『クソ野郎と美しき世界』

TOHOシネマズ上野のロビーに掲示された、稲垣吾郎のサイン入りポスター。

共通クレジット
企画・プロデュース:多田琢、山粼隆明、権八成裕 / 原案:多田琢 / エグゼクティヴ・プロデューサー:飯島三智 / 統括プロデューサー:石塚正悟 / 製作&宣伝:新しい地図 / 配給協力:kino films

2018年日本作品 / 上映時間:1時間45分

2018年4月6日日本公開

公式サイト : http://kusoyaro.net/

TOHOシネマズ上野にて初見(2018/04/19)



[粗筋]

Episode 1“ピアニストを撃つな!” / 監督&脚本:園子温 / 主演:稲垣吾郎 / 出演:浅野忠信満島真之介、馬場ふみか

 ピアニストのゴロー(稲垣吾郎)は、偶然出逢った女フジコ(馬場ふみか)に一目惚れされ、熱烈なアプローチを受ける。最初はそんなつもりもなかったのに、彼女の面影が忘れられず、ゴローは彼女へメッセージを送ったが、厄介なことに、フジコはマスクをした悪党“マッドドッグ”こと大門(浅野忠信)に惚れられており、飛び出していったフジコを部下のジョー(満島真之介)らとともに追いかけているのだった――

Episode 2“慎吾ちゃんと歌喰いの巻” / 監督&脚本:山内ケンジ / 主演:香取慎吾 / 出演:中島セナ古舘寛治

 アーティストの慎吾(香取慎吾)には、創作意欲が高まると、どこの壁だろうとお構いなく筆を走らせる悪癖がある。またぞろ創作意欲が抑えきれなくなった慎吾は家を飛び出したあとで警察で「絵を描くのではなく歌えばいい」と言われたことを思い出し、とりあえず歌おうと試みるが、何故か歌が出なくなる。原因は、たまたまそばに居た、腹ぺこの歌喰い(中島セナ)だった――

Episode 3“光へ、航る” / 監督&脚本:太田光(爆笑問題) / 主演:草なぎ剛 / 出演:尾野真千子健太郎森下能幸

 オサム(草なぎ剛)は妻の裕子(尾野真千子)を使って美人局をして日銭を稼いでいる。しかし、病により失った我が子の面影を求める裕子に懇願され、彼女とともに、息子の腕が移植された相手を探して旅に出る。辿り着いた沖縄で、しかしふたりは、思わぬ事件に遭遇したのだった……

Episode 4“新しい詩” / 監督&脚本:児玉裕一 / 主演:稲垣吾郎香取慎吾草なぎ剛 / 出演:池田成志浅野忠信満島真之介、馬場ふみか、中島セナ尾野真千子健太郎

 そこはクソ野郎たちが集う“クソユニバース”。支配人(池田成志)が導く先にある、真実とは――



[感想]

 日本に住んでいて、ある程度芸能情報に接しているひとなら、メインである“新しい地図”の3人が2016年から2017年にかけてどのような変遷を辿ったか、だいたいご承知のことだろう。少なくとも、その辺を知らずに本篇を鑑賞するひとのほうが稀のはずだ。だから、彼らがこれまでアイドルとしてタレントとしてどんな仕事をしてきたのか、知って観るほうがより興味深く楽しめる、という事実は、さほど高いハードルではあるまい。

 メインとなる3人がそれぞれのエピソードで演じているキャラクターは、彼らが芸能生活の中で経験してきた役柄、築きあげた個性といったものを象徴するかのようだ。顔立ちは整っているがどこか超然とした茶目っ気のある稲垣は、他人の見方など気に留めないが、妙に愛嬌のあるピアニストに扮し、共演者にさえ電話番号を教えず独自の世界を築いていた香取は、本人そのまんまのような芸術家を演じている。ドラマでは誠実な教師から利己的な極道まで様々な役を演じながらも、バラエティではお笑い芸人相手に無邪気に振る舞う草なぎのキャラクターは3人の中でも特にろくでなしだが、あまりにバカすぎて妙に憎めない。

 どのエピソードも非現実的な要素に彩られているものの、3人がいずれも馴染みやすい役柄であるだけに、不思議と無理がない。それぞれのキャラクターに添って世界が広がっていくので、彼らの出演した作品にある程度触れてきたひとなら違和感なく受け入れられるだろう。

 そして、各個のエピソードで総括した、彼らが作りあげてきた自らのイメージが合流していくのは、他のエピソードを凌駕するくらいに空想的なミュージカルの世界だ。

 いまいち結末の不明瞭なまま終わったそれぞれのエピソードの決着もここで示されるが、率直に言えば、あまり筋が通っているとは言いがたい。伏線を張るにしても、伏線を覆す意外性を提示するにしても、それぞれの本篇が充分に語っているとは言い難いので、取って付けたような印象が色濃い。いささか浅野忠信に頼りすぎたきらいがあるのも気になるところだ――浅野と、満島真之介が演じたキャラは、脇役にしておくにはもったいないインパクトがあったのも確かだが。

 ただ、洗練されていなくとも、個々のエピソードの構築した世界観は魅力的であり、それらをごたまぜにして思いもかけないエンタテインメントに昇華していく、という構成は、そのままメインである稲垣・香取・草なぎが今後の活動において目指すものを提示したかのように映る。3人とも同じグループに所属はしていたが、個々の活動も盛んであり、築きあげたキャラクターは異なる。かつてのグループにおいては、彼らの立ち位置や関係性も確立していたが、新たな旗揚げをしたこの3人による活動でのカラー、立ち位置は不明瞭だ。本篇は、製作期間の短さもあってかなり粗い仕上がりではあるものの、彼らの個性や、演技についての前向きな意識ははっきりと感じさせる。

 この作品は、様々な困難に見舞われつつも、改めてエンタテインメントの世界に乗り出そうとする彼らの意思表示であり、端的なショーケースなのだ。主演3人の来歴を切り離して観るとだいぶ奇妙だが、3人の魅力や意欲は確かに充実していて、ショーケースとしての役割は完璧に果たしている。



関連作品:

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