『シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』

TOHOシネマズ上野、スクリーン3入口に掲示されたチラシ。

原作:北条司 / 総監督:こだま兼嗣 / 脚本:加藤陽一 / チーフ演出:佐藤照雄、京極尚彦 / 演出:鎌倉由実、馬引圭、山内愛弥 / キャラクターデザイン:高橋久美子、菱沼義仁 / サブキャラクターデザイン:ことぶきつかさ、西村博之 / デザインワークス:田頭真理恵、黒川あゆみ、岩佐有祐 / メカデザイン:石垣純哉、植田大貴 / 車輛設定:山根公利 / 車輛資料協力:田中むねよし / 銃器設定:青木悠 / 軍事ディレクション金子賢一 /モニターデザイン:青木隆 / 3DCGディレクター:後藤優一(studio A-CAT) / 総作画監督:菱沼義仁 / 作画監督:可児里未、田頭真理恵、松川哲也、寺尾洋之、仲盛文竹内進二、伊藤裕次、鈴木卓也、赤井尚方 / 美術監督:加藤浩(ととにゃん) / 色彩設計:久保木裕一 / 撮影監督:長田雄一郎 / 編集:今井大介(JAYFILM) / 音響監督:長崎行男 / 音響製作:AUDIO PLANNING U / 音楽:岩崎琢 / エンディングテーマ:TM NETWORKGet Wild』 / 声の出演:神谷明伊倉一恵一龍斎春水玄田哲章小山茉美、飯豊まりえ、山寺宏一大塚芳忠徳井義実(チュートリアル)、戸田恵子坂本千夏 / アニメーション制作:サンライズ / 配給:Aniplex

2019年日本作品 / 上映時間:1時間35分

2019年2月8日日本公開

公式サイト : https://cityhunter-movie.com/

TOHOシネマズ上野にて初見(2019/2/8)



[粗筋]

 美しい依頼人を悩ませる悪党を始末する“掃除屋”冴羽リョウ(神谷明)。追いつめられたとき、新宿駅掲示板に“XYZ”=“あとがない”と書けば、この男が駆けつける。

 最近、不審な男たちにつきまとわれていた進藤亜衣(飯豊まりえ)は、噂を頼りにARで用意された掲示板を介してリョウと接触する。確かに桁外れに強いが、初対面から劣情を剥き出しにするリョウに、不信感を禁じ得なかった。

 亜衣は現在、モデルとして生計を立てている。ファッションサイト向けの撮影のために、リョウとパートナーの槇村香(伊倉一恵)を伴って赴いた現場で、サイトの運営会社を率いる若き社長・御国真司(山寺宏一)と引き合わされる。

 香を見て、御国は驚いた。ふたりは幼馴染みだったというのである。成り行きでウェディングドレスのモデルに採用された香の姿にまったく興味を示さないリョウに苛立っていた香は、旧交を温めよう、という御国の誘いに乗って、食事に出かけていった。

 その頃、かつてリョウと傭兵としてしのぎを削り合った仲であり、いまは引退して喫茶店“キャッツアイ”の店長を務めている海坊主(玄田哲章)とパートナーの美樹(小山茉美)は、多くの傭兵達が新宿に召集されている、という情報を掴む。どうやら、何ものかが新宿を舞台に、不穏な計画を準備しつつあるようだった――



[感想]

 スタイリッシュな画風にしばしば混ざり込むエッチなユーモア、それでいて決めるところはしっかり決めて、本篇のラストシーンにかぶさる形でエンディング・テーマが鳴りはじめる。当時のテレビアニメとしては異色な作風は強いインパクトをもたらし、テレビシリーズが都合4回、映画版やスペシャル版も繰り返し製作される人気作となった『シティーハンター』実に20年振りの劇場作品である。原作の連載30周年である2015年に原作者自ら再アニメ化の企画を考えていたというが、結果的にテレビアニメの30周年記念、という位置づけで発表に至った。

 長い間隔を置いての復活は、リメイクというかたちを取ることが多いが、本篇は主要キャストをすべて続投させている。スタッフも多くは当時の視聴者だった者が中心となっているが、総監督のこだま兼嗣、そして制作としてサンライズがクレジットされているのは当時のままで、意識的に往時の作りを踏襲しようとしていることが窺える。


 冴羽リョウも含め主要登場人物が当然のようにスマホを所持していたり、ドローンが登場したり、更には新宿の風景も2018年時点のものになぞらえているが、しかしメインキャラの個性はもちろん、ゲストキャラの肉付けや事件の内容、ストーリーのトーンなど、その佇まいはほぼテレビシリーズのままだ。それが現代的な要素と巧みに溶けあっているお陰で、当時の視聴者なら、始まって間もなく作品に入り込んでしまうはずだ。

 もうひとつ、顕著に関心を惹く要素として、随所で当時のオープニング・テーマやエンディング・テーマ、挿入曲を用いていることも挙げられよう。このシリーズはTM Networkや小比類巻かおる、岡村靖幸など当時注目のアーティストを多数起用し、ヒットに導いたことでも知られている。リアルタイムで視聴していたひとなら、プロローグでPSY・Sの『Angel Night』が鳴り響いた瞬間から気持ちが昂ぶるはずである。以後も、劇中での撮影のBGMとしてだったり、ムードを盛り上げるためにだったり、と扱いは異なるが、人気の高かった曲を惜しみなく引用しており、いちいち感激させられるに違いない。

 そのうえ、恐らく当時のファン、とりわけ原作者・北条司作品に親しんでいるひとが感じていた疑問に、実に30年越しぐらいで答を提示している部分もあるのが嬉しい。観たときの楽しみのために詳細は伏せるが、来生3姉妹の登場が絡んでいる、というくらいは書いておこう――解る人にとってはたぶんほぼ答なのだけど。

 なまじ当時、原作から追っていた身だけに、どうしても当時を再現した作りを高く評価してしまうが、その後様々なフィクションに接してそれなりに肥えた眼で鑑賞すると、当時の雰囲気を再現することに努めるあまり、かつてのシリーズにもあったストーリーのいい加減さが随所で明確になっていることが気になる。そもそも亜衣に、都市伝説めいたシティーハンターの力を借りたくなるほどの危機感があったように見えないこともそうだし、肝心の黒幕の思考や計画がかなり大雑把で、説得力に乏しいことも引っかかる。如何にも作りが大味なのだ。

 ただ、そういう整合性に注意を払うよりも、基本的に本能に忠実で、依頼人やパートナーの香を悩ませつつ、締めるべきところはしっかりと締めるシティーハンター冴羽リョウを当時のままに描き、その魅力を表現することに注力したことは窺えるし、そのことは評価されるべきだろう。たとえ新宿の街並が様変わりしても、スマホやドローンを駆使していても、冴羽リョウ冴羽リョウのままだ。

 しょせん郷愁で作られた映画、という見方も出来ようが、しかし当時のファンを喜ばせつつも、よりクールになったオープニングや、宗教や国家に縛られた当時の悪役とは異なる理念で動く黒幕など、きちんと現代に合わせたチューンナップも施されている。絶対に、と自信をもって断言することは出来ないが、当時を知らない観客でも恐らく楽しめる出来になっているはずである。少なくとも、冴羽リョウや彼を取り巻くキャラクターたちのなにが魅力だったのか、は充分に伝わるはずだ。記念の年を祝う作品としては、相応しい出来映えだと思う。



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