『グレイテスト・ショーマン(字幕・ATMOS)』

TOHOシネマズ日本橋が入っているコレド室町2入口脇に掲示されたポスター。

原題:“The Greatest Showman” / 監督:マイケル・グレイシー / 脚本:ジェニー・ビックス、ビル・コンドン / 原案:ジェニー・ビックス / 製作:ローレンス・マーク、ピーター・チャーニン、ジョン・トッピング / 製作総指揮:ジェームズ・マンゴールド、ドナルド・J・リー・ジュニア、トニア・デイヴィス / 共同製作:デブ・ダイアー、ピーター・コーン / 撮影監督:シェイマス・マッガーヴェイ / プロダクション・デザイナー:ネイサン・クロウリー / 編集:ジョー・ハッシング / 衣装:エレン・マイロニック / キャスティング:ティファニー・リトル・キャンフィールド、バーナード・テルシー / 楽曲:ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール / 音楽:ジョン・デブニー、ジョセフ・トラパニーズ / 出演:ヒュー・ジャックマンザック・エフロンミシェル・ウィリアムズレベッカ・ファーガソンゼンデイヤ、キアラ・セトル、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世 / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス

2017年アメリカ作品 / 上映時間:1時間45分 / 日本語字幕:石田泰子

第90回アカデミー賞主題歌部門候補作品

2018年2月1日日本公開

2018年5月23日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video通常盤:amazon|DVD & Blu-rayamazon|4K ULTRA HD + Blu-rayamazon]

公式サイト : http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2018/03/15)



[粗筋]

 19世紀半ばのアメリカ、コネチカット州の仕立屋の息子として、P.T.バーナムは生まれた。顧客である上流階級の娘・チャリティと想いを寄せ合うが、バーナムを警戒した父親によって彼女は花嫁学校に送りこまれてしまう。一方のバーナムも唯一の家族であった父が亡くなり、街中で盗みを働いて食いつなぐような状況に追い込まれる。

 それでもバーナムは夢を見ていた。いつか、チャリティの父親に向かって誇れるほどの成功を果たし、彼女を幸せにする日が来ることを。やがて大人になったチャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)はそんなバーナム(ヒュー・ジャックマン)を信じ、未だ安アパート暮らしの彼のもとへと嫁いでいく。

 子宝にも恵まれたが、野心に反して仕事は長続きせず、生活は安定しない。だが、勤めていた会社が倒産したのを機にバーナムは一念発起、どうにか金を工面して、博物館を建設する。

 古今東西の風変わりなモノを集めたバーナムの博物館は、しかしいつまで経っても閑古鳥が鳴きっぱなしだった。そんな彼に、愛娘の囁きが天啓を齎す――死んだものじゃなくて、生きたものが見たい。

 バーナムは人材捜しに駆け回った。小人症の男性を雇い、歌声に優れた髭面の女性をスカウトした。宣伝に誘われてやって来た大男や体毛の覆い男など、世間では嘲笑われ縮こまって生きて来たような人々をあえて集め、ショーを催す。

 狙いは見事に的中した。かつてチケットを売るのにも四苦八苦していたのが嘘のように、連日札止めが続く。風変わりなバーナムの興行は俗悪と新聞には叩かれ、治安を乱すと抗議を受けるが、バーナムはどこ吹く風、の態度を貫くのだった……



[感想]

 本篇の主人公P.T.バーナムは実在した興行師である。様々な個性を持ったひとびとを集めてショーを催す、いわゆる“サーカス”という興行様式を開発、吸収合併など幾度もの危機を乗り越えながら、彼の名を冠したサーカスは2017年まで興行を続けていたという。本篇で描かれた出来事も、実際にあったことに基づくものが少なくないようだ。

 ただ、時間の流れは大きく圧縮されているし、時系列もこの通りではないらしい。映画というかたちにまとめるにあたって、仕方のない潤色ではあるが、本篇はそこが極端すぎて、物語にいささか説得力を欠いている感がある。序盤から矢継ぎ早に繰り出されるミュージカル・パートに引きずられないような観客は、その絵に描いたようなサクセス・ストーリーぶりに失笑するかも知れない。

 しかし、多くの人はたぶん、そうした不自然さはさほど意識しないはずだ。頭からいきなり、観衆の足踏みが刻むリズムを合図に、ヒュー・ジャックマンの歌に入っていく。この昂揚感に満ち満ちたオープニングだけで、作品世界に惹きこまれてしまう観客がほとんどだろう。

 このテンションの高さはそれ以降、ほぼ落ちてくることがない。愛するチャリティと引き裂かれ、唯一の肉親も失い街に彷徨うあいだも、どうにか結ばれながらも貧しさにあえぐあいだも、華麗な歌とダンスが物語を彩り、昂揚感を維持し続ける。

 本篇におけるミュージカル・パートは、率直に言えば全般に雑然としている。モチーフがサーカスであるために、様々な衣裳を着た個性豊かな面々が、各々のキャラクターを活かしつつも一斉に踊るので、画面が終始騒がしい。ただ、整理の行き届かないこの混沌とした作りが、まさにサーカスらしい荒々しい華々しさを感じさせる。

 その一方で、バーナムとチャリティ、フィリップとアンというふた組のロマンスを、それぞれの背景に合わせた演出でじっくりと見せるかと思えば、バーナムの“裏切り”と言える行動に対してサーカスの面々が心の叫びを解き放つパートなど、その場その場の感情の昂ぶりを凝縮したパートを挿入し、楽曲の構成においても明確なメリハリをつけている。個々の曲の完成度の高さもあって、それぞれの印象も強い。特に、ひげの生えた女性レディ・ルッツを演じたキアラ・セトルが中心となる“This is Me”は、自らの境遇に立ち向かう意志を声高らかに歌いあげる歌詞の普遍的なメッセージ性もあって、衝撃を受ける人も多いはずだ。

 本篇は、実話をベースにしているからこそのリアリティよりも、ミュージカルとしての質の高さ、その昂揚感をより重視して構築している。それはさながら、実在したP.T.バーナムが生涯追い続けてきた、“ニセモノであっても観客を笑顔にするエンタテインメント”そのものだ。

 伝記映画として捉えるには圧縮、潤色が度を過ごしている。ただ、中心となるP.T.バーナムの世界観、彼が生み出したエンタテインメントの魅力を体感させる、という意味では、極めて理想的な仕上がりと言えるのではなかろうか。だからこそ、様々な批判も浴びる一方で、熱狂的なファンを生む、特異な魅力を備えるに至ったのだろう。



関連作品:

シカゴ』/『ドリームガールズ

レ・ミゼラブル』/『プリズナーズ』/『X−MEN:フューチャー&パスト』/『ヘアスプレー』/『ゲティ家の身代金』/『ワンダーストラック(2017)』/『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

雨に唄えば』/『バンド・ワゴン』/『ショウほど素敵な商売はない』/『ザッツ・エンタテインメント』/『オール・ザット・ジャズ』/『ムーランルージュ!』/『ジャージー・ボーイズ』/『ラ・ラ・ランド