『大室家 dear sisters』

TOHOシネマズ上野、スクリーン7入口脇に掲示された『大室家 dear sisters』チラシ。
TOHOシネマズ上野、スクリーン7入口脇に掲示された『大室家 dear sisters』チラシ。

原作:なもり / 監督&コンテ:龍輪直征 / シリーズ構成&脚本:橫谷昌宏 / 助監督:岩﨑安利 / キャラクターデザイン&総作画監督:植田和幸 / 撮影監督:浅川茂輝 / 美術監督:緒続学 / 色彩設計:小松亜理沙 / 編集:瀧川三智 / 音響監督:ひらさわひさよし / 音響制作:Cloud22 / 音楽:白戸佑輔 / 声の出演:加藤英美里、斎藤千和、日高里菜、倉知玲鳳、伊藤彩沙、古賀葵、上坂すみれ、東山奈央、悠木碧、三森すずこ / アニメーション制作:パッショーネ×スタジオリングス / 配給:Showgate
2024年日本作品 / 上映時間:43分
2024年2月2日日本公開
公式サイト : https://ohmuroke.com/
TOHOシネマズ上野にて初見(2024/2/5)


[粗筋]
 大室家には長女・撫子(斎藤千和)、次女・櫻子(加藤英美里)、三女・花子(日高里菜)の三人の娘がいる。成績も素行も優秀な長女と三女が、成績も素行も残念な次女に年がら年中振り回されている格好だが、仲はいい。
 長女は高校、次女は中学、三女は小学校で、みんな賑やかだが平和な日々を過ごしている。これはそんな三姉妹の、毎日のほんの一部分。


[感想]
 ひどく粗筋があっさりとしてしまっているが、これ以上に書きようがない。
 なにせ本当に、大室家の三姉妹の日常を断片的に引っ張り出して並べているだけなのだ。原作がそうした、いわゆる“日常系”のスタイルで綴られるコメディの様相なので、正しくその雰囲気を再現しようとすれば、粗筋は極めて書きにくくなるのが道理だ――だって、細かいエピソードの蓄積になるので、うっかり断片でも拾おうものなら、その着地点まで書かねばならなくなる。たとえ原作をなぞっていたとしても、「どこをどうアニメ化するのか?」というところを楽しみにしている観客の方に明かしてしまうのは罪だ。結果、上の粗筋なのである。どうかご容赦いただきたい。
 ただ、ひとつだけ確実に断言できるのは、アニメ化としてこれ以上ないほど理想的だ、という点だ。絵柄までほぼ原作通りであり、エピソードも(私の記憶する限り)原作から抽出したもののみで構成されている。そして雰囲気も、まさにあの漫画そのものだ。過剰な付け足しはしていないし、キャラクターの魅力を損なってもいない。
 だから、率直に言えば、原作の知識なしにいきなり鑑賞するような奇特なひとが満足する可能性はかなり低い。いちおう細かな笑いは誘うが、1本の映画としてまとまったテーマやオチはないからだ。三姉妹やそれぞれの友人たちとのほんわかとした仲の良さに、少し百合が香ってくる程度である。波乱も起きずに終わってしまうので、何かの間違いで本当にいっさいの予備知識なく鑑賞してしまったら最悪怒りだしてしまうかも知れない。
 だが、それでも脇役まできちんと立ったキャラクターたちが、表面的には対立しつつも寄り添っているさまは観ていて快い。突拍子のない行動に及ぶ櫻子に呆れながらも、何かがあればちゃんと手を差し伸べる撫子と花子。出来が良すぎる花子に素直に感心して、からかいではなく本心で“花子様”と呼び始める同級生達。撫子だけは、高校で行動を共にする友人たちの誰かと恋愛関係にありながら周囲には隠しており、秘めやかな艶っぽさを滲ませるが、その気持ちを秘密にしてでも友人たちとの雰囲気を壊したくない、という感情が垣間見えて、仄かに甘酸っぱくも微笑ましい。
 そして、こうした何気ないひと幕の連なりを、本篇は驚異的に丁寧に仕上げている。実写を背景に取り込んだオープニングの実在感にも驚かされるが、すべてが絵になったあとの背景も終始丁寧だ。そして、肝心のキャラクターたちの表現も細かい。顔を跳ね上げるときの髪の躍り方、感情が変わった瞬間の絶妙な顔の変化など、テレビシリーズなら省略されそうな表現が随所で用いられ、実に眼福だ。タッチが原作準拠であるため、あの愛らしい絵が本当に活き活きと動いている姿が堪能出来る。
 強引に教訓を読み取ることも出来るだろうが、それよりはこのちょっと騒がしくて、ほんわかとした空気に身を浸すのがいちばん正しい楽しみ方だろう。その意味では、僅か43分しか尺がないのが最大の弱点でもあるのだが、この語り口で90分を超えるとさすがに違った疲れが湧いてくるので、相応しいのかも知れない。もっとこの世界に浸りたいなら、続篇を待てばいい。

 ちなみにその続篇、同年の6月21日に『大室家 dear friends』のタイトルで公開されるのが既に決まっている。本篇の仕上がりが丁寧で楽しかったので、私は次もちゃんと鑑賞するつもりだが……いまから粗筋をどう書くのか悩ましい。もはや、この項とおんなじ粗筋でも構わないんじゃなかろうか。


関連作品:
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〔新編〕 叛逆の物語』/『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』/『ARIA the BENEDIZIONE』/『トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』/『スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』/『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』/『ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!
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