第24回東京03単独公演「ヤな覚悟」 in 恵比寿ガーデンホール。

 この時期最大のお楽しみ、東京03の単独公演が今年も無事、開催の運びとなりました――新型コロナウイルスの感染者数はまだもーちょっと減らないかな、とハラハラする水準ですが、社会全体が対応に慣れ、こういうイベントならこのくらいの規模、こういう販売方法をすれば感染リスクは低い、というのが経験則的にも理解できてきたようで、コンサートでも順次開催されるようになってきている。東京03に至っては、かなり早い段階から客席の間引き、会場での物販を減らす、といったかたちで対応して何とか進めていたので、今年はもう問題なく開催されるだろう、と安心して待ってました。

 先週時点の予報では水曜日あたりまで陽気は微妙でした。しかし当日が近づくにつれ、予報が改善して、当日はお昼にはすっかり快晴。
 ……でも、果たしてバイクで出かけるべきか?
 バイクは自分のペースで移動できる気楽さはある。しかし、同時に道中の混雑にも影響されやすい。慣れた道でもそれなりに神経を使うので、疲れもある。電車なら、事故でもない限り、ぼーっとしても勝手に着きます。
 しかし結局は、いい陽気に誘われるようにバイクで出発。
 ……思ってた以上に、道路が厄介でした。
 おおむね道は楽だったのですが、六本木を抜けるところで問題は起きた。まず、オーバーパスで謎の渋滞に阻まれる。主義で、あんまりすり抜けはしたくなかったため耐えましたが、ここで10分は使った気がします。更に、いつも恵比寿ガーデンプレイスに向かうために使っている細い道に入るための目印にしていた建物が、いつの間にか無くなっている。気づいた瞬間には通り過ぎていて、次の交差点で慌てて左折。ちょうどそちらへくの字に折れる一方通行があったため、無事に戻れましたが、ここだけ異様にヒヤヒヤしました。
 想定よりやや遅れて到着、ガーデンプレイス内の駐車場にバイクを駐め、取り急ぎ早めの夕食を摂りに恵比寿駅の方へ。食事を済ませて、いよいよイベントです。

恵比寿ガーデンホールのエントランスに掲示された『第24回東京03単独公演「ヤな覚悟」』ポスター。
恵比寿ガーデンホールのエントランスに掲示された『第24回東京03単独公演「ヤな覚悟」』ポスター。

 毎度ながらの元マネージャー・大竹涼太作曲&演奏によるオープニングから、最初のネタ《先輩の助言》。のっけからきっちり掴んできます。03お得意の、社会人がテーブルを囲んでいるシチュエーションから、途端のひっくり返しで一気に笑いへと転がすと、あとはもうずーっと笑わされっぱなし。取っかかりの発想が、結構誰しも思い浮かべる話で、それをネタに昇華しているのが見事。1本目から素晴らしい完成度。初日とは思えない仕上がりで、ちょこっとだけ感じていた不安もブッ飛ばされました。
 続いてのオープニングテーマは、最近すっかりお馴染みになったニイルセンによる手描きアニメーション。ただ、今回はイラストはお飾り程度で、ほぼ書き文字のみ……なんとなくだが、音楽周りの仕込みがけっこうギリギリだったのではなかろうか。ゆえに、カラー加工で誤魔化していたとか。まあ、それでもちゃんと面白いので問題はない。
 二つ目のネタは、《いつも通り》。こちらはありそうでなかなか思いつかないシチュエーション。しかし、観客に大前提を植え付けたうえで、角田さんの派手な台詞回しと飯塚さんの細かな表情で細かく擽る手管が巧い。
 続いては幕間のVTR。しかしこの1本目はそこまで面白かったわけではない……けれど、早々に何をしたいか、察しはつきました。なので、ちゃんと成り行きを頭に叩き込んでおく。
 三つ目は《ある疑惑》。先行する2本のネタよりリアルで深刻な前振りから入る……のにちゃんと笑える不思議。恐らくここで起きることに対して、みんなが感じることをズバリと突いてくるからでしょう。察してからの飯塚さんの追求と角田さんの開き直り、そこから更に畳みかける重層的な組み立て。オチも痛快でした。
 幕間VTR二つ目は、案の定、1本目の幕間VTRから繋がった展開。それゆえに、従来のような別の仕掛けがあるパターンと言うより、ドラマの随所に笑いを仕込んでくる感じ。幕間VTRでそっくりそのまま1本のネタをやってるみたいな感じで、これはこれで新感覚。俄然、楽しみになってきました。
 四つ目のネタは《顔合わせ》。このくだりは一般人は体感することはまずなさそうですが、芸能界ではときどき起こりそうな構図。適度に舐められそうな角田さんのキャラクターと、豊本さんの怪しい佇まいが効いてます。もともとヤバい奴をやらせて絶妙な豊本さんですが、今回のこれは特に当たり役かも知れない。
 幕間VTRその3は、ニイルセンの手描きアニメーション……なんですが、こっちはなかなかの新機軸。ウインドウ風に動画をちりばめ、そこに手描きの解説やト書きを添えていく、という、従来の趣向を更に発展させた作り。これもやっぱりドラマの続きなんですが、妄想に妄想を積み重ねる、アイディ自体も好き。
 五つ目のネタは《許可》。これもわりあい、世間でよくありそうな展開をネタに膨らませてます。二人目まではありがちだけど、三人目まで持っていくのが着眼。そしてそこから、掛け合いの面白さで笑わせる。それにしても、豊本さんは楽なネタだ……タイミング合わせるだけで笑い取れるんだから。
 幕間VTRその4は、歌ネタ――ただし、いつもならもうひとつあとにやるはずの、物販宣伝込みの歌です。しかもなんか宣伝の仕方もお座なり。色々な事情を想像せずにはいられません……想像する私もだいぶ悪い。
 六つ目のネタは《最後の晩餐》。もはやお馴染みとなった豊美さん登場のネタ……今回、私は座席が左寄りで、舞台左手からテーブルに向かうかたちで座っている豊美さんの顔があんまり見えなかったのが残念。色々とイマドキのガジェットをちりばめてますが、仕掛け方は東京03らしい入り組みよう。ラストの卓袱台返しが最高でした。
 最後の幕間VTRは、ドラマの終幕にして、ライブのトリネタへの振り。展開自体はもう察しがついてますが、やっぱり細かい擽りは忘れてない。
 そして大トリ《覚悟してください》。案の定、VTRから繋がる大ネタです……ということは間違いなくオークラ脚本。そして恐らく、大まかな内容はけっこう早い段階でまとまっていたのかも知れません。実に綺麗に、VTRの内容がここに繋がってるし、何より、ここでタイトルを出せたのはたぶん、単独公演に通うようになって初めて、のはず。だいたい初日に駆けつけるせいで、最後のネタだけタイトルがないことがほとんどだったのよ。生部分の4本目《顔合わせ》から繋がる豊本さんのキャラクターに、ライブ全体を貫く“本音”と“建前”の温度差を巧みに駆使した、実にいい趣向。飯塚さんと角田さんの掛け合いで笑わせつつも、最後に豊本さんの怪演がトドメを刺してくる。なんだか今回の公演が、豊本さんが主演だった気がする、そんな着地でした。
 いつも通りに心地好いエンディングテーマで、締め括り。尺としては約2時間といつも通り、しかしものすご~くあっという間の気分だったのは、それだけ面白かったのでしょう。

 非常にいい気分で帰途に就きました……帰り際、工事のせいで狭くなっている動線に、薄暗いガーデンプレイスの照明のせいで、思わぬ段差に足を取られ右足首をひねらなきゃ最高の気分だったんですが。いまのところ痛みはありませんが、このあと入浴したら、湿布を貼っておくことにします……。

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