笑えないジョークだ。

 今週末の封切り作品にひとつ、絶対にすぐ観たかった作品がある。しかも、ずっと改装していた丸の内プラゼール、もとい、丸の内ピカデリー3が都内初のDOLBY CINEMAとなり、問題の作品をこけらおとしに採用している。これはここで観る以外の選択肢がありません。

 ……最初は、金曜日に日付が変わると共に上映される最速上映で観ようかなー、と思ってたのです。しかし、当然ながら上映が終わった時間に電車は動いてないので、バイクか自転車で移動できないとタクシー利用になるか、どこかで夜明かししないといけない。チケットが購入可能になった時点では、その時間帯は雨の可能性が高く、余りにリスキーなので断念、確実に観られる今日に切り替えた次第。

 今日は今日で、ビクビクしながらバイクに乗っていったんですが、幸い、いちばん安いところにたったひとつだけ残っていたスペースに突っ込むことが出来たため、余裕を持って現地に到着。

 それにしても、マリオン新館のエレベーターを使うの、何年振りでしょうか。ざっと調べてみた感じでは、ピカデリーに併合されて以降はいちどもこっちを使ってないので、最低でも10年は経っているようです。うわあ。

 大手が経営する映画館は後発になればなるほど洗練されていく傾向にありますが、ここも例に漏れない。黒を基調に統一された内装ゆえに少々歩きづらいのですが、受付を中心に発見器やコンセッションが円を描くように配置されていて解り易い。

 驚いたのは、もぎりを通ったあと、スクリーンの入口です。作品のイメージを反映させたと思しいヴィジュアルが、スクリーン客席下の廊下にあしらわれている。上映されるのはDOLBY CINEMA対応作品のみ、しかも大作・注目作ばかり、と絞り込むんだからこそ出来る趣向でしょうが、個人的にはこういうのが嬉しい。上映作品に応じてのイベント化をしないTOHOシネマズ日比谷がすっかり退屈な劇場になっていることを思えば、大手はこんくらい頑張って欲しいのです。

 場内も内装はほぼ黒一色に統一されている。これはTOHOシネマズのTCXでも採用している趣向ですが、上映中に他の座席の存在を意識せずに済む。革張りの座席は横、前共に従来より広めに取っていて、座り心地も良好。IMAXと比較すると少々小さいかな? と思ったスクリーンも、上映が始まると、むしろ適切なサイズ感で、前から3列目でも全体が捉えられる。

 肝心の映像のクオリティも文句なしです。DOLBY ATMOSの音響のクオリティは言わずもがな、最初のプロモーション映像でその効力を力説する色彩表現も抜群で、作品への没入感が凄い。

 これ、想像していた以上にいい劇場です。今後、DOLBY CINEMAでかかる作品は、積極的にここに足を運んでしまいそうです。次は『IT』の続篇、そのあとは『シャイニング』の続篇……予習しないとあかんな。

 劇場の良さに興奮して長くなりましたが、肝心の上映作品は、DCコミックスのみならず、アメコミのなかでも屈指の知名度を誇る悪役がどのように誕生したのか? を『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップス監督がホアキン・フェニックスを主演に招いて描いたジョーカー(字幕・DOLBY CINEMA)』(Warner Bros.配給)

 あのホアキン・フェニックスが起用された、というニュースを聞いた段階から無茶苦茶期待してたのです。いざ完成されてみると、映画祭での評価が高い、どころかヴェネチア映画祭金獅子賞というアメコミ史上初の成果を上げてしまった。正直、ほんとに待ち焦がれてたのです。

 確かに、これは凄かった。もうヒース・レジャーを超えることは出来ない、と思ってましたが、あのリアリティを踏襲しながら更なる闇を描きだしている。設定上、やがてジョーカーとなるアーサー・フレックには間違いなく狂気に走る原因が内在していたんですが、それを差し引いても「これは狂うしかない」と思わせてしまう。誰もが無縁ではない狂気、邪悪への誘惑が漲っていて、それに惹かれてしまう自分に怖気が振るう。あまりに圧巻で、鑑賞後、バイクに乗って移動する最中、思わず笑いだしてしまいそうなほど魅せられてしまった。大袈裟でも何でもなく、確実にアカデミー賞は何かしらで獲るはずです。

 ちなみに、既に公言されているとおり、現在展開中のDCエクステンデッド・ユニヴァースと本篇は繋がってません。劇中の描写からもその意志は窺えますが、ただし、バットマンの萌芽もちゃんと織り込まれている。DCの知識なしでも問題ありませんが、その点を知っていると、救いも同時に存在していると解るのです――まだまだか弱く、頼りないほどのひこばえですが。