ベニスから、ライデンシャフトリヒへ。

 プログラム切替直後の火曜日は午前十時の映画祭10を観に行く日。ということで、朝から自転車にてお出かけ。

 ……が、まっすぐ向かわず、上野へ寄り道。今日はいちど家に帰り、休んだあとでもう一回出かけ、ここで映画を観る腹だったのです。ただいまフリーパス期間中につき、観たければ当日、早いうちに限る。土曜日に枠いっぱいで観られなかったのと同じ作品でしたが、朝一番で夕方からの枠ならさすがに問題はなかった。

 用件を済ませ、安心していつものTOHOシネマズ日本橋へ。鑑賞した今コマの作品は、『山猫』のルキノ・ヴィスコンティ監督がトーマス・マンの小説を映画化、美の意味に悩む芸術家が異邦の地で客死するまでを丹念な筆致で描き出す『ベニスに死す』(Warner Bros.初公開時配給)

 美しい、けど正直眠い。説明台詞を用いないのはいいんですが、場面場面の繋がりを仄めかすこともしないので、ひたすら解釈し続けるしかない。それでひとつひとつのシーンがひたすら長いので、どーしても眠くなる。

 しかし、この作品の主人公の苦しみはある意味創作者の誰にも相通じるものです。そこに、ほとんど言葉を発することなく佇む美しい少年。その無垢な微笑みに、いっそ悪魔的なものを覗き見てしまうほどに蠱惑的。このときに、この少年を見つけてしまったことこそ、主人公にとっては福音であり、破滅でもあったのでしょう。非常に味わい深い作品、でも眠い。

 鑑賞後は久々に二代目めん徳 つじ田 味噌の章で昼食。位置的にちょーどいいので、前は日本橋での映画鑑賞のあとに立ち寄ってたんですが、他にも店を開拓していったためにご無沙汰になってました。ここの辛味噌はけっこうお気に入り。

 いったん家に帰り、映画鑑賞中に耐えた分睡眠を取って、ふたたびお出かけ。こんどはTOHOシネマズ上野です。

 鑑賞したのは、京都アニメーション劇場最新作、戦争で両腕を失った元少女兵から、タイプライターで手紙を代筆する“自動手記人形”となった主人公と、彼女を巡る人々を描いたテレビシリーズの番外篇ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-』(松竹配給)

 テレビシリーズはきちんと録画してましたが、まだ観てなかったので、先日まで予習してました。実のところ、必ずしもその必要はない作りです。前半はイザベラ・ヨークという全寮制学校に通う少女の目線で、後半はそれを敷衍して別の人物を軸に描いている。そして、それだけできちんとドラマが成立していますし、グッと来る。

 とはいえ、やはりテレビシリーズでヴァイオレットの出自や遍歴を知っていると味わいが違う。周囲の憧れや羨望がヴァイオレットの求めているものではないことが解るし、物語の中心人物となるふたりに共鳴した理由も解る。テレビシリーズではなかった百合百合しい描写や展開、序盤から登場していたベネディクトの人物像を掘り下げる作りにもなっている。あまりに鮮やかなダンスシーンや巧みな光と影の表現など、屈指の安定感を誇る京都アニメーションのクオリティも満喫させてくれる、いい作品です。

 ……それにしても、これを観た以上はやはり、あの件に言及せざるを得ないんですが、実のところこの劇場版よりも、予習としてテレビシリーズを観ているほうがキツかった。純粋に作品として優秀だったこともさることながら、最初は無感動に見えたヴァイオレットが、初めて自分の感情に気づくくだりがあまりに痛い。とは言い条、現実に起きた不幸に心を囚われるよりも、作品そのものが持つ美しさ、優しさ、逞しさにこそ目を向けるべきだと思う。