『未知との遭遇 ファイナル・カット版』

TOHOシネマズ錦糸町 オリナス、劇場前の通路に掲示された案内ポスター。(※『午前十時の映画祭10-FINAL』当時) 未知との遭遇 40周年アニバーサリー・エディション(初回生産限定) [Blu-ray]

原題:“Close Encounters of the Third Kind” / 監督&脚本:スティーヴン・スピルバーグ / 製作:ジュリア・フィリップス、マイケル・フィリップス / 撮影監督:ヴィルモス・ジグモンドラズロ・コヴァックス / プロダクション・デザイナー:ジョー・アルヴス / 編集:マイケル・カーン / キャスティング:シャリ・ローズ、ジュリエット・テイラー / 音楽:ジョン・ウィリアムズ / 出演:リチャード・ドレイファスフランソワ・トリュフォー、テリー・ガー、メリンダ・ディロン、ボブ・バラバン、ケイリー・ガフィー、ランス・ヘンリクセン、ショーン・ビショップ、ジャスティン・ドレイファス、メリル・コナリー、J・パトリック・マクナマラ、ウォーレン・J・ケマーリング、ジョージ・ディセンツォ、メアリー・ギャフリー、ロバーツ・ブロッサム / 初公開時配給:コロンビア映画 / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertanment

1977年アメリカ作品 / 上映時間:2時間18分 / 日本語字幕:野中重雄

1978年2月25日日本公開

午前十時の映画祭10-FINAL(2019/04/05~2020/03/26開催)上映作品

2017年10月18日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon|40周年アニバーサリー・エディション(Blu-ray Disc):amazon|40周年アニバーサリー・エディション(4K ULTRA HD + Blu-ray Disc):amazon]

TOHOシネマズ錦糸町 オリナスにて初見(2019/4/9)



[粗筋]

 メキシコ、砂嵐の吹き荒れる砂漠に、忽然と現れた複数の戦闘機。それは数十年前、演習中に突如として行方を眩ましたものだった。調査に訪れた人々は、その真新しさに訝り、現地の人々は、調査団の国籍が多岐にわたっていることを奇妙に思うのだった。そして同じ頃、モンゴルの荒野にも、突如として巨大な客船が現れる。それらはみな、バミューダ・トライアングルで消えたと言われるものばかりだった――

 また場所は変わり、アメリカのイリノイ州では、大規模な停電が発生していた。休みにどこに出かけるか、で子供や妻ロニー(テリー・ガー)と揉めていたロイ(リチャード・ドレイファス)も、電話で整備に駆り出されてしまう。暗い中、ロイがトラックを走らせていると、社内の電気が消え、エンジンまでが止まってしまう。そして次の瞬間、車内のものが乱れ飛び、その頭上をまばゆく光る何かが飛び去っていった。

 他方、インディアナ州でも、幼いバリー・ガイラー(ゲイリー・ガフィー)が家の中を荒らされているのを発見する。驚くよりも好奇心をそそられたバリーは、家の中を荒らしていた“何か”を追いかけ、事情を知らない母・ジリアン(メリンダ・ディロン)を困惑させる。やがてハイウェイにまで行き着いた親子は、光源を追い求めて走っていたロイや他の野次馬と共に、飛び去っていく光の編隊を目撃した。そして、その直後、目を離した隙に、バリーは母親の前から姿を消していた――。

 この日以来、ロイは“未確認飛行物体”の情報に強い関心を抱くようになる。新聞記事を切り抜き、近隣で発生したUFO絡みと噂される事件に興味を示し、更には脳裏に浮かぶ謎の光景に囚われてしまう。その異様な振る舞いは、ロイと家族の関係に大きな溝を作りつつあった――



[感想]

 オカルト絡みの話は好きなほうだが、どういう情報や噂話がいつ頃から発生し、どのように拡散していったか、などオカルト史的な考え方で掘り下げたことはない。それ故に、果たしてこの手の“UFO伝説”が先なのか、本篇で提示された方が先立ったのか、断言できないのが困りものだが――少なくとも、本篇にて描かれた“UFO神話”の類が、いまでもある程度語られ続けている、というのは、本篇にそれだけの説得力が備わっている証左である、ぐらいは言い切ってもいいだろう。

 本篇の語り口は、細かに滑稽みを帯びつつもミステリータッチだ。いっそホラーに近い、と言ってもいい。あり得ない時間、あり得ない場所にあり得ないものが出没するプロローグから、何が起こっているのか察しのつかない序盤、それらが齎す家庭の不和などを、一定の緊迫感を滲ませつつ、細かなくすぐりを挿入し巧みな緩急をつくって綴っていく。グロテスクなモチーフや猟奇的な場面を挟むことなく、言いようのない不気味さを孕んだ語り口は、やはりホラーに近い。

 しかしそこであえてホラーに徹しきることなく、随所に笑いや遊び心を挟んでいる。作品の傾向によっては失策となりかねない趣向だが、本篇の場合、この細かな弛緩が、間違いなくクライマックスに寄与している。

 語り口はホラーに近しいが、終盤に至って趣はガラッと変わる。タイトルが断言しているとおり、本篇はまったく異なる文明との出会いこそが主題であり、そのひと幕が終盤で描かれる。序盤はホラーめいた雰囲気を濃厚に紡がれていた物語は、ある象徴の発見を境に、登場人物のみならず観客の好奇心をより強く刺激する。この切替に、序盤から随所で挟んできたユーモアや遊び心が効いてくるのだ。

 本篇のクライマックスが観客にもたらす情動は一風変わっている。専門家達が、それまで集めた情報を元に、手探りで意思疎通を図る。しばし味わわされるもどかしさは、やがて音楽というかたちで交流が成立したとき、一気に喜びへと昇華される。そしてそれがその後の、驚きをも含んだ展開へと結びつき、物語は不思議な感動を伴ったフィナーレを迎える。この、多彩な感情を呼び起こすラストシーンは、まさに序盤でのホラーめいた描写と、知的好奇心を刺激する謎解きのくだり、そして随所に挟まれた遊び心という伏線があってこそ成り立っている。

 本篇の凄味は、このクライマックスの余韻に、苦みも添えている点だ。さすがにこれは詳述はしないが、それは実質的な視点人物として機能するロイを巡る描写に鍵がある、と申し添えておこう。監督であるスティーヴン・スピルバーグは幼少時代の家庭環境に問題を孕んでおり、自作にその影響を滲ませることがある。ロイを巡る出来事にもその影響は窺えるが、それが作品の余韻に更なる深みをもたらしていることを思えば、やはり彼が撮らなければいけない作品だったのだろう。

 冒頭に記したとおり、きちんとオカルト史に対比させて検証したわけではないから、それ以前の“UFO伝説”にどれほど影響され、その後の“UFO伝説”に影響を及ぼしたのか、は定かではない。しかし発表から40年以上経過したいま観ても、その事象や表現が現代の“UFO伝説”とさほど乖離していないことこそ、本篇の完成度の高さと影響の大きさを物語っていると思う。



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