『心霊ツアーズ』

キネカ大森のロビーに展示されたスチールなど。

監督、構成、撮影&出演:窪田将治 / プロデューサー&出演:山口幸彦 / プロデューサー:佐伯寛之 / 出演:ミシェル・ヤン、池尻愛梨原あや香、松川千紘 / 配給:ブラウニー

2018年日本作品 / 上映時間:1時間5分

2018年8月25日日本公開 ※『第5回ホラー秘宝まつり』にて上映

公式サイト : http://horror-hiho.com/

キネカ大森にて初見(2018/09/01)



[粗筋]

 その廃校にはいつ頃からか、自殺した女生徒の霊が徘徊する、という噂が立っていた。

 現在、とある大企業によって管理されているこの学校に、4人の女性タレントが召集された。彼女たちは今宵、それぞれ単独で廃校に入り、設定されたミッションをこなすことになっていた。

 校舎内のいくつかのスポットに、ポイントが記された封筒が置かれており、確保したぶんだけポイントを得られる。更に3箇所で指定されたミッションをこなすことでもポイントは加算される。

 校舎内にいた時間が長かった者は上位から順にポイントが与えられる。また、ミッションの際に水着姿を選択した場合は一律で30ポイント獲得となる。ミッションの際に撮影した写真に霊が写っていてもポイントを与えられる。

 更に、ホラー秘宝まつり会場の投票によるランキングでもポイントが加算される。これらで稼いだポイントが最も多かった者が、2019年度のホラー秘宝クイーンの栄誉をもたらされるのだ。

 かくして深夜、ミッションが始まる。しかし、この挑戦は、初手から意外な展開を見せるのだった……。



[感想]

 KING RECORDSの山口幸彦プロデューサーといえば、“怪談新耳袋殴り込み”シリーズがある。あちらは「メンバーが格好つけてしまうから」という理由で生身の女性を加えずにシリーズを続けているが、たぶん内心では映像的な華をず〜っと欲していたのではなかろうか。この作品の企画を知ったとき、「日和ったな」と思う一方で、その心境も解る気がした。古今東西のどんなホラー映画も、とりあえずひとりふたりは綺麗どころがいるのがお約束だし。

 とはいえ、恐らくは最も“ガチンコ”な怪奇ドキュメンタリーを制作する者の矜恃なのだろう、たぶん多くの人が想像するよりもずっと観られる出来になっている。

 アタックはそれぞれの女性タレントが単独で行うが、そこで行うミッションそのものにはお色気を演出していない。暗闇で『かごめかごめ』を歌って振り向き写真を撮る、トイレで花子さんに呼びかけて写真を撮る、という、学校ではオーソドックスな怖い話に基づいたものだ。たとえ幽霊なんか出てくるわけない、と思っている者でもこれを実行に移すのは怖い。

 しかも、当然ながら、これらの噂に真実が紛れているなら、何らかの現象が起きる可能性があり、時期を過たなければ記録することも出来る。前のめりであればあるほど、怪奇ドキュメンタリーとしての本懐を遂げられるのだから、理想的な趣向とさえ言える。“殴り込み”シリーズが回を重ねるごとにどうしても悪ふざけの要素を増してしまっていることを思うと、女性を起用したことを除けば原点に立ち戻っている、とさえ言える。

 また、恐らくは結果的にではあろうが、各自のミッションのへの臨み方、反応の仕方に偽りようのない性質が露わになっているのも面白い。水着になるか否か、という選択とその理由にも個性があるし、現地に赴いたとき、恐怖をどのように和らげるかという対処の仕方、咄嗟の反応にも当然ながら違いがある。図らずも、参加した女性達の偽らざる姿のPRになっていると言える――だから、もうちょっと頑張ったほうが良かったのではないかな〜、というひともいるのだが、編集の妙か、努力や人柄の魅力もちゃんと織り込んでいるので、全体にそれほどマイナスの印象は与えていない。

 プロデューサーが“殴り込み”シリーズの手法を採り入れ、参加者の多くが懸命に臨んだことが奏功したか、終盤では興味深い現象をかなり細かな記録として残すことが出来た。もう少しカメラが多く配置されていれば、更に決定的なものを捉えられたようにも思うが、微妙に肝心なところを取り漏らしているのも、それはそれで興味深いところである――やはり、怪異はいちばんの勘所を掴ませないのかも知れない。

 惜しむらくは、記録出来た現象の解説を、監督自身がほぼ出ずっぱりでしてしまっていること。ここは女性陣に、追加で出演料を支払ってでも、聞き手となってもらうとか、追加検証をするとかして顔を見せてもらうべきだったように思う。絵の華やかさの問題もあるが、そこまでしていれば“心霊ツアーズ”として綺麗に完結できたのではなかろうか。

 華を増し意識的なお色気も加味しつつ、しかしあくまで“怖いものを撮ろうとする”意識は保っている。全体にテレビバラエティの印象は残っているが、企画としては面白い。ホラー秘宝まつりという企画が続くあいだは、同様の趣向で撮影を試してみるのも一興だと思う。そうすればいつか、ホラーアイドルと本物の怪異の完全なる共演が拝めそうな気がする。



関連作品:

怪談新耳袋Gメン冒険編 前編

シロメ』/『劇場版 稲川怪談 かたりべ』/『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!