『ラ・ヨローナ~泣く女~(字幕・2D)』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン9入口横に掲示されたポスター……というか、もしかして刷り出し?

原題:“The Curse of La Llorona” / 監督:マイケル・チャベス / 脚本:ミッキ・ドハティ、トビアス・イアコニス / 製作:ゲイリー・ドーバーマン、エミール・グラッドストーンジェームズ・ワン / 製作総指揮:リチャード・ブレナー、マイケル・クリアー、ウォルター・ハマダ、ミシェル・モリッシー、デイヴ・ノイスタッター / 共同製作:ヴィクトリア・パルメリ、ジャッドソン・スコット / 撮影監督:マイケル・バージェス / プロダクション・デザイナー:メラニー・ジョーンズ / 編集:ピーター・グヴォザス / 衣装:ミーガン・スパッツ / キャスティング:リッチ・デリア / 音楽:ジョセフ・ビシャラ / 出演:リンダ・カーデリーニ、ローマン・クリストウ、ジェイニー=リン・キンチェン、レイモンド・クルツ、マリソル・ラミレス、パトリシア・ヴェラスケス、ショーン・パトリック・トーマス、トニー・アメンドーラ / アトミック・モンスター/エミール・グラッドストーン製作 / 配給:Warner Bros.

2019年アメリカ作品 / 上映時間:1時間33分 / 日本語字幕:佐藤真紀

2019年5月10日日本公開

公式サイト : http://www.lloronamovie.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2019/5/28)



[粗筋]

 ケースワーカーのアンナ(リンダ・カーデリーニ)は、4年間相談に乗っているアルヴァレズ家の子供たちが無断欠席している、という学校からの連絡を受け、警官を伴って赴いた。

 一家の母親パトリシア(パトリシア・ヴェラスケス)を説得し、どうにか入った部屋の中は異様な有様だった。至るところに蝋燭が立てられ、謎めいた儀式の痕跡がある。そして、奇妙な模様の描かれたクローゼットには錠がかけられており、その中にふたりの子供は閉じ込められていた。

 アンナは子供たちを福祉施設に保護させた。子供たちは母親に会いたがったが、監禁の事実に加え、ふたりとも手首に火傷と覚しい痣があり、虐待が疑われる以上、アンナに選択肢はなかった。

 しかしその晩、悲劇は起きた。福祉施設で寝ていたはずの子供たちは何故か、川で溺死して発見されたのである。遺体を確認したアンナの目前で、母親は泣き喚きながら訴える――私は、あの女から隠そうとしたのに。いったい誰から隠そうとしたのか、と思わず問うたアンナに、母親は“ラ・ヨローナ”と応えた。

 1年前に夫を亡くして以来、アンナはクリス(ローマン・クリストウ)とサム(ジェイニー=リン・キンチェン)というふたりの子供をひとりで育てている。子供だけを家に残していくことが出来ず、やむなくアンナは遺体発見現場に向かう車に子供たちを乗せて待たせていたが、父親の影響で警察官に憧れを抱いていたクリスは車を出て、現場検証の様子を見物する。

 そのとき、クリスは聞いてしまった――あの女の泣き声を。



[感想]

死霊館』シリーズの1篇、と位置づけられているが、旧作必見、というほどの繋がりはない。登場人物が一部重なっており、同じ世界観のなかにある、というだけで、内容的にはほぼ独立している。気になる方は、わざわざ旧作を予習する、などという手間を踏まず鑑賞しても問題はない。

 ただ、観終わって、ホラー映画として本篇を評価するか否かは、それぞれが考える“恐怖の演出”の理想が那辺にあるか、によってだいぶ差がつくように思う。私の本来の評価基準では、本篇の点数は低い。

 あくまで個人的に、ではあるが、観客により長く深い恐怖を味わわせる、というのが私にとってのホラー映画の理想だ。そのためには、突然の登場で観客を驚かせる類の演出は、効果が刹那的になってしまう。本篇はそういう意味で、刹那的な効果を残す趣向ばかりで構成されている。しかも、現象や脅威を観客に突きつけるタイミングがあからさまで想像しやすいのも、恐怖が持続しにくい結果を招いている。およそ私の理想とするホラーからは異なる作り、と言える。

 しかし、不出来な作品か、と問われれば、そんなことはまったくない。むしろ、こういう効果を主体としたホラー映画としてはパーフェクトと言っていいほど、組み立てが巧い。

 詳しく書くと興を削ぐので控えるが、本篇は序盤で提示された要素がほとんど有効に使われている。あそこでさらっと口にしたひと言、仄めかされた事実が、あとあと有効に働く、という場面を幾度も目撃するはずである。予測していなかったひとにはもちろん驚きをもたらすが、しかし「恐らくこれはあとで利用するのだろう」と予測していても、その的確な扱いには唸らされるはずだ。特に、ある登場人物の活かし方は素晴らしい。

 本篇の優秀さはまさにこうした構成の妙にこそある。慣れた者には確実に、たとえ不慣れであっても勘のいいひとなら察しうるところに仕掛けを用意する。そして、そこへ迫ってしまう登場人物たちの振る舞いに焦り、緊張し、恐怖を味わわされる。

 また、こうした“期待通りにやって来る恐怖”は、それ故に観客に不自然な印象を与えず、戦慄と共に一種のカタルシスをももたらす。しかも本篇はそれが全篇ほぼまんべんなく配置されているので、惹きつけられ、作品世界に飲まれてしまう。

 その“恐怖”の演出は決して私の欲していたものではないが、いわゆる“お化け屋敷”的な衝撃を観客に与えることに心を配った作品としては完璧と言っていい。私は今回、諸々の都合から通常のスクリーンで鑑賞したが、左右の壁面にも投影して空間を拡張するScreen Xや、振動や水飛沫を登場人物さながらに疑似体験できるMX4Dや4DXなど、追加要素のある環境で鑑賞すれば、より作品世界に没頭出来るかも知れない。



関連作品:

死霊館』/『アナベル 死霊館の人形

グリーンブック』/『トレーニング・デイ』/『ファウンテン 永遠につづく愛

13ゴースト』/『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』/『グレイヴ・エンカウンターズ』/『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!