『ターミネーター』

TOHOシネマズ日本橋、エレベーター前に掲示された『ターミネーター』上映時の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。
TOHOシネマズ日本橋、エレベーター前に掲示された『ターミネーター』上映時の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。

原題:“The Terminator” / 監督:ジェームズ・キャメロン / 脚本:ジェームズ・キャメロン、ゲイル・アン・ハード、ウィリアム・ウィシャー / 製作:ゲイル・アン・ハード / 製作総指揮:ジョン・デイリー、デレク・ギブソン / 撮影監督:アダム・グリーンバーグ / プロダクション・デザイナー:マリア・カソ / 編集:アダム・ゴールドブラット / 衣装:ヒラリー・ライト / 特殊メイク:スタン・ウィンストン / キャスティング:スタンツィ・ストークス / 音楽:ブラッド・フィーデル / 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、マイケル・ビーン、ポール・ウィンフィールド、ランス・ヘンリクセン、リック・ロッソヴィック、ベス・モッタ、アール・ボーエン / 初公開時配給:Warner Bros. / 映像ソフト最新盤発売元:Walt Disney Japan
1984年アメリカ作品 / 上映時間:1時間47分 / 日本語字幕:岡枝慎二 / PG12
1985年5月25日日本公開
午前十時の映画祭11(2021/04/02~2022/03/31開催)上映作品
2018年3月16日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD VideoBlu-ray Disc]
初見時期不明(たぶんテレビ放映)
TOHOシネマズ日本橋にて再鑑賞(2021/08/10)


[粗筋]
 核戦争により、人類は絶滅の危機に瀕していた。生き残った僅かな人びとも、無人工場が製造した《ハンターキラー》に狩られ、隠れて生きるほかない。ただひとつだけ残された希望を巡る戦いは、時空を越え、現在――1984年に舞台を移した。
 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)はその頃、なんの取り柄もない女性だった。職場であるレストランのホールではしょっちゅう失敗を繰り返し、客にも同僚にも馬鹿にされている。突然、同僚のひとりに休憩室に連れ込まれたかと思うと、見せられたのは、同じ地区に暮らす別のサラ・コナーが殺された、というニュースだった。
 だが警察では既に、サラ・コナーに危機が迫っていることを察していた。テレビで報道されたその頃、2人目のサラ・コナーが屍体となって発見された。奇しくも、電話帳の並び通りに殺害されている、と察したエド・トラクスラー警部(ポール・ウィンフィールド)は、この事実をあえて公表することで、犯人への牽制と“サラ・コナー”に対する注意喚起を図った。
 警部の思惑通り、テレビの続報によりその事実を知ったサラは、自宅への帰り道、何者かに尾行されていることに気づいて恐怖する。道中のクラブに入り、警察に電話するが、似たような通報が多発しているのか回線が混み合って繋がらない。やむなくルームシェアをしている友人のジンジャー(ベス・モッタ)に助けを求めるが、留守電しか応答はなかった。
 二度目の通報でようやく警察に繋がり、警部から反故を約束されたサラは、そのクラブで待っていた。そこへ、筋肉質の巨漢(アーノルド・シュワルツェネッガー)が現れ、おもむろに拳銃を向ける。サラが反応するよりも早く、彼女を尾行していた男がショットガンで巨漢を撃った。
 阿鼻叫喚の惨状となったクラブから、サラは男によって連れ出された。奪った車の中で、カイル・リース(マイケル・ビーン)と名乗った男は、信じがたい説明をする。あの巨漢は未来の世界から、サラを消すために送りこまれたサイボーグ――《ターミネーター》なのだという……


[感想]
 もはやSFアクションの金字塔として定着している本篇だが、いまの眼で観ると、予算の低さは察しがつくし、映像のクオリティも決して高くない。
 思いのほか気になるのが終盤、骨格のみになったターミネーターの動きだ。最近の映画に登場するロボットやマシンの滑らかな動きと比較すると、あまりにぎこちない。デジタルも多少用いてはいるのかも知れないが、恐らくこの頃はまだストップモーションアニメの技術を流用していると思われ、それを通常の人間や背景と重ねているが故に、やたらと浮いて見えてしまう。
 そして、アクションが思いのほかシンプルだ。息つく暇もない展開ゆえに、もっと多彩なアクションを盛り込んでいるイメージだったが、実際にはそれほど数もなければ、趣向としての特異性もそれほどではない。むろん、人間と同様の姿で機械の機能を持つ敵との戦い、という発想が珍しくなくなった現在の眼で見ているせいもあるのだが、そこを割り引いても、「撃っても車で撥ねても立ち上がってくる」という点が特異なくらいで、アクションとして目新しさはない。
 だが、そうした欠点を認めたうえでも、本篇は滅法面白い。個人的には続篇『ターミネーター2』ほど繰り返しは観ていないとはいえ、それでも大まかな筋は記憶しているのに、充分楽しめるのだ。
 物語としての構造はシンプルなのだが、そのパーツの配置が絶妙に巧い。未来から訪れる刺客と戦士を相次いで登場させて対比させ、この時点で両者の特性、意思の違いを既に細かく匂わせる。既にいちど鑑賞して背景を知っていると、この繊細さに唸らされる一方、何も知らずに鑑賞すると、多くの謎を投げかける語り口だ。
 そして、このふたつのキャラクターが交錯する瞬間の工夫がまた絶妙だ。この時点で、ターミネーターによる殺戮は描かれているが、もう一方のカイルが何を目的としているか、は明示されていない。そのカイルに追われていることに気づいてサラは恐怖する。彼女と同様、カイルの目的を知らない観客もまた同様の恐怖、緊張を覚えるだろう。そこへターミネーターが現れることで、観客の緊張も頂点に達する。そこで初めてカイルがサラを追っていた意図が直感的に理解できるが、その事実を消化しきらないうちに、物語は次の段階に進む。ショットガンで撃たれても倒れず、衆目など気にかけず襲い来る、常軌を逸した怪物からの逃走劇へと一気にシフトするのだ。息をつく暇もない展開に、観ている側は完全に惹き込まれてしまう。
 突然、人類の運命が双肩にかかっている、と教えられたサラの困惑や恐怖、帰る方法もなく過去へと送りこまれたカイルの悲愴な覚悟、そうした感情の交錯を描きながらも、ターミネーターの追撃は止まない。経験したことのない脅威と情報の奔流が、アクションシーンのシンプルさや、特撮技術の未熟さを乗り越えて、観る者の心を捕らえてしまうのだ。
 恐怖と緊張の合間に、ちょっとしたユーモアやロマンスの要素もちりばめ、適度な緩急も加えている。技術的な古臭さや単純さをものともしないほど、本篇は基礎となるアイディアと、構成が傑出している。
 本篇から7年を経て、監督は続篇を発表する。その後の作品でも成果を上げた監督は多額の予算と、新たに獲得した技術によって、アクションも特撮も本篇とは比べものにならないほど向上させ、歴史的な大ヒット作に仕立てた。しかし、その輝かしい成果は、間違いなく本篇があってこそ成り立っている。たとえ未熟な部分があるとしても、本篇の意義は大きいのだ。


関連作品:
エイリアン2 完全版』/『タイタニック』/『アバター』/『アリータ:バトル・エンジェル
ターミネーター3』/『ターミネーター4
プレデター』/『ザ・プロフェッショナル』/『ライトスタッフ』/『ストリート・オブ・ファイヤー
素晴らしき哉、人生!』/『市民ケーン』/『』/『2001年宇宙の旅』/『タクシードライバー』/『エレファント・マン 4K修復版』/『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』/『リベリオン』/『プライマー』/『アップグレード

コメント

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