『ヘルボーイ(2019)』

TOHOシネマズ西新井の入っているアリオ西新井、駐輪場脇の壁面に掲示されたポスター。。

原題:“Hellboy” / 原作:マイク・ミニョーラ / 監督:ニール・マーシャル / 脚本:アンドリュー・コスビー / 製作:ローレンス・ゴードン、ロイド・レヴィン、マイク・リチャードソン、フィリップ・ウェストグレン、カール・ハンプ、マット・オトゥール、ラス・ウェドン、ヤリフ・ラーナー / 製作総指揮:マイク・ミニョーラ、マーク・ヘルウィグ、アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート、ジョン・トンプソン、ラティ・グロブマン、クリスタ・キャンベル、ジェフリー・グリーンスタイン / 撮影監督:ロレンツォ・セナトーレ / プロダクション・デザイナー:ポール・カービー / 編集:マルティン・ベルンフェルド / 衣装:ステファニー・コーニー / VFXスーパーヴァイザー:スティーヴ・ペッグ / クリーチャー・デザイン&メイクアップ:ジョエル・ハーロウ / キャスティング:ダン・ハバード / 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ / 出演:デヴィッド・ハーバー、ミラ・ジョヴォヴィッチイアン・マクシェーン、ダニエル・デイ・キム、サッシャ・レイン、ペネロペ・ミッチェル、スティーヴン・グレアム、トロイ・ジェームズ、エマ・テイト、ソフィー・オコネドーアリスター・ペトリ、マーク・スタンリー、ブライアン・グリーソン、マリオ・デ・ラ・ロッサ、トーマス・ヘイデン・チャーチ / 配給:REGENTS

2019年アメリカ作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:松崎広幸 / R15+

2019年9月27日日本公開

公式サイト : http://hellboy-movie.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2019/10/1)



[粗筋]

 世界中で発生する超常現象を調査し、人々への脅威と戦う秘密組織・超常現象調査防衛局=B.R.P.D.。そのなかには、悪魔の子でありながら人間に育てられたヘルボーイ(デヴィッド・ハーバー)も所属している。

 吸血鬼に関する調査に派遣されたまま戻らないルイス(マリオ・デ・ラ・ロッサ)を迎えに、ヘルボーイはメキシコへ飛んだ。カマゾッツというリングネームでルチャ・リブレのヒーローとなっていたルイスは、既に吸血鬼となっていた。リング上で戦った末、ヘルボーイはルイスを殺してしまうが、今際の際にルイスは「終わりが始まる」という言葉をヘルボーイに残す。

 友人を殺してしまったショックで酒に溺れていたヘルボーイを、彼の所属するB.P.R.D.のスタッフが連れ戻しに来た。ヘルボーイの上司であり、悪魔として始末されるところだった幼いヘルボーイを子供として育てたブルーム教授(イアン・マクシェーン)が、かねてより情報を共有しているイギリスのオカルト対策機関オシリス・クラブから、ヘルボーイの力が必要な任務がある、と協力を請われたのだ。

 ヘルボーイを出迎えたオシリス・クラブの話によると、イギリスでは太古から繰り返し、巨人が出没し人間を貪り食う災厄に見舞われている、という。通常ならオシリス・クラブが対処するが、今回は数が多く、ヘルボーイの助力を求めたのだという。

 だが、協力を求めながらも、オシリス・クラブの預言者レディ・ハットン(ソフィー・オコネドー)らはヘルボーイに対して冷淡な態度を示す。実はヘルボーイは、第二次世界大戦の末期、窮したドイツが怪僧ラスプーチンの力を借りて召喚したのだという。参加したナチスの構成員はその場でロブスター・ジョンソン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)やブルーム教授らが始末したが、召還されたヘルボーイについては、教授が引き取った、というのだ。

 自らを人間界に呼び出したのがナチスだった、という事実に衝撃を味わうヘルボーイだったが、しかしその直後、更なる裏切りが彼を待っていた――



[感想]

 何年か前、ギレルモ・デル・トロ監督による『ヘルボーイ』でタイトルロールを演じていたロン・パールマンが、難病の子供の願いを叶えるべく特殊メイクで現れ喜ばせた、というニュースが流れ、そのなかで、望まれているなら第3作を実現したい、といった趣旨の発言をしていた、という記憶がある。だが後日、こちらはデル・トロ監督自身の発言だったか、やはり実現は難しい、と言っていたはずだ。いまにして思うと、ロン・パールマンやデル・トロ監督が企画の再開に着手しようとしていたときには、原作者マイク・ミニョーラも噛んでいる本篇の企画が既に動いていたのだろう。

 なにせ原作そのものに接したことはないので、あくまで情報から推測するのみだが、確かにデル・トロ版よりは本篇のほうが原作の方向性には近いのかも知れない。地獄出身のヒーロー、現れる敵は悪魔や怪物なので、どちらも戦い方に容赦がない。身体は引きちぎられるしかち割られた脳天から脳味噌がこぼれてるし、あからさまに人間を食らう奴も現れる。はじめから一定のレーティングを喰らう覚悟がなければ出来ない作りで、R15以上の作品ではあまり興収は期待出来ない、と考えられていたデル・トロ版製作当時では難しかっただろう。評価の高かったデル・トロ監督版の続篇ではなく、新しいスタッフ・キャストで仕切り直して本来の世界観に寄せる、という選択も理解は出来る。

 描写をヘヴィにするために、監督としてニール・マーシャルを起用したのもまた頷ける。近年は『ゲーム・オブ・スローンズ』などテレビドラマに活躍の場を移していたが、手がけた長篇映画はいずれもハードな残虐描写を採り入れながら洒脱さやドラマ性を巧みに共存させていた。この作品の荒々しいアクションと、見た目は悪魔だが人としての俗っぽさも濃厚なヘルボーイというキャラクター、世界観に合っている。監督がイギリス出身であり、映画ではほとんど母国を中心に制作していたこともあってか、本篇もアメリカの特務機関でありながら大半がイギリスを舞台に、イギリスの伝説を題材として描かれているが、その辺は作家性ゆえの愛嬌と言うべきだろう。

 ただ、それでもやはり、前任者がギレルモ・デル・トロ監督であった、という事実は少々重い。作品の世界観に相応しい監督、相応しい仕上がりであることも認められるのだが、独特の美的感覚と、前後する作品とも相通じるマイノリティへの深い愛情という強い芯を持ったデル・トロ版に比べると、如何にも軽いのである。

 本篇の場合、その軽さ自体を狙った面もあり、そういう意味では成功しているのも確かだ。出先で飲んだくれ、謀殺されかけた危機的状況にあってもユーモアを忘れない、尋常でないタフっぷりと愛嬌には間違いなく深刻さや晦渋よりもいい意味での軽薄さが似合う。生命の危機にあっても世界が滅亡に瀕していても、通俗的な感性を貫き人間のレベルに引き戻すのが、本篇におけるヘルボーイの魅力であるのは間違いない。

 原作者や原作に思い入れの強いスタッフ、ファンにとってはおそらく理想に近い出来映えなのだろう。ただ、映画としてはデル・トロ監督版に香気で劣る、と言わざるを得ない。“マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース”のお行儀のよさがしっくり来ない、もっと遊び心と過激な趣向が欲しい、と感じていたひとなら一定の満足を得られるはずだ。



関連作品:

ヘルボーイ』/『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

ドッグ・ソルジャー』/『ディセント』/『センチュリオン

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