『怪談新耳袋Gメン冒険編 前編』

キネカ大森で実施されたキャストによる舞台挨拶のフォトセッション。

監督、脚本、撮影、編集&出演:佐藤周 / プロデューサー&出演:山口幸彦 / プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ / ラインプロデューサー&出演:後藤剛 / 撮影:佐々木勝己、中川究矢 / 編集協力:谷口恒平 / 音楽:スキャット後藤 / 主題歌:藤田恵名『境界線』 / 出演:田野辺尚人西村喜廣、はち(市松人形) / 制作プロダクション:シャイカー / 配給:ブラウニー

2018年日本作品 / 上映時間:約1時間30分

2018年8月25日日本公開 ※『第5回ホラー秘宝まつり』にて上映

公式サイト : http://horror-hiho.com/

キネカ大森にて初見(2018/08/25) ※初日舞台挨拶つき上映



[粗筋]

 2018年4月7日、主要スタッフによる会議が実施された。数時間にわたる議論(?)の末、“怪談新耳袋Gメン”のアタックする心霊スポットが絞り込まれた。

 5月29日に行われたアタックは、待ち合わせの時点から不穏な様相を呈する。企画の開始当初から牽引してきた別冊映画秘宝編集長田野辺尚人が、「血液がんの人と同じくらい悪い」という数値を検査で出して、医師から安静を命じられたことを打ち明ける。

 だが、それでも一同はスポットを目指した。選ばれたH市Y峠は、夜な夜な走り屋が出没することで有名だが、数年前に殺害された美人姉妹がトランクに詰められ投棄された場所でもある。そのためか、近隣では女の幽霊の目撃情報も出回っているそうだ。

 昼間のうちに先発隊の佐藤周監督と後藤剛ラインプロデューサーが投棄場所を特定すると、日付が変わった頃合いに、いよいよアタックを開始した。

 今回、監督の指示により、Gメンたちは各自、美人姉妹に対するプレゼントを用意してきていた。メンバーたちはそれを手土産に、暗い山の中で悲しみに暮れる姉妹に“求婚”をする、というのが今回のミッションであった。

 投棄場所はカーブミラーから少し下ったあたりにある。昼間に場所を確認し、トップでミッションに臨んだ監督が設置した定点カメラも目印になるはずだった。しかし、ときおり猛スピードで通過する走り屋たちを避けながらのアタックは、思わぬ悲劇を招くことになる――



[感想]

 2017年の『怪談新耳袋Gメン復活編』は好評をもって迎えられたようだ。恒例の“ホラー秘宝まつり”を開催するにあたって、劇場側からのリクエストもあり、昨年の好評と、何より「安く撮れる」というメリットが見込まれて、2018年度は前後編での上映となった。

 前年からの変化としては、ゲストが登場せず、Gメンに限定された点がある。昨年はカメラマンもアタックに動員されたが、今年はカメラマンは撮影に徹している。また、特殊造形のプロであり、自らも映画監督を務める西村喜廣が正式メンバーとなって、すべてのスポットに同行している。

 顕著、というわけではないが、全般にアタックの手法が、『殴り込み』時代に近くなった印象もある。最初に登場したスポットでの、犠牲となった姉妹に対する求婚もそうだし、老人ホームでの巡回ごっこや、恋人を負ぶって渡ると結ばれる、と言われる橋でのやり口などは、『殴り込み』時代の悪ふざけに近くなっている。前作は監督とカメラマンがそれぞれ初参加であり(調べてみると監督は2013年の時点で編集にクレジットされてはいるのだが)、ベテランのGメンやゲストとのあいだに微妙な距離感があったことが、独特の緊張を生んでいたが、2年目となり、監督が先行メンバーに馴染んできたせいもあるのだろう。恐らくはその気安さが、ミッションの趣向を悪ふざけ寄りにしてしまった。

 ただ、決して悪ふざけに振り切れていないので、笑っていられるし、いざミッションが始まると、当事者が恐怖を覚えるシチュエーションであることはきちんと伝わる。新耳袋Gメンが作りあげてきたムードを踏襲しつつ、ホラーとしての一線を保とうとする姿勢が窺え、好感は持てる。必死さや、状況に対する恨み言、体調や私生活とも絡んだ発言もあって、思う以上に感情移入を誘われ、惹きつけられてしまうのも確かだ。

 実のところ、“人の形をした幽霊を撮る”という初期からの目標については、今回もやはり達成は出来ていないし、随所でクローズアップされる成果も、これまでを思えば充分に評価は出来るのだが、あちこちに溢れるフェイク映像と比較すると物足りない印象は拭えない。

 ただ、エピソードとしては極めて興味深いものが収穫できている点は高く評価したい。とりわけ老人ホームを訪ねた際の出来事は、ほとんど正統的な“怪談”の趣がある。ここで記録された現象自体は、怪異と捉えるには物足りないのだが、しかし先行する出来事があるがゆえに、ひとつの怪談を見事に構成している。きちんと細部まで確かめたからこそ異常に気づく、というのは旧シリーズでもしばしば起きていたことだが、今回のエピソードはそのなかでもかなり完成度が高い。こういう出来事を拾うことが出来たのも、Gメンたちが前のめりで挑みつづけたからこそだろう。映像的な成果の面では残念だが、怪奇を扱ったドキュメンタリーとしては充分な成果だ。

 長ったらしく記したが、これはまだ前編なのである。本篇のラストで、後編への引きがふたつ用意されているし、キャストが仄めかすところによれば、かなりの見せ場があるらしい。構成として、本篇は露払いの役回りなので、若干物足りないのは致し方のないところだろう――巧みに期待を煽る内容になっているのだから、役割はしっかりと果たしている。



関連作品:

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