『MEG ザ・モンスター(字幕・2D・Screen X)』

ユナイテッド・シネマアクアシティお台場のエスカレーター下のスペースに展示された特大スタンディ。

原題:“The Meg” / 原作:スティーヴ・オルタン / 監督:ジョン・タートルトーブ / 脚本:ディーン・ジョーガリス、ジョン・ホーバー、エリック・ホーバー / 製作:ベル・エイヴリー、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、コリン・ウィルソン / 製作総指揮:ランディ・グリーンバーグ、ベン・アーウェル・ジー、ウェイ・ジャン、ジェラルド・R・モーレン、シャンタル・ノン、バリー・M・オズボーン、キャサリン・ジュジュン・イン / 撮影監督:トム・スターン / プロダクション・デザイナー:グラント・メイジャー / 編集:スティーヴン・ケンパー、ケリー・マツモト / 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ / 出演:ジェイソン・ステイサムリー・ビンビンレイン・ウィルソンクリフ・カーティス、ウィンストン・チャオ、ソフィア・カイ、ルビー・ローズ、ページ・ケネディロバート・テイラーマシ・オカ / 配給:Warner Bros.

2018年アメリカ、中国合作 / 上映時間:1時間53分 / 日本語字幕:アンゼたかし

2018年9月7日日本公開

公式サイト : http://www.megthemonster.jp/

ユナイテッド・シネマアクアシティお台場にて初見(2018/09/28)



[粗筋]

 中国大陸から200マイル離れた公海上に建設された海洋研究所で、ジャン博士(ウィンストン・チャオ)の理論に基づく画期的な調査が、いま実を結ぼうとしていた。

 深海には、水温躍層によって隔てられた空間があり、その下には現代と異なる生態系を築いた生物が存在する――ジャン博士の推論どおり、探査艇が水温躍層を抜けたそこには、未知の世界が広がっていた。スタッフは欣喜雀躍するが、その直後、探査艇は謎の衝撃に襲われる。そして、「ジョナスは正しかった」というひと言のあと、通信は途絶してしまった。

 深海でいったい何が起きたのか? 早急に探査艇スタッフを救い出す必要があったが、1万メートルを超える深海での救命経験があるスタッフなど存在しない――ただひとりを除いて。

 その男、ジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)はタイにいた。5年前、やはり水温躍層の調査を行っていた探査艇が謎のトラブルに見舞われた際、危険が迫るのを感じ取ったジョナスは、友人を含む要救助者が残っている探査艇のハッチを閉じ、離脱せざるを得なかった。その心の傷により現場を離れたジョナスは酒浸りとなり、2度と潜らない、と決意していたが、急遽訊ねてきたジャン博士と古い仲間マック(クリフ・カーティス)から、連絡を断った探査艇のメンバーに元妻が加わっていることを告げられると、やむなく現場に急行する。

 その頃、海洋研究所では、ジャン博士のひとり娘であり、研究者でもあるスーイン(リー・ビンビン)が、周囲の制止を振り切って救助に向かってしまう。そして、遅れてジョナスが駆けつけたとき、スーインの救助艇までもが何ものかの襲撃を受ける。

 そのとき、全員が目撃したのは、太古の昔に絶滅したはずの巨大ザメ、メガロドンの姿だった――



[感想]

 近年、やけにサメ映画が持てはやされている。

 映画におけるパイオニアは若かりし日のスティーヴン・スピルバーグ監督による『ジョーズ』であり、それ以降しばらく目立った傑作は出てきた覚えがない一方で、この作品に影響されたB級C級作品はたくさん生み出された。ゾンビ化したり悪魔になったり惑星を支配したり……なかでも、アサイラムが製作した『シャークネード』シリーズはカルト的人気を博し、ほとんどが劇場公開なし・ソフト版が初公開というのがほとんどのこのジャンルでは稀有な劇場公開(但し日本のみ)を果たしたりしている。その一方で、ジャウム・コレット=セラ監督が女性たったひとりでサメの脅威と戦う『ロスト・バケーション』という、純粋なサスペンス映画として優秀な作品も不意に誕生したりしている。

 だが本篇は、そうしたB級C級作品とも、シチュエーションを掘り下げた通好みの作品とも異なる、

 本作の顕著な特色のひとつは、SF的な趣向で組み立てられている、という点である。

 登場人物たちの脅威となる“メガロドン”は、粗筋でも触れたように、現在は絶滅した、とされている。少なくとも、現時点で人類は生体を捕捉していない。この幻の生き物を脅威として出現させるために、いくぶん強引にも思えるSF的設定を用いている。

 だが、SF的とは言い条、劇中での説明を聞く範囲ではそれほど大きな違和感は与えない。ごく自然と、未知の巨大生物がいても不思議でない世界を観客の前に提示し、そこから実に理に適った道筋で、その脅威を作品世界に引っ張り込んでいる。しかも絶妙なのは、このSF的発想それ自体が、ジェイソン・ステイサムが演じるプロフェッショナルを物語に引き込む導線としても成立していることだ。

 特別に開発された潜水艇でなければ到達し得ない深海で人命救助に従事した経験がある人間など、現実世界には存在しない。だがこの物語のなかでは、核となる出来事の前にジェイソン・ステイサム演じるジョナス・テイラーが唯一、その現場に携わり、犠牲を出しつつも帰還を遂げている。自責の念から酒浸りになっているとは言い条、他に頼れる人間がいない以上、テイラーが招聘されるのは当然の経緯に映る。

 そうして特大級の脅威と、それに対抗しうるプロフェッショナルが呼び寄せられると、本篇はSF的な虚構性を帯びつつも、正統的なサメ映画の雰囲気を色濃くしていく。巨大な影が迫ってくる描写、海上に現れる背鰭でその距離を表現し、惨劇の瞬間、海の色に血潮が滲んで赤く染まる、など、サメを題材とした映画ならではの場面は余すところなく拾っている。対策においても、サメ檻であったり、GPSを利用したマーキング、毒物を用いた駆除を試みたり、と、サメ相手の基本的なものを網羅している――もちろん、人間がこれまで遭遇したことのない大物であるがゆえの失敗も織り込まれていて、そつがない。最後には大勢の人間が脅威に晒されるあたりまで、欲しい要素を的確に押さえている。

 A級B級C級関係なく、こうしたパニック映画の多くは、焦点となる事象を描く傍らで、登場人物をめぐる人間ドラマも並行して描くのが定石となっている。本篇もその例に漏れないが、面白いのは、本篇における人間ドラマの描写が、ことごとくジェイソン・ステイサムという俳優の魅力を活かすために盛り込まれているように見えるのだ。

 ステイサムは似たような役柄を演じる傾向にある。口ぶりと物言いは粗野だがそこには知性も滲み、ちょっとした表情には愛嬌がある。専門分野において驚異的な能力を発揮するが、あの肉体と機敏な動作ゆえに説得力は強い。本篇で描かれるような背景ゆえに現場を離れた男ゆえの苦悩と哀愁、しかしそれを巧みにユーモアで包んでしまう度量もリアルに感じさせる。実はもともと飛び込みの選手だった、という経歴もあるので、本篇のように海を舞台にしたアクションやドラマにもしっくり来る。

 率直に言えば、如何にもハリウッドの娯楽大作らしい大味な作りではある。作品内のリアリティを担保するための考証は欠かしていないが、エンタテインメント大作の定石を押さえるばかりで、それ以上の深みはない。しかし、この要素ならば求められるものをしっかり網羅している。人間側がしっかりと戦っているからこその緊張と爽快感も味わえる。よほど超一流の仕上がりを求めているのでない限り、満足感を得られる娯楽大作に仕上がっている。



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