3人の少女と幻想の時間、みたいな。

 スケジュールを調べているうちに、これだけは観逃せない、という1本を見つけてしまったため、今日はかなり無茶なハシゴを実行することにしました――チケットを確保してから、「そこまで無茶しなくてもよかったのでは?」と冷静になりましたか、もう変更は効かない。

 天気予報では雨の気配が濃厚でしたが、出かける時間には上がっていた。とはいえ帰りまではかなり間があり、予断を許さない。当初の予定通り電車を利用し、まずは豊洲へ。

 ユナイテッド・シネマ豊洲にて鑑賞した1本めは、さとによる漫画を佐藤卓哉監督がアニメ化、3分間だけ時間を止めることの出来る少女が、ただひとりだけ止められない少女と出会うことで始まる繊細なファンタジーフラグタイム』(Pony Canyon配給)

 ……ちなみに、これの制作会社がアニメーターへの支払をしないまま連絡を絶った騒動は、チケットを押さえてから知りました。

 そーゆー先入観が出来てしまったせいもあって、ああなるほど予算がないのね、と納得してしまう作り。ただ、予算も尺も制約されているなかで、この繊細な題材の持つ詩的な部分をうまく表現してると思います。そこは絵や細かなやり取りで描けよ、と歯がみしたくなる個所も多々ですが、少なくとも大筋は伝わる。私には、より華やかに愛らしく、そして百合百合しく表現した『悪の華』に思えました。出来は悪くないだけに、悪いことで話題に上るのはちと勿体ない。

 いつも通り、映画館を出てすぐのラーメン屋でやや早めの夕食を取ってから離脱。次の目的地は新宿。ルートは幾つかありますが、私の場合、大江戸線を使うのが都合がいい。そうすると豊洲のつぎの月島で乗り換えになる。連絡はスムーズですが、たったひと駅、料金を支払うことになる。つぎの映画までは、2時間くらい空いている。

 月島まで歩きました。

 ひと駅とは言い条、ここはあいだに川を挟んでいる。しかも来歴を辿ればもともと河口だったエリアですから橋が長い。ひと駅ですがまあまあ遠いし、橋の起伏も大きい。しかしまあ時間はあるし体力もだいぶ戻ってるし、ならば動いた方がいいでしょう、と暗いなかを黙々と歩いてきました。

 というわけで月島駅から直接大江戸線に乗り、新宿まで移動。実は大江戸線新宿駅で下車するのは初めてなので少々まごつきつつも、充分な余裕を持って本日ふたつめの劇場、新宿シネマカリテに到着。

 鑑賞した本日2本目の作品は、超寡作の監督ビクトル・エリセ伝説の初長篇、幼い少女と彼女だけが知る“友達”との交流を幻想的に描いたミツバチのささやき』(フランス映画社初公開時配給)。一時期かなりハマっていた漫画家・須藤真澄がこのエリセ監督の長篇第2作『エル・スール』をかなり推していて、そのために本篇とセットでDVDがリリースされた際に購入していた。しかし、例によって観るタイミングを失ってしまい、ここまで来たらスクリーンでかかったときに観よう、と思っていた。いちどラインナップに上がりながらフィルムの都合で外れてしまった、という経緯もあったので、午前十時の映画祭で観られるのを期待してたんですが、けっきょくファイナルの今年もリストには入りませんでした。しかしその代わりに、新宿武蔵野館が創業百年を記念し、月替わりで実施している特別上映の12月分に加わり、きょうと明日の2日限りで上映される、と知ったので、これに合わせてきょうの予定を組んだ訳なのです。何年越しの実現。

 ほとんどモノローグで説明してしまう『フラグタイム』に対しこちらはほぼ説明なし、画面に映るもので語ろうとしており、静かだけど絵が饒舌。中心となるアナを動かす伏線を明確にちりばめる一方で、そこで語られない母の手紙や小屋の足跡、オルゴールのついた懐中時計などのモチーフがその奥にある“世界”の声を微かに響かせる。構図が緻密に計算され、全篇が絵画のような趣があって、すべての場面が美しい。なんだこれ。なんだこの完璧な映画。帰ってから眠ってるDVDを掘り出してもー1回観たくなるくらいの傑作。なんで午前十時の映画祭はこれを再度リストアッブしなかったのだ。

 鑑賞後は電車を利用し、まっすぐ帰宅……まあまあ疲れた。よく考えたら、映画と食事の時間と同じくらいの長さ、移動に使ってた訳ですから、そりゃ疲れるわ。