『マウント・ナビ』

マウント・ナビ [DVD]

監督、脚本、編集&Bカメ撮影:千葉誠治 / プロデューサー:山口幸彦、斎藤正明、千葉誠治 / アソシエイト・プロデューサー:行弘拓路 / 撮影:芹沢亮 / 照明:東憲和 / キャラクターデザイン、造形&特殊メイク:行武朋 / スタイリスト:原田幸枝 / UFO CG:岡村吉洋 / 効果音&サウンドデザイン:粕谷浩之 / 出演:片山亨、秋山タアナ、友松栄、金子彩奈、國重直也、木田友和、野口大輔、小野村麻郁、荒川真 / 制作プロダクション:ノースシーケーワイ / 配給&映像ソフト発売元:KING RECORDS

2014年日本作品 / 上映時間:1時間12分

2014年7月5日日本公開

2014年11月8日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

DVD Videoにて初見(2019/07/16)



[粗筋]

 ホラー映画を撮影するために、監督の多田(片山亨)以下スタッフは中部地方にある那斐山へと赴く。心霊スポットとして近ごろ話題になっているこの山で、ホラー映画を制作する予定だったが、女優が当初の予定と異なる役柄を求めたり、遅れてきた出演者が登山を厭がったり、撮影隊内部での人間関係が入り乱れたり、と波乱含みだった。

 スタッフたちが騒然としたのか、それから間もなくだった。山の上を飛ぶUFOを発見したのである。一同は急遽、内容を心霊ホラーからエイリアンものに変更、UFOを目撃したホラー映画のスタッフがUFOを追っ手トラブルに巻き込まれる、という体裁で撮影を開始する。

 主演女優の詩織(秋山タアナ)は内容変更に抗議し、険悪な空気が流れると、森の中に突如として不気味な声が轟いた。方位磁石もGPSも効かず、山中を彷徨っていると、雑用担当の田辺が人影を見た、と言い出す。多田や撮影担当の神野(友松栄)たちがインタビューを撮るべくその行方を追っていると、残した女優たちのけたたましい悲鳴が響き渡った。

 それから陸続と起きる凄惨な出来事を、カメラはすべて記録していた――



[感想]

 何らかのトラブルによって撮影者の手を離れ、発見されたカメラから発掘された映像、という体裁で描く、いわゆる“ファウンド・フッテージ”ものである。この手法はよほど慎重な撮り方をしていないと、観ていて酔ってしまうひとが出てしまうが、本篇はかなりしんどい部類に属すると思う。低予算で臨場感のある映像を撮れる、という意味での利点はあるが、そのぶん、不慣れなひとを遠ざけるリスクも背負う手法と言える。

 だがそれ以上に厄介なのは、映像に臨場感があるがゆえに、如何にも脚本に書いてあるような台詞が浮きやすく、やり取りに違和感やわざとらしさを生みやすい、という欠点があることだ。この点を払拭するには、監督はじめスタッフにフェイク・ドキュメンタリーの経験やスキルが豊富であるか、役者にかなりの演技力があることが必要になる。

 残念ながら本篇はスタッフにもキャストにも、充分なスキルがなかった、と判断せざるを得ない。冒頭から会話のやり取りが不自然なのだ。後半、現場が混乱状態になるとあまり気にならなくなるが、導入部分の会話から露わな“台詞”感と、劇中に存在するカメラの目線、というリアルが釣り合っていない。せっかちなひとなら、導入部分だけで見限ってもおかしくない拙さだ。

 いざ物語が動き始めても、随所に不自然な言動が多い。UFOを目撃して即「着陸したところを撮りに行こう」となる感覚もいささか唐突だし、まだ状況がつかめないうちから過剰に怯えたり、突如として勇ましくなるのも奇妙だ。そういう不自然さ、突飛さを「これはこれ」と割り切ることがないと、いつまで経ってもテンポに乗れない恐れがある。

 率直に言ってしまえば、シチュエーションの掘り下げ、ひいては作品の根幹であるSFの世界観に対する理解が浅いのだ、と思う。全般に、“なぜそうなるのか”ということへの考慮が甘い。いちいち大声で喚くだけになりがちな登場人物たちのリアクションもそうだが、一番大事な、惨劇を起こす者が何を目的として、どうしてこんな行動に及んでいるのか、というのが終始理解しづらい。むろん、ラストにはその動機らしきものも示されるのだが、劇中の出来事、描写がその目的と一致しないのである。理解を超える存在なのだから、という弁解もこうした作品では珍しくないし、それも方法としてはアリなのだが、本篇のように、ただ気配として感じさせたいだけ、とか卑猥なシチュエーションを採り入れたい、という作り手の意志のほうが色濃く見えてしまうと、その露骨さを愉しむつもりのないひとにとっては冷めるだけだ。

 ただ、翻って、「こんなタイプの作品が撮りたい」という意識が明白であり、それを限られた予算の枠内で実現しようとした意欲が見えるので、多少なりともこういうジャンルに愛着のあるひととしては憎めない作品であるのは確かだろう。

 海外の同傾向作品が低予算と言いながら各所でロケをしたりスタジオも使っている一方、本篇はほぼ全篇ロケ、終盤はほぼ同じ山の中、というより林の中で展開する。その狭い範囲で、劇中の視点のみ、という限られた映像で、物語を組み立てた努力は評価したい。たぶん、本当に狭い範囲で撮影しているはずである。

 また、残酷な惨劇の場面をCGではなく、可能な限り特撮で再現した心意気も認めたい。CGを使っていないが故に、身体を両断された人物の表現やクリーチャーの動きが制約されているのも窺えるのだが、描けない部分をカメラワークで補い、許される範囲で効果を上げる工夫をしている……ただ、そういう地道な工夫はしていて当たり前なのだから、それがあからさまに透け見えてしまうのも作品としては問題なのだけど。

 詰まるところ、作り手なら気持ちは理解できるし努力は評価したい類いの作品である。しかし、どう考えても、作品の方向性や題材に対して、その筋のファンが求めるクオリティには達しておらず、ゆはりちょっと厳しく捉えるべきなのだと思う。低予算は仕方ないが、事情を察しうるひとや、それを魅力として享受できるひとにばかりではなく、もっと広範に受け入れられる仕上がりを目指して欲しかった。



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