『怪談新耳袋Gメン復活編』

キネカ大森が入っている西友1階エントランス前に掲示されたポスター。舞台挨拶後、キネカ大森のロビーに集まったスタッフと、それを撮影する観客。 怪談新耳袋Gメン 復活編 [DVD]

監督、脚本、撮影、編集&出演:佐藤周 / プロデューサー&出演:山口幸彦 / プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ / ラインプロデューサー&出演:後藤剛 / 撮影、編集&出演:谷口恒平 / 音楽:スキャット後藤 / 主題歌:MCビキニ a.k.a 藤田恵名『BIKINI RIOT』 / 出演:田野辺尚人西村喜廣林家しん平、はち(市松人形) / 制作プロダクション:シャイカー / 配給:ブラウニー

2017年日本作品 / 上映時間:約1時間40分

2017年8月19日日本公開 ※『第4回ホラー秘宝まつり』にて上映

2018年7月4日映像ソフト発売 [DVD Video:amazon]

ホラー秘宝まつり公式サイト : http://horror-hiho.com/

キネカ大森にて初見(2017/8/19)



[粗筋]

 ――あの馬鹿野郎どもが、4年振りに帰ってきた。

 現代屈指の実話怪談本『新耳袋』に登場する怪奇スポットを訪れたい、という思いから雑誌『映画秘宝』の企画の1本として始まった突撃取材は、その取材映像のインパクトが話題となり、ドラマ版『怪談新耳袋』の特典映像から単独のオリジナルビデオ、そして遂には劇場版として毎年夏公開され、多くのファンを獲得するまでに至った。

 しかし2013年、いちおうの成果を上げたことと、またメンバー達の事情も重なったことによりシリーズはいったんの決着を見る。

 だが、あの馬鹿野郎達の、年甲斐もないガチンコの突撃取材に魅せられたファン達からのラヴ・コールは止まなかった。そして2017年、ついに彼らは戻ってきたのである。

映画秘宝』の田野辺尚人、制作会社社長の後藤剛、シリーズのプロデューサー山口幸彦、という4年前からの残留メンバーに、今回は新たな監督として、学生残酷映画祭にて注目を集めた新鋭・佐藤周が着任、撮影&編集担当の谷口恒平を加えた5人で、危険な怪異の待つスポットへと挑む――



[感想]

 あれから色々ありました――というと意味ありげだが、早い話が、みんな年を取ったのです。

 本篇の旧シリーズ『怪談新耳袋殴り込み』は、そもそも雑誌『映画秘宝』にて、実話怪談本『新耳袋』の舞台に突撃する、という趣旨の記事からスタートしたこの企画、その時点で面子はそもそもおじさんばっかりだった。やがて『新耳袋』作者との交流が始まり、その取材の模様が『新耳袋』が連続ショートドラマとして制作された際の特典として収録され、遂には単独でソフト化を成し遂げた。相変わらず出演者はおっさんばかりだったのに、その一切やらせを認めない、そして本気で怪奇映像を撮りに行こうとする姿勢が人気を博し、そうして劇場版にまで発展した。

 しかし、はじめからおっさんばかりだったのだから、時間も経てば当然、更に歳を重ねる。撮影スタッフが離脱したり、『新耳袋』とは異なる方向性での活動を始めたり、更には企画の主導者であった田野辺キャップが如何ともし難いレベルで心身共にボロボロになってたり、継続が厳しい状態になっていた。

 それでも、粗筋に記した通り、続篇を望む声はあった。それに応える形で、2017年に製作されたのが本篇なのである。

 ちなみにこの作品、製作初期から無茶は始まっている。2017年度の“ホラー秘宝まつり”での公開が先に決まった状態で、製作に入ったのが同年春。映画にちょっとでも詳しいひとならこのスケジュールの無茶さ加減がお解りのはずだ。劇中で打ち合わせの模様が織り込まれているが、それが“3ヶ月前”なので、どれほど綱渡りなのか、は本篇を観ていても感じるはずである。

 しかしその短期間で、如何にして“幽霊を撮る”か、という試みをしているお陰で、全篇に妙な危機感、焦燥感みたいなものが漂っている。以前もいわゆる心霊スポットで無茶苦茶なことをやっていたが、全体的に悪ふざけに傾きがちだった。だが今回は、一般的に死者に敬意を払うという行為の逆を衝くことで、“心霊”を挑発しようとしている。日本人ならば、やっていることがどれほどの不敬かは解っているから、どうしても躊躇がある。それでもあえて行動に移すがゆえの緊張感が、作品の空気を従来よりも締まったものにしている――あまりのヤバさに、さすがに観ていて笑いが込みあげてくるのだけど。

 従来よりも緊張感が高まった背景には、旧作よりも若い監督が携わったことも大きいようだ。発想の方向性は旧作を踏襲しつつも、慣れた者には意外なアイディアを繰り出しているし、現場での動きも積極的になっている。前述したように、出演者がおじさんばかりなのは致し方のないところなのだが、少し若い世代が加わったことで、他の面々も少しだけ活気づいているように映る。山口プロデューサーが劇中で語るとおり、これが仮に女性ゲスト、或いはスタッフとしてでも女性なんかが加わった場合、変な気取りが先行して、ここまで活気づかなかったのではなかろうか。

 監督は学生映画祭で注目され抜擢された才能だが、長篇はこれが初めて、しかも経験のないドキュメンタリー方式だ。独自のスタイルを採り入れつつも基本は旧作に倣っているので、安定はしているのだが、どうしても若干テンポが悪い。この感想を書くために、作業をしつつ流し観ているぶんにはあまり気にはならないのだが、率直に言えば、劇場で鑑賞した際は、少々眠気を覚えたのも事実だ。

 また、本来の目的である、“幽霊を撮る”という目標が達成できたか、と問われると、こちらも微妙だ。いろいろと訝しい現象は記録しているが、もうちょっと周辺を調査すれば合理的な説明がつきそうにも思えるし、そもそもいちばん期待したものは撮れていない。どうしても、勢いのわりに物足りなかった、という印象を残してしまう。

 しかし、従来の“殴り込み”シリーズと比較してもその姿勢はストイックであり、よりアグレッシヴになったことは窺える。成果こそ、お世辞にも満足のいくものではなかったが、今後には期待を持たせてくれる内容であることは間違いない。

 本篇の劇場公開の時点では今後について未定のままだったが、これを書いている2018年8月24日の翌日より、同じ“ホラー秘宝まつり”の枠にて続篇が、しかも前後編の長尺で公開される。楽しみだが、私は田野辺キャップが壊れてしまわないか心配だ!



 ところで今回、感想を書くために自宅にて再鑑賞してみて気づいたが、本篇終盤で記録されている奇妙な現象は、ヘッドフォンなどを用いた方が異様さが解り易い。劇場の音響でも異様ではあるが、その不自然な感覚は、たぶんヘッドフォンなどのほうが実感できるはずである。

 そう考えるとやはり、本来は自宅で楽しむべき作品であるようにも思える――が、他方でこれは、“劇場でかける価値のある怪奇現象を撮影する”ということに挑む様までが作品と言えるので、こういう結果もまた味わいと捉えられよう。



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