『ワンダー 君は太陽(字幕)』

TOHOシネマズ上野、スクリーン3入口に掲示されたチラシ。

原題:“Wonder” / 原作:R・J・パラシオ / 監督:スティーヴン・チョボスキー / 脚本:スティーヴン・チョボスキー、スティーヴン・コンラッド、ジャック・ソーン / 製作:デヴィッド・ホバーマン、トッド・リーバーマン / 製作総指揮:ジェフ・スコール、ロバート・ケッセル、マイケル・ビューグ、R・J・パラシオ、アレクサンダー・ヤング / 撮影監督:ドン・バージェス / 美術:カリーナ・イワノフ / 編集:マーク・リヴォルシー / 衣装:モニク・プリュドム / キャスティング:デボラ・アキラ、トリシア・ウッド、ジェニファー・スミス / 音楽:マーセロ・ザーヴォス / 音楽監修:アレクサンドラ・パットサヴァス / 出演:ジェイコブ・トレンブレイジュリア・ロバーツオーウェン・ウィルソン、イザベラ・ヴィドヴィッチ、ダヴィード・ディグス、マンディ・パティンキン、ソニア・ブラガ、ダニエル・ローズ・ラッセル、ナジ・ジーター、ノア・ジューブ、ブライス・ガイザー、ミリー・デイヴィス、エル・マッキノン / マンダヴィルズ・フィルム/ライオンズゲート製作 / 配給:kino films

2017年アメリカ作品 / 上映時間:1時間53分 / 日本語字幕:稲田嵯裕里

2018年6月15日日本公開

第90回アカデミー賞ヘア&メイクアップ部門候補作品

公式サイト : http://www.wonder-movie.jp/

TOHOシネマズ上野にて初見(2018/06/15)



[粗筋]

 オーガスト・“オギー”・ブルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は10歳になって初めて、学校に通うことになった。

 オギーは先天性の病で、顔に異常を持って生まれた。繰り返しの手術で障害の多くは取り除いたが、それでもかなり特徴的な顔になってしまった。宇宙飛行士に憧れてプレゼントされたヘルメットを被っていないと、公園にも出かけられない。

 しかしオギーの母イザベル(ジュリア・ロバーツ)は、5年生になったことを契機に、オギーを学校に通わせる決意を固めた。恐怖はあったが、それでも母や、父ネート(オーウェン・ウィルソン)、姉のオリヴィア“ヴィア”(イザベラ・ヴィドヴィッチ)の励ましを受けて、学校に通い始める。

 だが、密かに予想していた通り、学校はオギーにとって試練の場だった。トゥシュマン校長(マンディ・パティンキン)はじめ先生たちはオギーを快く迎え入れてくれたが、子供たちは違う。オギーの容姿に、顕著に反応し、一部の者はあからさまに嘲るようになる。

 それでもほどなく、オギーには友達が出来た。ジャック・ウィル(ノア・ジューブ)は最初、校長の指示でオギーに学校を案内しただけの仲だったが、テスト中にちょっと手助けをしてくれたオギーに次第に心を開いていき、いつしか親友と呼べる関係になっていった。未だ続くいじめに塞いでいたオギーだったが、ジャックの存在のお陰で、学校というものを好ましく感じるようになっていく。

 やがて、ハロウィンの季節が訪れる。誰はばかることなく顔を隠して出かけられるこのイベントがオギーにとっては最大の楽しみだった。しかしこの年、オギーはそこで思わぬショックを味わうことになる……。



[感想]

 もう全篇涙腺崩壊しっぱなし、とと言わんばかりの予告篇の印象が強烈だったのだが、いさ本篇を観てみると、そうでもない。

 やたらと感受性が強く、感情移入しやすい人なら本当に涙しっぱなしでも不思議ではないが、本篇の描写は全体的に押しつけがましさがない。「泣け、泣け」とばかり感動を押しつけてくるような語り口であれば、却って興醒めしかねないが、決して乱暴に感情を煽ってこない。

 オギーの個性こそインパクトが強いが、本篇で起きる出来事のほとんどは、誰の身に起きても不思議でないことばかりだ。オギーに限らず、肉体的ハンデがあったり、容姿に人目を惹く特徴があったりすると、いじめの被害に遭いやすい。そのなかで、どのように対処していくのか、どう向き合っていくのか、という部分が、あまり誇張も泣く描き出されている。他方、章を分けるかたちで描かれるオギーの友達や家族の心情、彼らが直面する問題など、いずれも普遍的なのである。だから、本篇で描かれる事件や問題のなかに、思い当たるものがひとつやふたつ含まれているはずだ。仮に自分でなくても、周囲や世間で似たような話を耳にすることはあるだろう。

 だから、この作品の物語はとても身近なものに感じる。アメリカの地方都市を舞台に、アメリカ特有の価値観や社会のシステムが織り込まれてはいるが、他人事のような気がしないのだ。

 そしてこの物語は、そうした悩みや問題を、決して大仰な奇跡や、あり得ないような奇策で解決しようとはしない。当たり前のやり方で向き合い、折り合いをつけていく。そしてやがては、それが報われるのだ。

 この物語は、自分の出来るやり方で、誠実にことに向かうことを、素直に賞賛している。だから、ちょっとでも共鳴してしまったひとは、その展開に胸を震わせずにいられない。

 それにしてもこの作品、出てくる大人達のほとんどが非常に誠実だ。困難を知りつつも、オギーの未来のために通学を提案した母のイザベル。心配はあるが、決意した息子や妻を支えるために道化であり続け、影ながら気の利いたサポートをする父ネート。オギーを快く受け入れ、非常事態にあっても公平に理性的に振る舞う校長。それほど積極的に関わってきた印象はないが、オギーが本当に悩んでいたときにそっと力づけた担任教師。少し都合が良すぎるようにも思えるが、こういう大人達がいるからこそ、子供たちがいい方向に変化していっても、都合が良すぎるように感じにくい。

 この作品は、オギーの突出した個性を軸に、普通に、誠実に、努力して生きていくことを肯定する世界が築かれている。だから、その世界に馴染むことが出来れば、励まされるかのような心地になる。涙するひとが多いのは、とても自然なことなのだ。



 ちなみにこの作品、ちょっとビックリするキャラクターがカメオ出演している。スタジオが異なるので、本来出演させるのは難しいはずなのだが、作品の趣旨に理解を得られたことで、登場が認められたという。

 ちょっと唐突にも思える描写だが、その使い方はオギーを取り巻く状況、心情の変化とをうまく表現している。あのキャラの思わぬ貢献ぶりにも注目していただきたい。



関連作品:

ウォールフラワー

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