシー・ペレッティ、ボビー・カナヴェイル、ニック・オファーマン、アダム・バクストン、エリック・アンドレ、ホールジー、レティーシャ・ライト、ボノ(U2)、ファレル・ウィリアムス、ジュリア・デイヴィス / 日本語吹替版声の出演:内村光良、坂本真綾、長澤まさみ、MISIA、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)、田中真弓、大地真央、井上麻里奈、大塚明夫、奈良徹、山寺宏一、木村昴、アイナ・ジ・エンド、akane、稲葉浩志(B’z)、ジェシー(SixTONES)、林原めぐみ、山下大輝、三宅健太、佐倉綾音、竹内アンナ / イルミネーション製作 / 配給:東宝東和
2021年アメリカ作品 / 上映時間:1時間50分 / 日本語字幕:石田泰子 / 吹替版翻訳:桜井裕子
2022年3月18日日本公開
公式サイト : https://sing-movie.jp/
TOHOシネマズ上野にて初見(2022/3/18)


[粗筋]
 潰れかけだった劇場を《ニュー・ムーン劇場》として立て直し、連日満員御礼の人気劇場にしたバスター・ムーン(マシュー・マコノヒー/内村光良)は、次なる夢へと動き始めていた。エンタテインメントの中心地レッドショア・シティでホテルと一体化した大型劇場を運営する大物ジミー・クリスタル(ボビー・カナヴェイル/大塚明夫)のスカウトマン・スーキー(チェルシー・ペレッティ/井上麻里奈)が、バスターのステージを視察に訪れたのだ。ステージの評判は上々だが、バスターとキャストはさらに熱を入れて演じる。
 しかし、スーキーは第1幕が終わったところで劇場を去ってしまった。慌てて追いすがったバスターが受けた講評は、“三流のショー”だった。スーキーの評価次第では、クリスタルのステージに立つためのオーディションを受けられるはずだったが、それさえ認められなかった。
 いちどは落胆したものの、劇場の後援者ナナ(ジェニファー・ソーンダース/大地真央)に発破をかけられ一念発起したバスターは、劇場を離れていたロックシンガー・アッシュ(スカーレット・ヨハンソン/長澤まさみ)にも呼びかけ、メインキャストたちと共に直接レッドショア・シティへと赴いた。
 当然のごとく門前払いを受けたが、清掃員のふりをして会場に潜入、バスターたちはどさくさに紛れてオーディションに参加を果たした。だが、結果はやはり不合格。それでもバスターたちは、クリスタルの眼鏡に適うような大風呂敷を広げて歓心を買おうとする。ただの悪あがきだったが、グンター(ニック・クロール/斎藤司)が何気なく持ちだした《クレイ・キャロウェイ》という名前がクリスタルの気を惹いた。ここぞとばかり、壮大な計画をぶち上げたバスターは、見事に3週間後、公演を催す約束を取り付けた。
 しかし問題はここからだった。クリスタルを乗せたい一心で企画をまくし立てたが、その場の勢いなので、当然具体像はない。美術や衣裳の制作にも時間が必要なので、バスターはグンターと共にステージの内容を一気に詰めていった。
 もっと大きな問題は、クレイ・キャロウェイ(ボノ/稲葉浩志)だった――かつて絶大な人気を誇ったロックシンガーだが、15年前に最愛の妻を喪って以来、外界との関わりを断ってしまっている。もちろん、バスターたちの誰ひとりとして、面識どころか伝手さえない。どうにか住居だけ探り当てると、アシスタントのミス・クローリー(ガース・ジェニングス/田中真弓)を送りこむが、まさにとりつく島もない有様だった。どうにか演目だけはでっち上げたバスターは、アッシュと共にクレイ・キャロウェイの説得に赴く。
 一方、ニュー・ムーン劇場の演者たちも、これまでにないキャパシティと大掛かりなセット故に、皆が新しい挑戦を強いられ苦戦していた。果たして一同は、無事に上演に漕ぎ着けられるのか――?


[感想]
 前作がヒットしたのは、日本語吹替版に絶妙なキャストを起用したから、と考えている。もともと、クライマックスにおける音楽を存分に活かしたステージが最大の見せ場、という作品であるが故に、歌唱も担当するキャストが鍵を握っているのは自明だ。その点、前作は意外性がありながらも、オリジナルの雰囲気を損なわないキャストが絶妙に起用されていた。話題性も含め、吹替版で質を維持できたことが日本で当たった最大の要因だろう。
 それゆえに、続篇である本篇でも日本語版のキャスティングに抜かりはない。前作のキャストは全員再起用され、新たなキャラクターにも、歌唱力の評価が高いアイナ・ジ・エンドに加え、目玉として、長年にわたって本邦のトップランナーであるB’zのヴォーカル・稲葉浩志を起用、前作以上の贅沢さ、お祭り感を演出している。
 ただその意味で惜しまれるのは、稲葉浩志が歌う楽曲が、このヴォーカリストの魅力を感じにくい作りになっている点だ。オリジナルではU2のボノが担当するこの曲は、確かにボノなら声のトーンが合っていると思うが、稲葉の本領とも言えるハイトーンを活かした旋律がない。それゆえに、満を持して登場した際に、充分なカタルシスが得られない可能性がある。
 それ以外の点はまったく抜かりがない。こと、前作が楽しめたひとならば、ほぼ満足のいく内容である。
 前作で、念願であった劇場の復興を成し遂げたバスター・ムーンは、しかし更なる夢を追求する過程で大きな壁に阻まれる。そこで、いささか強引なかたちでチャンスを得るが、後先を考えない大風呂敷と、思惑通りにいかないキャストたちの言動に追い込まれていく。
 キャスト側もまた、それぞれに問題や悩みを抱えている。メインキャストに抜擢されたのに、見せ場のワイヤーワークが出来ないロジータ(リース・ウィザースプーン/坂本真綾)、経験のないダンスパートに苦戦するジョニー(タロン・エガートン/大橋卓弥)、恋愛感情を上手く表現出来ずに悩むミーナ(トリー・ケリー/MISIA)、そしてとりわけ、妻の死を引きずり表舞台から退いたクレイ・キャロウェイ。モザイク状にちりばめられた個々のエピソードが、クライマックスのステージで集約され昇華される昂揚感は前作に勝るとも劣らない。
 ただ、恐らくは誰もがこの昂揚感を共有するのは難しい、という気もする。大きなポイントはふたつ考えられる。ひとつは、個別のエピソードが全体に繋がる一貫性を生み出せていないこと。もうひとつは、前作以上に場当たり的で無計画なバスター・ムーンの姿勢に対する違和感だ。
 前者は、群像劇として捉えれば、無理に統一感を出していないことが却って、多くの観客の心に訴えかける広汎な可能性を生み出している、と好意的に考えることも出来るが、後者はやや厳しい。既に地元では充分な成功をしている劇場のメンバーを引っ張り出しておきながら、大きな劇場でかけるアイディアも無いままオーディションに臨み、どうにか大言壮語でステージの権利を得るものの、やはり明確なアイディアはない。むろん物語はハッピーエンドとなるが、そのあまりにも危険な綱渡りは、ハラハラを生む一方で、ひとによっては苛立ちをもたらす可能性もある。スタッフとキャスト、個々の魅力や才能を信じ、勇気をもって仕事を託すあたりに、彼なりのリーダーシップを見てとることも出来るが、無計画さ、無責任と評価することも出来てしまう。広い年齢層を対象としたアニメーションらしいダイナミックな展開に奉仕しているのも確かだが、それゆえに好き嫌いは分かれそうだ。
 しかし確実に言えることは、前作を楽しんだひとならば、かなりの満足を得られる仕上がりだ、ということである。オリジナル音声でも吹替版でも、贅沢感のあるメインキャストが続投し、新キャラにも話題性、ネームヴァリューの確かな面々を起用、ステージそのものの内容も含めて鮮やかにスケールアップしており、前作の魅力をそのままに増幅させた、正しい続篇に仕上がっている。仮に前作に接していなくとも、妙なリアリティより細部のユーモアと、全体像が生み出すカタルシスに魅力を感じるひとならば十二分に堪能出来るに違いない。


関連作品:
SING シング
銀河ヒッチハイク・ガイド
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