『銀魂2 掟は破るためにこそある』

TOHOシネマズ上野、スクリーン2入口に掲示されたチラシ。

原作:空知英秋(集英社・刊) / 監督&脚本:福田雄一 / 製作:高橋雅美、木下暢起、川崎由紀夫、山本将綱、宮河恭夫、吉崎圭一、岩上敦宏、峠義孝、青井浩、田中祐介、渡辺万由美、本田晋一郎 / エグゼクティヴ・プロデューサー:小岩井宏悦 / プロデューサー:松橋真三、稗田晋 / 撮影監督:工藤哲也 / 撮影:鈴木靖之 / 照明:藤田貴路 / 美術監督高橋努 / 編集:臼杵恵理 / 衣装デザイン:澤田石和寛 / アクション監督:田渕景也、チャン・ジェウク / 音楽:荑川英史 / 主題歌:back number『大不正解』 / 出演:小栗旬菅田将暉、橋本環奈、岡田将生三浦春馬、六代目中村勘九郎柳楽優弥吉沢亮、一ノ瀬ワタル、窪田正孝夏菜勝地涼、戸塚純貴、柾木玲弥今拓哉、六角精児、ラバーガール長澤まさみムロツヨシ佐藤二朗堂本剛 / 制作プロダクション:プラスディー / 配給:Warner Bros.

2018年日本作品 / 上映時間:2時間15分

2018年8月17日日本公開

公式サイト : http://Gintama-film.com/

TOHOシネマズ上野にて初見(2018/08/17)



[粗筋]

 かつては“白夜叉”のふたつ名で怖れられ、江戸の街から異星人=天人を排除する“攘夷戦争”の志士として刀を振るっていた坂田銀時(小栗旬)も、いまは何でも屋“万事屋銀ちゃん”を営み、その日暮らしの生活を送っている。

 目下、銀時の悩みは、3ヶ月貯まった家賃だ。この1ヶ月、ろくな依頼もなく、収入の宛もない銀時に、アシスタントの志村新八(菅田将暉)は「アルバイトをしろ」と諫めるが、銀時は一向に聞く耳を持たない。

 そこへ、新八の姉・妙(長澤まさみ)が依頼を持ちかけてきた。道場の経営を支えるためにキャバクラ嬢のバイトをしている妙の勤務先で、幕府の上客の来店を控えているというのに、嬢が一斉に風邪を引いてしまい、人手が足りないのだ、という。そこで、顔の広い銀時が協力を求められたのだが、あまりに話が急すぎた。銀時のストーカーであるもと隠密・猿飛あやめ(夏菜)に、金欠状態の攘夷志士・桂小太郎(岡田将生)、そして銀時と新八も女装して加わる、というヒドい面子で上客を迎える羽目になる。

 しかも、よりによってその上客とは、他ならぬ征夷大将軍、徳川茂茂(勝地涼)だった。パニックに陥りながらも、銀時たちは必死にお殿様の歓心を惹こうと努めるのだった。

 他方、そんな将軍のお遊びに駆り出されていた真選組のなかで、奇妙な事件が起きていた。煙草休憩に出ていた真選組副長・土方十四郎(柳楽優弥)を、攘夷志士たちが襲撃したのである。普通なら、何人に襲われようと遅れを取る十四郎ではないはずだったが、この晩は様子が違っていた――



[感想]

 前作のプロローグ部分にて、主人公の坂田銀時は「最初で最後の実写版」という発言をしていた。製作発表時で「失敗確実」という声が湧くほど、魅力的ながら独特の世界を築いていた原作を元にしていればこそ、製作陣も高望みはしていなかったのかも知れない。あにはからんや大ヒット、まさかの2017年度実写邦画興収第1位、という快挙まで成し遂げてしまったため、余裕で続篇が決定してしまった。そのため、劇場で予告篇が流れるようになった当初、前述の台詞を引用して謝罪する、という遊びを入れている。

 しかし本篇が支持されたの理由のひとつは、そういう開き直りとも取れる遊び心だった。原作にも通じるそのポイントを、予告篇の段階でしっかり押さえてきたのだから、1作目を楽しんだひとならおのずと続篇にも期待を寄せたくなる。

 そしてやっぱり、公開された本編は期待に違わなかった。1作目がヒットしたからこそ、より贅沢に、派手になりつつも、1作目の美点はほとんど踏襲し、ものによってはスケールアップさせている。

 第1作は大まかに分けて、“カブト狩り”と“妖刀紅桜”というふたつのエピソードで成り立っていた。本篇も大きく分ければ“将軍の接待”と“真選組動乱”というエピソードのふたつになるのだが、主に笑いを支える前者のボリュームが大幅に増した。

 将軍を接待するくだりでとことん笑いを取る、という意識が窺えるいちばんの理由は、怪優・佐藤二朗の起用だ。第1作にも出演していた彼だが、今回のエピソードにおいて、彼が演じていた武市は今回、用がない。直後の続篇で、キャバクラ店長というまったく別のキャラクターを演じさせる、という荒技を用いてでも佐藤を登場させたことで、序盤のキャバクラにおけるくだりがインパクトを増し、強烈な“つかみ”として機能している。主演陣のとんでもない扮装や言動も見所だが、完全に佐藤二朗でしかないキャバクラ店長の存在が要としてかなり効いている。

 その一方で、長篇映画ならではのドラマの盛り上げ方も堂々たるものだ。今回、こちらの柱は真選組が担っているのだが、万事屋の面々が将軍相手に悪ふざけとしか思えない奮闘をしている傍らで、陰謀や確執の物語を積み上げていく。真選組側で主役も同然の働きをする土方十四郎が一部、凄まじくコミカルな振る舞いをしているものの、クライマックスでの熱い戦い、信義や人情がぶつかり合うドラマ作りに一貫して貢献している。前作に比べると、本来の主人公・坂田銀時の立ち位置が脇に退いてしまっているが、決して友好な間柄ではないが、腐れ縁でもある真選組のために奮闘し、最後の決戦ではしっかりと魅せてくれる。

 前作と比較して際立っているのは、アクションシーンの多さだ。前作も特殊な刀、風変わりなアイテムを用いての対決が複数繰り広げられていたが、今回はカーチェイスに、疾走する列車を駆使した立体的なアクションも展開している。いちおうは幕末をモチーフにした作品でこの要素が入ってくること自体、この世界観ならではなのだが、激しくも随所にお遊びや突飛なアイディアが繰り出されるのも見所だ。スピンしながら四方に砲撃を放ったり、砲弾で吹っ飛ばされて気絶するだけで済んだりするのは、この作品ならではだろう。前作でも特異な存在感を発揮していた桂小太郎とエリザベスのコンビは今回、ほぼほぼコメディ・リリーフ的な立ち位置だが、クライマックスにおいても見事な登場で笑いをさらっていく。

 作品の世界観を尊重し、ファンの期待に応えるべく、仕掛けや見せ場をふんだんに用意した本篇だが、あまりに盛り沢山にした結果、前作同様に雑然とし、また感情を揺さぶる場面がいささかくどく、あざとい印象を残してしまっている。しかしそれもこれも、豊かなサーヴィス精神と、何より作品とその世界観への愛着が為せる技だろう。小綺麗にまとめず、詰め込めるだけ詰め込んでいるからこそ、観ていて隅々まで楽しい。

 多少は世界観を理解する努力は必要だが、この正気を疑うばかりのお遊びの豊富さは、たぶん年齢や作品に対する関心の深さを問わずに楽しめる――合わない可能性もあるけれど、冒頭の趣向が素直に笑えるようなひとなら、きっと最後まで充実した時間に浸れるはずだ。

 この作品の劇場公開からほどなく、原作は長い連載を終えることが発表された。ファンにとっては残念だろうが、しかし未だ放送が続いているアニメ版に加え、スタッフ・キャストに恵まれたこの実写映画版も、きっと当分はファンの期待に応えてくれるに違いない――まだ続篇の製作は発表されてませんけどね。



関連作品:

銀魂

逆境ナイン』/『かずら

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