『コンフィデンスマンJP ロマンス編』

TOHOシネマズ上野、スクリーン3入口脇に掲示されたチラシ。

監督:田中亮 / 脚本:古沢良太 / 製作:石原隆、市川南 / 企画&プロデュース:成河広明 / 撮影:板倉陽子 / 照明:緑川雅範 / 美術デザイン:別所晃吉、あべ木陽次 / 美術プロデューサー:三竹寬典、古川重人 / 装飾:近藤美緒 / 編集:河村信二 / 衣裳:朝羽美佳 / VFXプロデューサー:赤羽智史、高玉亮 / 録音:高須賀健吾 / 音楽:fox capture plan / 出演:長澤まさみ東出昌大小日向文世小手伸也織田梨沙、瀨川英次、Michael Keida、竹内結子三浦春馬山口紗弥加前田敦子佐津川愛美岡田義徳桜井ユキ小池徹平佐藤隆太吉瀬美智子石黒賢小栗旬生瀬勝久 / 制作プロダクション:FILM / 配給:東宝

2019年日本作品 / 上映時間:1時56間分

2019年5月17日日本公開

公式サイト : https://confidenceman-movie.com/

TOHOシネマズ上野にて初見(2019/5/18)



[粗筋]

 天才詐欺師ダー子(長澤まさみ)はこのところ、大物の“オサカナ”にありつけず退屈していた。だがある日、ようやく格好の相手を発見する。

 ダー子は折しも沖縄で新たな相手を物色中だったリチャード(小日向文世)、散々引退を宣言した挙句にいまはヒーローショーの中の人になっていたボクちゃん(東出昌大)を召集、更に新たに弟子として加わったモナコ(織田梨沙)を加え、綿密な計画を練り始める。

 そして充分な準備を整えたダー子達は海を越え、香港へと赴く。だが、かつてダー子にカモにされた“日本のゴッドファーザー”こと赤星栄介(江口洋介)が、彼女たちに復讐すべく刺客を送りこんでいた。果たしてダー子達はこの窮地に、計画を遂行することが出来るのか……?



[感想]

 2018年の春ドラマとして、フジテレビ系列で放映されていたドラマ『コンフィデンスマンJP』の劇場版――だが、実は私は1回も観ていない。1話完結のコンゲーム、という趣向に興味は惹かれたが、機を逸していた。しかし、劇場で目にする予告篇の長澤まさみがあまりに活き活きしていたことと、「あなたもきっとダマされる!」という挑発的な謳い文句に誘われ、ドラマ本篇を観ないままに劇場に足を運んでしまった。

 ぶっちゃけた話、私自身はダマされなかった。わりあい早い段階で察しがついたため、シャッポを脱ぐほどの驚きとまでは行かなかった。

 だが、察しがついても、この物語は充分に面白い。様々な人物の思惑が入り乱れ、どう転ぶか、完璧に読み取るのは困難なのだ。特に終盤の展開など、たぶんこうだろう、と目星をつけていたとしてもハラハラすることは間違いない。物語全体としての大きな計算と緻密な伏線を設けながら、それを巧みに覆い隠し、登場人物も観客もまとめて振り回すテクニックがふんだんに詰めこまれている。ここまで徹底されると、振り回されることに快感を覚えるほどだ。

 そしてそれ以上に重要なのは、俳優たちの芝居がとことん魅力的だ、という点だ。

 如何せん本篇はコンゲーム、早い話が“騙し合い”の物語だ。言動のひとつひとつ、どこまでが本音でどこからが偽りなのか解らない、気づかせないことが肝要となる。突飛な言動も、抑制を効かせたような振る舞いも、どこまでが真実なのか解らないほうがいいのだ。それはつまり、俳優の持つポテンシャルを存分に発揮出来る趣向でもある。

 誰がどこまで演じていたのか、細かく語ってしまうと仕掛けを察せられてしまうので、そこは伏せておくが、この特殊な題材において最も心地好く活き活きとその能力、魅力を発揮しているのが、中心人物たるダー子を演じた長澤まさみであることは間違いない。

 序盤から異様なテンションの高さで振る舞い、作品上なんの必要があるのか解らないパロディや物真似を挿入して周りを煙に巻きつつ、計画の実行段階ではメリハリの効いた演技で、どこまでが思惑通りなのかをまったく悟らせない。様々な仲間のサポートや布石があって成立するトリックながら、ここまで観客を惑わせ、最後まで翻弄するうえで、最も貢献しているのは疑いようもなく長澤まさみだろう。

 率直に言えば、いくらフィクションとはいえやりすぎの感は否めない。過程においても、あまりに慎重で時間をかけた仕掛けに呆れるが、クライマックスで真相が明かされると、その思いはより強くなるはずだ。細部を検証していくと、これは本当に必要があったのか? と首を傾げたくなる趣向も少なからず含まれている。

 だが、それをあえてやってしまうのがフィクションとしての面白さでもある。常識的にここまでやるはずがない、という限界を突破してしまっているから、ラストのカタルシスもより強烈なものになる。私と同様に、背景を早いうちに察したひとであっても、その決着としてあまりに大胆で贅沢な終幕に、これ以上ないほどの爽快感が味わえるはずである。

 劇場版だからこそ、「そこまでやるか!」という過剰さも世界観に取り込んで、随所にちらつく強引さを吹き飛ばしてしまう。劇場版として理想的であり、単品のフィクションとしても充分すぎる大胆さと贅沢さを示した、優秀な娯楽大作である――香港を舞台にしつつロケは短期間、多くのシーンはセットや日本黒内のどこかを香港っぽく装って撮影している、という事実も、余計作品の価値を高めている気がする。



 ちなみに本篇が公開された翌日、PRを兼ねたスペシャルドラマ『コンフィデンスマンJP 運勢編』が放送された。この映画版の後日談、という体裁で、先に映画を観ておくとニヤリとさせられる趣向も織り交ぜつつ、これも映画と同様、必ずしも映画含む他のエピソードに接していなくとも楽しめる作りになっていた。

 あちらには北村一輝広末涼子中山美穂という贅沢なゲスト陣を配し、ストーリー的にも映画と大きく趣を違えながら、やはり緻密な仕掛けと胸のすくような大逆転、という様式は貫いている。“運勢”という、人間には制御出来そうもない要素を軸としているぶん、映画以上に先が読みにくく、ラストのインパクトはむしろこちらのほうが上だったかも知れない。

 もし私と同様に映画版に接して、作品世界に惹かれたような方は、機会が得られたならこちらの“運勢編”もご覧になることをお勧めする。かく言う私も、何とか機会を見つけて、連続ドラマを鑑賞したいと思う。



関連作品:

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