『TAXi ダイヤモンド・ミッション(吹替)』

TOHOシネマズ西新井が入っているアリオ西新井、駐輪場脇の外壁に掲示されたポスター。

原題:“TAXi 5” / 監督:フランク・ガスタンビド / 脚本:フランク・ガスタンビド、リュック・ベッソン、ステファーヌ・カザンジャン / 製作:リュック・ベッソン、ミシェル&ローラン・ペタン / 撮影監督:ヴァンサン・リシャール / プロダクション・デザイナー:サミュエル・テシール / 編集:ジュリアン・レイ / 衣装:クレア・ラカーズ / 音楽:バスティド・ドニー、DJコア、チャーリー・ンエン・キム / 出演:フランク・ガスタンビド、マリク・ベンタルハ、ベルナール・ファルシー、サブリナ・ウアザニ、エドゥアルド・モントート、ムッシュ・プルベ、アヌアル・トゥバリ、リオネル・ラジェ、シシ・デュバルク、サンド・バン・ロイ、ロマン・ランクリー、サルバトーレ・エスポジート、ファブリツィオ・ネヴォラ、ルドゥアン・ブゲラバ、イシェム・ブゲラバ / 日本語吹替版声の出演:加瀬康之花輪英司、水野龍司、小若和郁那、飛田展男佐々木義人越後屋コースケ、岩崎ひろし、岡田恵、種市桃子、楠太典、野坂尚也、千鳥(大吾&ノブ) / ヨーロッパコープ製作 / 配給:Asmik Ace

2018年フランス作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:寺尾次郎

2019年1月18日日本公開

公式サイト : http://taxi5.asmik-ace.co.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2019/1/24)



[粗筋]

 パリ警察に勤めるシルヴァン・マロ(フランク・ガスタンビド)は、刑事としては優秀だが、捜査のたびに公用車のタイヤを磨り減らすことと、女癖が悪いのが玉に瑕だ。タイヤの方は大目に見てもらっても、よりによって警視総監の夫人を寝取っては、タダで済まされなかった。特殊部隊東洋の夢も虚しく、リゾート地・マルセイユに左遷されてしまう。

 マルセイユ警察は、シルヴァンが想像していた以上にヒドい有様だった。署員はみなシルヴァン以上に問題のありそうな人間ばかり、唯一まともそうだった男も、シルヴァンの目の前で車に撥ねられ病院送りになってしまった。

 そんな矢先、マルセイユで世界の宝石が一挙に集まるイベントが開催されることになった。昨今、各地で宝石を強奪するイタリア人のグループが存在しており、本庁からも人手が動員されている。ジベール市長(ベルナール・ファルシー)はかつてマルセイユ警察の署長をしていたことから、シルヴァンに勝手に期待をかけ、全力で犯行を阻止するよう発破をかけに来た。

 運転技術には自信のあるシルヴァンだが、マルセイユ警察のパトカーでは、強盗団が使用しているパワーのあるイタリア車には追いつけない。もっと早い車が要る、と言うと、現署長のアラン(エドゥアルド・モントート)は、マルセイユにかつて存在した伝説の刑事とタクシー運転手のコンビの話をする。いまはふたりとも現役を退いているが、彼らが駆っていた改造タクシーは、現在甥っ子であるエディ・マクルー(マリク・ベンタルハ)のもとにあるらしい。

 奇しくもそのエディは、シルヴァンの相棒候補を病院送りにした当事者でもあった。そこでシルヴァンはエディを連行すると、一連の罪状に目をつむる代わりに、伝説の改造タクシーを提供するよう求める。

 だが、お調子者のエディは、タクシーを譲渡することは固辞した。その代わり、自分を相棒にするように申し出るのだった――



[感想]

 フランス発、ふんだんなコメディで彩ったカー・アクション映画シリーズの第5作である。

 実は私は、旧作をそれほどしっかり観ていない。まったく観ていないわけではないのだが、テレビ放映の際につまんだ程度なので、それがシリーズ何作目だったのかもきちんと認識していないほどだ。その程度でなんで新作を観に行ったか、と言えば、第5作とは言い条、邦題から“5”の文字が省かれていたことからも窺える通り、旧4作とは異なる点が多い、と知っていたからだ。

 脚本と製作にリュック・ベッソンが携わり、署長から市長に昇格したジベールやその後釜に納まったアランなどは続投しているが、スタッフ・キャストはほぼ入れ替わっている。そもそもが、主演と監督を兼任するフランク・ガスタンビドと、そのバディを演じたマリク・ベンタルハがオリジナルシリーズの熱心なファンであり、彼らが自らリュック・ベッソン側に企画を持ちかけ、実現に至った作品なのだという。

 旧作の世界観を引き継ぎながらも主役コンビを変更している。故に、旧作を観ていない私にも入りやすいのでは、と考えて鑑賞したわけだが、そうした一連の事情を知ると、“仕切り直し”である以上に、本篇の本質は“公式が製作するファン・ムーヴィー”というところにあるようだ。

 つまむ程度とはいえいちおうは旧作にも接しているので、この程度は断言させてもらうが、雰囲気はまったく変わっていない。フランスの美しい街並を、非現実的な改造を施したタクシーが、超絶ドライビングテクニックで走り回る。そのスリルと並行して描かれる、コミカルなやり取り。随所で少々行きすぎて、コントのように映るのも同様だ。

 新たなコンビは、単純に考えると、刑事の方が突出して有能に映り、バランスを欠いているように思える。だがそのぶん、タクシー運転手がボケ、刑事がツッコミ、と笑いを取る上での役割分担が明快になっているので、笑いどころが伝わりやすくなっている。基本的に刑事が視点人物になっているため、運転手以外のキャラクターの奇妙な言動も際立っている。

 またそれでいて、いざカーチェイスの場面となると、一見役立たずのように思える運転手も、長年マルセイユで生活していたからこその土地鑑でナビを務めたり、友人たちを動員して裏道を走りやすくしたり、ときちんと刑事のパートナーとして活躍もする。コメディとしての作りを整理しつつ、コンビである、という意義を考えた設定になっているのだ。こうした組み立ての洗練は、昨今のリメイクや再映画化でよく行われることで、作り手がただ“作品世界が好き”という一心のみで構想したわけではないことが窺える。

 だから恐らく基本的にこのシリーズが好きだったひとにとっては納得のいく作りになっているはずだが、コメディ要素や、笑いを取ることに心を砕いたアクションとしては優秀であるものの、そのストーリーの説得力や整合性といった面には多々問題がある――というか、恐らくは作り手もそのあたりの強度を高めることには関心がないのだろう。強盗団が足のつきやすい高級車を利用していたり、それ故に簡単に足取りが掴めてしまうのにそれは放置してレースで挑発して取り押さえようとしたり、そこまでしているわりにはクライマックスの犯行計画が極端なくらいに綱渡りだったり、と不自然な箇所があまりにも多い。

 だが、そういうストーリー的なツッコミどころも、こういう作品の場合は愉しみのひとつと言っていいだろう。どう考えてもあり得そうな話でないからこそ、肩肘張らずに楽しめるし、下品な要素や派手すぎるカーチェイスも笑ってみていられる。観終わったあとに「変な話だけど面白かった」とスッキリ出来るのが、このシリーズの魅力であり、本篇の良さだろう。

 あんまり考えこむことなく、ニヤニヤしながら鑑賞してスッキリした気分になりたい、そういうときにはお薦めである――ある程度、下ネタに寛容であることは必須条件ではあるけれど。



 ちなみに今回、私があえて吹替で鑑賞したのは、そのほうがギャグが理解しやすいから――ではなく、吹替にお笑い芸人の千鳥が参加していたから、である。ファンというほどではないが好きな芸人ではあるし、彼らの岡山弁剥き出しの喋りがどのように使われているか、に興味があったからだ。

 この手のゲスト出演にありがちな話で、出番はごく短い。しかし、まるで彼らのために予め誂えたかのように、ほぼふたりだけ、しかも漫才めいたやり取りなので違和感はない。フランスの映画に突如として割り込む岡山弁も、彼らが演じたキャラには合っていて、吹替版に声優経験のないタレントが出ることに反感を抱く層もそれほど腹は立たないのでは、と思う。



関連作品:

TAXI NY

ジェヴォーダンの獣』/『レッド・サイレン

トランスポーター3 アンリミテッド