『96時間 レクイエム(字幕)』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン8入口脇に掲示されたチラシ。 96時間/レクイエム (非情無情ロング・バージョン) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

原題:“Taken 3” / 監督:オリヴィエ・メガトン / 脚本:リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン / 製作:リュック・ベッソン / 撮影監督:エリック・クレス / プロダクション・デザイナー:セバスティアン・イニザン / 編集:オドレイ・シモノー、ニコラ・トランバシエヴィッツ / 衣装:オリヴィエ・ベリオ / 音楽:ナサニエル・メカリー / 出演:リーアム・ニーソンフォレスト・ウィテカーファムケ・ヤンセンマギー・グレイスダグレイ・スコット、サム・スプルエル、リーランド・オーサー / ヨーロッパ・コープ製作 / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス

2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:松崎広幸 / PG12

2015年1月9日日本公開

2018年3月16日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon|ブルーレイコレクション(3作セット):amazon]

公式サイト : http://96hours.jp/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2015/01/28)



[粗筋]

 ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)と家族の関係はおおむね良好だった。もうすっかり大きくなった娘キム(マギー・グレイス)の誕生日に不釣り合いなぬいぐるみを選ぶミスは犯すが、共に死地を乗り越えて絆は固い。元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)も、現在のパートナーであるスチュアート(ダグレイ・スコット)との関係の悩みをブライアンに相談するほど、いまでもブライアンを信頼している。

 その日もブライアンの携帯電話に、合鍵を預けたレノーアから家にいる、というメールを受け取る。文面の頼み通りにベーグルを買って部屋に戻ったブライアンが見つけたのは、彼のベッドの上で骸となった元妻の姿。哀しみに震える暇もなく、部屋に警察が踏み込んできた。

 何者かにハメられたとすぐに悟ったブライアンは警官達を制圧、その場から脱出する。キムに母親が殺害されたことを知らせると、「誰ひとり信用するな」と忠告し、自ら犯人捜しに乗り出した。かつての仲間であるサム(リーランド・オーサー)の協力を得て、蒐集できる限りの情報を集めていく。

 一方、レノーア殺害の捜査に携わったドッツラー刑事(フォレスト・ウィテカー)は、ほぼ不可能に近い脱出を鮮やかにやってのけた手管から、ブライアンがただ者ではないことを察知する。それでも最重要参考人として、ブライアンを追跡した。

 果たしてブライアンを罠にかけたのは誰か。最強の父親の、最後の暴走が始まる――

[感想]

96時間』はその登場自体が驚きだった。既にオスカー候補にまでなっている演技派のリーアム・ニーソンが現役を退いた特殊工作員というキャラクターで本格的なアクションに挑み、充分すぎる説得力でそのキャラクターの厚みを体現した。もともと娯楽作品への出演も少なくなかったニーソンだが、アクション映画において積極的に肉体を駆使する役柄が増えたのはもちろん、世間のアクション映画に対するイメージも幅が広がったように感じる。実際、演技派を多数起用した『RED』もこのシリーズ第1作のあとの発表だった――むろん、企画の設計は『96時間』登場以前から行われていたはずだが。

 しかし如何せん、この設定はシリーズとして継続するには難しかった。現役復帰させてしまえば、ただ老いただけで未だ有能なプロフェッショナルの仕事として描かざるを得ない。この男を動かすには“家族の危機”しかなく、1作目で娘、2作目で元妻を救い、設定上ほかに身内のないブライアンの新たな“暴走”を引き起こすのは相当に厄介だっただろう。

 そういう意味で本篇は充分に健闘している。ブライアンに元妻の仇を探らせる一方、そのプライアンを追う警察にフォレスト・ウィテカー演じる切れ者の刑事を加えることで、シリーズ旧作のテイストに更なる緊迫感を加えることに成功している。特に、警察相手の逃亡劇では無闇に血を流すわけにはいかないため、プライアンが手加減をしているのが面白い。怒りに身を任せ、敵が圧倒的な悪党であった旧作は、容赦なく振る舞っていれば良かったが、今回はそこにメリハリがつけられている。

 それでいて、アクションのボリュームと質にも手加減はない。武装した警官を相手に、住宅街を縦横無尽に走り回る逃走劇、絶体絶命の状況から展開するカーチェイス。玄人ならではの技術で逃走と真相追究を同時に進めていくブライアンと、その能力を見越して肉迫していくドッツラー刑事との駆け引きも織り交ぜ、ストーリーの構成も巧い。

 しかしどうしても惜しまれるのは、3作も重ねているからこその物足りなさや違和感が生じてしまう点だ。家族を守るためにいっさいの手加減をしないブライアン、という設定に魅力を感じていたひとには、相手が相手であるがゆえに加減をするブライアン、という像がしっくり来ないだろう。また、従来の作品は終始シリアスな緊迫感に彩られながらも、ラストにはすべてが決着する爽快感があったが、本篇はそのよく練られた展開故に、どうしても爽快感が損なわれている。むろん物語上の必然性はあるし、その作りに大人が楽しむアクション映画としての深みがあるのも事実だが、なまじシリーズとして2作を重ねたあとだけに、評価が分かれるところではなかろうか。

 ただ、個人的にはその“冒険”を買いたい。結果的に2019年現在、同じキャストでの続篇は実現せず、テレビシリーズとして仕切り直しを図っているため、事実上完結篇となってしまったが、これ以上物語を積み重ね、同じ家族が延々とトラブルに巻き込まれ悲劇に見舞われる不自然を拡散していくことを想像すれば、むしろこれこそ綺麗な締め括りと言える。

 シリーズとしては決着したが、これでアクション映画の面白さに目醒めてしまったらしいリーアム・ニーソンは新しい作品にて、異なる役柄でその類い稀なアクション・センスを発揮している。演技派にして本格派のアクション俳優でもある彼の真価を最初に示したシリーズの、正しい着地点であると思う。

関連作品:

96時間』/『96時間 リベンジ

EXIT』/『レッド・サイレン』/『トランスポーター3 アンリミテッド』/『トランスポーター2』/『トランスポーター』/『ダニー・ザ・ドッグ

フライト・ゲーム』/『沈黙-サイレンス-(2016)』/『ケープタウン』/『X-MEN:ファイナル ディシジョン』/『ワイルド・ストーム』/『バチカン・テープ』/『スノーホワイト』/『さらば、ベルリン

RED/レッド リターンズ』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『カリフォルニア・ダウン』/『search/サーチ』/『ザ・フォーリナー/復讐者

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