『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(字幕・3D・IMAX)』

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ MCU ART COLLECTION (Blu-ray)

原題:“Captain America : Civil War” / 監督:アンソニー・ルッソジョー・ルッソ / 脚本:クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー / 製作:ケヴィン・ファイギ,p.g.a. / 製作総指揮:ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、パトリシア・ウィッチャー、ネイト・ムーア、スタン・リー / 共同製作:ミッチ・ベル / 撮影監督:トレント・オパロック / プロダクション・デザイナー:オーウェン・パターソン / 編集:ジェフリー・フォード,ACE、マシュー・シュミット / 衣装:ジュディアナ・マコフスキー / 視覚効果&アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック / 視覚効果監修:ダン・デレウ / ヴィジュアル開発主任:ライアン・メイナーディング / キャスティング:サラ・ハリー・フィン,C.S.A. / 音楽:ヘンリー・ジャックマン / 音楽監修:デイヴ・ジョーダン / 出演:クリス・エヴァンスロバート・ダウニー・Jr.、スカーレット・ヨハンソンセバスチャン・スタンアンソニー・マッキードン・チードルジェレミー・レナーチャドウィック・ボーズマンポール・ベタニーエリザベス・オルセンポール・ラッドエミリー・ヴァンキャンプトム・ホランドフランク・グリロウィリアム・ハートマリサ・トメイ、ジョン・カニジョン・スラッテリーホープ・デイヴィスダニエル・ブリュール / マーヴェル・スタジオ製作 / 配給:Walt Disney Studios Japan

2016年アメリカ作品 / 上映時間:2時間28分 / 日本語字幕:林完治

2016年4月16日日本公開

2019年9月4日映像ソフト最新日本盤発売 [MOVIE-NEX:amazon|AK ULTRA HD + Blu-rayamazonBlu-ray MCU ART COLLECTION:amazon]

公式サイト : http://marvel-japan.jp/civilwar/

TOHOシネマズ新宿にて初見(2016/5/27)



[粗筋]

 それはラゴスでの任務遂行中に発生した。

 キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)が率いる“アベンジャーズ”の面々は、因縁のあるテロリスト、ブロック・ラムロウ(フランク・グリロ)を追っていた。情報と違っていた敵の目的に翻弄された上に、ブロックの囁いたひと言に動揺したロジャースは動揺、危うくプロックの自爆に巻き込まれそうになった。ロジャースを救うために奮闘したスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)だったが、結果的に巻き添えで多くの人命を犠牲にしてしまう。

 この出来事は、前々から一部の人々のあいだに燻っていた危機感を燃え上がらせた。これまで彼ら“アベンジャーズ”の活動を黙認していた世界各国は、彼らを国際的な“リスク”と認識、アベンジャーズの面々を国連の管理下に置き、許可なくして活動できないようその権限を制約することを提言する。

 ウルトロンの事件で甚大な被害を受けた街にちなみ“ソコヴィア協定”と名付けられたこの同意書に署名しなければ、活動は認められない。署名を拒む場合はスーパーヒーローからの引退を求められる。

 この提案は、固い絆で結ばれていたチームを二分してしまう。最も積極的に支持したのは、アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)だった。ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)やヴィジョン(ポール・ベタニー)らもこれに賛同するが、かつて政府によって利用され、S.H.I.E.L.D.の崩壊にも直面してきたスティーヴは為政者たちの管理下に置かれる危険を考え、署名することを拒絶する。

 そんななか、ウィーンにて開催された会議で、テロ事件が発生した。演説中だったワカンダ国王(ジョン・カニ)らを犠牲にした爆発物を仕掛けた人物の正体が告げられたとき、スティーヴは衝撃を受ける――それはスティーヴが少年時代を共に過ごし、キャプテン・アメリカとなったスティーヴのよき相棒ともなったが、のちに洗脳され暗殺者となっていたウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)だった。

 S.H.I.E.L.D.崩壊をもたらした事件の際にスティーヴを救ったあと失踪していた彼が何故、テロを起こしたのか……? 協定に署名すらしていないスティーヴが追うことは多くの問題を引き起こす、と認識しながらも、スティーヴはバッキーを探さずにはいられなかった――



[感想]

 マーヴェル・コミックのヒーローたちのエピソードを繋ぎ、“マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース”として紡ぐようになって、これが13作目となる。率直に言って、個人的には少々倦みはじめたところだった。

 面白いのは確かだが、如何せん、前提として鑑賞しなければならないエピソードが多すぎる。私自身はひととおりすべて劇場公開時に鑑賞しているのでまだましだったが、もはやいきなり入るには少々ハードルの高い内容になりつつある。またその一方で、これだけ多彩なスーパーヒーローが集結してしまうが故に、敵が強大でなければ映画として成り立たず、結果として展開の幅も狭められてきた感があった。それでも、関連作としてすぐに直接的関わりを持たない『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を繰り出してきたり、『アントマン』のような新顔を加えたりすることで面目を保っているものの、そろそろ限界が近づいている、というのが私の率直な印象である。

 だから、本篇の公開にも、期待しつついささか複雑な気分を禁じ得なかったのだが――やはり、これはこれで充分に面白かった、と言うほかない。

 本篇はむしろ、そうして多くの作品を積み重ねてきたからこその膨大なエピソードの量、描写の豊かさを存分に利用したからこそ成立する内容となっており、それが最大の勝因だろう。

 このシリーズをずっと鑑賞してきた者なら恐らく薄々感じ、そして『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で本格的に露見した、“ヒーローたちが存在することで、却ってリスクが増大する”という問題に、本篇は思い切り踏み込むことで、これまで充分には描かれることのなかったヒーロー同士の対決に至る演出を成功させた。

 アベンジャーズを国連の管理下に置く、という提言に賛成するか否か。その判断にあたって滲むヒーローたちそれぞれの価値観は、いずれも旧作において描かれてきた出来事を土台としている。アイアンマンことトニー・スタークは、生身では決して戦闘能力に優れているわけではないだけに、これまでの戦いにより多くのトラウマや罪悪感を背負うことになった。『エイジ・オブ・ウルトロン』の事件のきっかけであるウルトロンの開発は、そうした危機感の顕れでもあるし、自らも含むそうした力を所有するヒーローたちが勝手な判断で行動する危険を誰よりも恐れるのは自然と言える。反対にキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースは、粗筋にも記したとおり、組織に利用されてきた過去が多い。彼が主役となったシリーズ2作目『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で親友バッキーが辿ってきた歴史もまた、組織に対する懐疑をスティーヴに植えつけたことは想像に難くない。トニーの親友であり軍人でもあったウォー・マシーンことローズはトニーにつき、スティーヴのリーダーシップに導かれてきたファルコンことサム・ウィルソンは当然のようにキャプテン・アメリカと同じく署名しない道を選ぶ。ブラック・ウィドウやスカーレット・ウィッチといったキャラクターたちにしても、一連の物語で描かれてきた背景を踏まえて悩み、決断を迫られていく。そのプロセスが頷けるからこそ、本篇は胸に迫るドラマ性を獲得したのだ。

 しかしその一方で、ある意味では待望でもあった、ヒーローたちが一斉に激突するシーンは、それまでのわだかまりを一瞬忘れるほど爽快で観ていて楽しい。ヒーロー同士の戦いなど本来望ましいことではないが、それ故に、他の状況ではあり得ない対決の様子が魅力的だ。全力で相手の行動を阻止しなければならない、しかし本来仲間であるが故にどこかに遠慮もある。その息苦しさとのせめぎ合いもあって、有り体の敵との対決などとは異なるスリルが横溢する。

 しかもこのくだりで、秘密兵器とでも言うべき趣向を繰り出して来るのが憎い。これまでソニーが映画化権を所有していたため、別個のラインで発展していたスパイダーマンが、そうした権利関係をクリアしたことで初めて参加したこともそうだが、驚くべきはあるキャラクターの隠し技だ。その瞬間、そんなのアリか、と目を丸くするが、確かに理には適っている。きちんと一連の作品で描かれてきた要素のうえに築かれた驚きとインパクトに、ヒーロー同士が戦う、という悲劇性を上回る興奮がこのシーンには漲っている。

 だが、そこで終わらないのがこの“マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース”の凄味だ。対決を経ても決着はせず、そのあとに更に壮絶で狂おしい決闘が待っている。マーヴェル作品はこれまでもCGを駆使した壮大なアクションを幾つも繰り出してきたが、観ていて“胸が詰まる”という感覚をもたらすアクションは他にはない。

 いちおう、今回の“事件”については、本篇でひとまずの完結を見る。しかしヒーローたちの関係性、MCUという大きな物語の上には大きな傷を残した。正直、単品で観て楽しめる、とはあまり思えないのだが、もしこな先もMCUの大きな物語を堪能したい、と思っているなら、間違いなく外すことの出来ない、重要な1章である。



 ちなみに本稿は、劇場で鑑賞したあとすぐに、本文は8割方書き上げていた。しかし、やはり先行作の感想をアップしてからでないと落ち着かない、と考えてしまい、結果として3年も寝かせることになってしまった。

 この間にMCUは更に作品を重ね、先ごろ公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』で大きな節目を迎えた。そちらも既に鑑賞したうえで言い切らせてもらえば、本篇はやはり重要だった。他のヒーローたちの個別作品は、幾つか飛ばしてしまっても内容の理解を大きく妨げたりしないが、本篇を観ていないと、感動は少し薄れてしまうはずだ。

 本稿冒頭で“倦みはじめた”とは記したが、少なくとも『エンドゲーム』を堪能したいのなら、本篇は観逃してはいけない。



関連作品:

アイアンマン』/『インクレディブル・ハルク』/『アイアンマン2』/『マイティ・ソー』/『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』/『アベンジャーズ』/『アイアンマン3』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』/『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』/『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』/『アントマン

ウェルカム・トゥ・コリンウッド』/『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方

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