『怪談 呪いの赤襦袢』

上映終了後、ロビーにて実施された撮影会の様子。

監督&脚本:佐々木浩久 / 企画協力&出演:木原浩勝 / 撮影:鏡早智 / 照明:山本浩資 / 録音:坂本就 / 特殊メイク:土肥良成 / 編集:大永昌弘 / 音楽:ゲイリー芦屋 / 出演:浜崎真緒、栄川乃亜、加藤絵莉、しじみ、佐倉萌、野田博史、小坂ほたる、白石雅彦 / 配給:オーピー映画

2018年日本作品 / 上映時間:1時間25分 / R15+

2018年8月25日日本公開

OP PICTURES+ フェス公式サイト : http://www.okura-movie.co.jp/op_pictures_plus/

テアトル新宿にて初見(2018/9/2) ※“OP PICTURES+ フェス 2018”の1本として上映



[粗筋]

 分間宮冴子(浜崎真緒)はある事件以来、記憶を失くしている。夫を名乗る真一(野田博史)の愛撫にも抵抗があり、快感を味わえずにいた。

 真一はカウンセラー・進藤絵里奈(加藤絵莉)の提案に従い、記憶を取り戻してあの事件の謎を解く、という名目で、夫婦の営みを撮影させたり、奇妙な実験を冴子に強要したりしていた。しかし冴子の記憶は一向に戻らないばかりか、日ごとに奇妙な幻覚に襲われるようになる。

 あるとき冴子は、廊下に落ちた赤い腰巻と、不気味な幽霊が現れる夢を見た。その話を聞いた絵里奈は愕然とする――登場する要素が、真一の祖父・茂三(野田博史・二役)が記録を残していた奇怪な体験談と共通していたのである。

 茂三の体験は、太平洋戦争終戦後まで遡る。憲兵であった茂三は、まともな職に就くことが出来ず、戦争未亡人・千代(佐倉萌)の身体を慰める愛人として、小遣いを得て生活していた。しかし、行為の最中に、鮮血の幻覚を見たその晩から、茂三は奇妙な体験をしたのだった……。



[感想]

 本篇は上野オークラ劇場が主体となって開催している“OP PICTURES+ フェス 2018”の1篇として制作された。この企画は、成人向けを基準として撮影しつつ、性愛描写や残酷な表現を抑え、高校生でも鑑賞可能なR-15版も同時に制作、一般の劇場でも上映する、という趣向である。

 鑑賞時のイベントで監督らが明かしていたことだが、この作品、依頼から公開までが非常に短かったという。短期間で仕上げるために、『新耳袋』などの著者であり、同じ佐々木浩久監督の『血を吸う宇宙』にも元ネタを提供していた木原浩勝の助言を求めたところ、本篇の中格をなす怪談を教えられた。この実話をもとに、監督が様々なアイディアを肉付けして完成させたそうだ。

 私は佐々木監督のいい観客とは言えず、せいぜい数作程度しか観ていないのだが、それでも“佐々木監督らしい”と感じる仕上がりである。古典的なジャンル映画と、それを支えるモチーフへの愛着、敬意が強く、それ故に全体の構成が歪になることも厭わない。本篇も、いかにもオークラ劇場でかかる成人映画らしく、エログロのエッセンスを濃厚にしつつ、怪談映画の味わいをも再現しようとしたことで、やはり全体の組み立てがだいぶ歪になっている。

 それがもっとも如実に顕れるのが、木原浩勝の怪談をもとにした過去の事件をまたいだ終盤の展開である。次々と話がひっくり返っていくので見応えはあるのだが、観客を驚かせることに執心するあまり、内容に破綻している。終盤でかなりキャラの濃い人物が登場するが、最後の濡れ場に利用する以外に劇中で積極的な存在意義が見いだせないし、そのあとで訪れる逆転劇は、状況的に登場人物があっさりと受け入れるには無理がある。

 しかし、辻褄合わせに汲々とせず、見せ場のために派手な趣向を凝らす思い切り方に、魅力があるのも確かだ。小さくまとめることをせず、物語としてのインパクトを狙う姿勢は、近年のお行儀のいい娯楽映画ではあまりお目にかかれない。

 その思い切りは、細かな表現、演出にも窺える。もともと成人映画として公開する意図からは当然ながら、本篇は冒頭から濡れ場がふんだんに盛り込まれている。かなり唐突なタイミングであっても、お色気のほうを優先する態度はいっそ感嘆させられる。

 他方で、“怪談”であることも疎かにしていない。緻密にモチーフをちりばめ、随所で妖しい気配を滲ませ、しばしば観るものを脅かす。あからさまにちらつかせる赤い襦袢もさることながら、如何にも校外の家らしい虫の囀り、蛙の鳴き声といった効果音も妖しいムードを醸成している。しじみが演じる“幽霊”の艶めかしくもグロテスクな所作も効果的だ。

 如何せん、成人映画を意図して撮影されているために、抑えているとは言いつつ濡れ場は濃厚だし、盛り込まれる趣向や展開も少々どぎつく、受け付けないひとも少なくないように思う。ただ、雑然としてエグい組み立てには、昨今のお行儀のよく、綺麗にまとまった作品にはない魅力が満ちている。

 本篇の中格をなす怪談部分は、木原浩勝が提供した原案にかなり忠実に描かれているが、実はこの方、「エロの絡んだ怪談を語るのは苦手」という理由で、こうしたエピソードをかなり隠し持っているらしい。その秘蔵のエピソードを、こういうかたちで脚色し定期的にお披露目してくれると、怪談映画の新しい潮流を生み出すきっかけになるのではなかろうか――こんなえげつない作品ばっかりになると、それはそれでちょっと食傷しそうだが。



関連作品:

血を吸う宇宙』/『怪談新耳袋[劇場版]』/『ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密~銭形姉妹への挑戦状

天才バカヴォン ~蘇るフランダースの犬~

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