『プリキュアスーパースターズ!』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン8入口に掲示されたポスター。

原作:東堂いづみ / 監督:池田洋子 / 脚本:米村正二 / オリジナルキャラクターデザイン:宮本絵美子、井野真理恵、川村敏江 / キャラクターデザイン&総作画監督香川久 / 作画監督:爲我井克美、小松こずえ / 美術監督:渡辺佳人 / 色彩設計:竹澤聡 / 撮影監督:五十嵐慎一 / 音楽:林ゆうき / 声の出演:引坂理絵本泉莉奈小倉唯美山加恋福原遥村中知藤田咲、森なな子、水瀬いのり高橋李依堀江由衣早見沙織多田このみ福島潤野田順子かないみか齋藤彩夏北村一輝小野賢章 / 配給:東映

2018年日本作品 / 上映時間:1時間10分

2018年3月17日日本公開

公式サイト : http://www.precure-superstars.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2018/03/30)



[粗筋]

 未来からやって来た赤ちゃんのはぐたん(多田このみ)のお世話をしている野乃はな(引坂理絵)はその日、はぐたんのお花畑デビューのために、薬師寺さあや(本泉莉奈)、輝木ほまれ(小倉唯)、ハリハム・ハリー(福島潤)と連れ立って出かけていた。

 そこに現れたのは、ウソバーッカ(北村一輝)と名乗る怪物。花畑や観光客を次々と石化していく怪物に、はなたちはプリキュアとなって応戦するが、不思議な力で変身する能力を奪われ、更にさあやとほまれが囚われの身となってしまう。

 世界をウソだらけにしようと目論むウソバーッカは、計画の妨げとなるプリキュアたちをみんな捕まえる、とうそぶいていった。はなはかつていちどだけ巡り会った、他のプリキュアたちに助けを求めることにした。

 ちょうどキラキラパティスリーに集まっていた先輩プリキュアの宇佐美いちか(美山加恋)たちと無事に再会を果たすものの、早くも襲来したウソバーッカにより、いちか以外のプリキュアたちもまた捕らえられてしまう。

 仲間を助けたければマホウ界まで来い、というウソバーッカの言葉に、いちかは“魔法つかいプリキュア”たちの危機を悟る。急ぎ合流した朝日奈みらい(高橋李依)たちがウソバーッカに応戦しているとき、はなはあることに気づくのだった――



[感想]

 歴代のプリキュアが集結する‘オールスターズ’の、長篇としては都合10本目となる作品である。

 毎年のように何かしら試行錯誤を繰り返してきたこのシリーズだが、2017年の『プリキュアドリームスターズ!』にて、登場するプリキュアを直近3代に絞り、尺に余裕を生んだぶん、秋の1シリーズ単独による長篇と同様にしっかりとしたストーリーを盛り込む方向に転換、それを本篇でも受け継いでいる。2018年はシリーズ15周年を数え、歴代のプリキュアをすべて出演させるのが事実上不可能になっていたので、前作での方針転換は無難だし、本篇でそれを引き継いだのも当然と言える――そもそも、作品のターゲットとする層が15年前のシリーズをちゃんと観ているのかも解らないのだから。

 表現上の冒険が減ったことは、すれた大人の観客としては少々寂しく思う一方で、同じ手法に収めたからこそ、表現の質そのものが向上していることは評価したい。

 あくまで子供向けであることを基本とし、だいぶ無茶な筋回しをしているのも事実なのだが、それでもクスッとさせられるひと幕や、センスの閃きを感じさせる場面がちりばめられている。

 特に今回、目を惹くのは、旧シリーズのキャラクターの個性をうまく活かして、シリアスな展開のさなかに笑いを誘う場面を挿入している点だ。笑いの盛り込み方がうまくなっているのはここ最近の作品から感じていたことだが、今回は特に効果的だ。前期の『キラキラ☆プリキュアアラモード』、前々期の『魔法つかいプリキュア!』の少女たちの個性を活かし、そのままなら深刻になりそうな場面を、絶妙な匙加減の笑いと希望で彩っている。『〜アラモード』劇場版でも琴爪ゆかりと剣城あきらがやたらと目立っていたが、今回もこのふたりが個性を主張しているくだりが実に楽しい。他のキャラも、決して長くない出番の中で、それぞれに“らしさ”を発揮しているのも、作品を知る者には嬉しいところだ。

 プリキュアの長篇映画は、舞台を本篇とは異なる世界に設定することが多い。映画ならではの豪華さを演出する、という意図もあろうが、テレビシリーズと同じ敵役を使うと、テレビシリーズの展開・エピソードに縛られてしまうので、それを避けるために独自の世界観やルールを用意する、という側面もあるようだ。

 そういう意味では本篇もご多分に漏れず、なのだが、この作品の“異世界”は少し変わっている。そこにはクローバー(小野賢章)という男の子しか存在せず、しかも何故かそこは雪に覆われ孤絶した空間となっている。あえて書いてしまうが、物語の中では、どうして雪に覆われてしまったのか、そして何故クローバーがそこにひとり取り残されていたのか、という点について、一切説明がなされない。

 本篇における異世界や独自設定は、物語の主題である“約束”のためにのみ奉仕している、と言っていい。物語は幼い頃のはながクローバーと交わした“約束”を軸に展開していくが、それを成立させるために夾雑物を完璧に排除してしまったかのような構成は、そこにだけ注視すると象徴主義的にも映る。世界観を説明するために尺を用いる必要がなくなったことで、はなの後悔やクローバーの懊悩、他方で奮闘する仲間たちの描写に割く尺を増やす、というのが恐らくはいちばんの狙いだっただろうが、この異世界設定のシンプルさが、子供向けの伝わりやすいカタルシスを演出する一方で、本篇に超然とした雰囲気をもたらしているようにも思う。

 ……と、色々と鹿爪らしく綴ってはみたが、いずれにせよこのシリーズは、一見スタイルを定着させたかのように見えて、根っこのところでは研鑽や冒険を怠っていない、ということだろう。そして何より、そうした試みがしっかりと、本来のターゲットである客層を喜ばせつつも、その親や、私の如き若干踏み外した大人も楽しめる質を生み出している。

 やはりこのシリーズ、侮れない。



関連作品:

魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!』/『キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと! 想い出のミルフィーユ!

プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』/『プリキュアオールスターズDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!』/『プリキュアオールスターズDX3/未来にとどけ! 世界をつなぐ☆虹色の花』/『プリキュアオールスターズ New Stage/みらいのともだち』/『プリキュアオールスターズ New Stage2/こころのともだち』/『プリキュアオールスターズ New Stage3/永遠のともだち』/『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』/『プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪ 奇跡の魔法!』/『プリキュアドリームスターズ!

劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart』/『劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち』/『ふたりはプリキュア Splash Star チクタク危機一髪!』/『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』/『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』/『フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』/『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』/『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』/『スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』/『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』/『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』/『Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!

心が叫びたがってるんだ。』/『聲の形』/『新暗行御史』/『テルマエ・ロマエII