『キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと! 想い出のミルフィーユ!』

ユナイテッド・シネマ豊洲が入っているららぽーと豊洲エントランス前に掲示されたポスター。

原作:東堂いづみ / 監督:土田豊 / 脚本:村山功 / キャラクターデザイン&総作画監督:爲我井克美 / 作画監督大田和寛 / 美術監督:倉橋隆 / 色彩設計:竹澤聡 / 撮影監督:高橋賢司 / 音楽:林ゆうき / 製作担当:澤守洸 / 声の出演:美山加恋福原遥村中知藤田咲、森なな子、水瀬いのりかないみか悠木碧尾上松也 / 製作:東映アニメーション / 配給:東映

同時上映『Petit☆ドリームスターズ! レッツ・ラ・クッキン? ショータイム!』 監督:宮原直樹 / CGディレクター:小林真理

2017年日本作品 / 上映時間:1時間分 / 日本語字幕:松浦美奈 / PG12

2017年10月28日日本公開

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2017/11/10)



[粗筋]

 宇佐美いちか(美山加恋)たちキラキラパティスリーの面々は、世界パティシエコンテストに出場するキラ星シエル(水瀬いのり)をサポートするため、共にパリへと渡る。

 そんな矢先、パリの街に泡立て器の怪物が突如出現。いちかたちはプリキュアに変身して撃退するが、直後からシエルの様子がおかしくなる。戦いの最中に本来の妖精キラリンの姿に戻ってしまい、シエルの姿にはなれるがプリキュアには変身出来ず、調理のさなかにもミスを繰り返す始末。

 コンテスト前のパーティーで、そんなシエルの不調を、ひとくち試食しただけで見抜く男性がいた。その人物は、ジャン=ピエール(尾上松也)――かつてパリで修行していた頃のシエルが世話になっていた、孤高のパティシエだった。シエルはスランプから脱却するため、彼の厨房を借りてスイーツ作りに臨む。

 相変わらずミスを連発するシエルは、いちかや有栖川ひまり(福原遥)らのサポートでスイーツ作りに励むが、ジャン=ピエールはそれこそが彼女の堕落の原因だ、と指摘する。

 いちかたちとの出会いと彼女たちの協力によって成長した、と信じていたシエルは、かつてのように、独力で作るべきだ、というジャン=ピエールの言葉に思い悩んだ。そんな彼女に、いちかたちは、シエルがジャン=ピエールに初めて出逢ったとき作ったミルフィーユに挑んでみるよう提案する……



[感想]

 基本的に、テレビシリーズの舞台である架空の都市や、映画オリジナルの異世界を舞台とすることの多いプリキュアシリーズだが、唯一例外として登場した実在の都市が、『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』におけるフランス・パリであった。『ハートキャッチ〜』はファッション、今回はスイーツと、パリがその世界的中心として認知されている文化をテーマにしていたから、というのもあるだろうが、ファンタジー世界に落とし込んでも違和感のない街並だからこそ可能なのだろう。

 とはいえ、繰り広げられる物語は、わざわざ海外を舞台にした必然性が感じられないくらいに“プリキュア”シリーズそのものだ――というより、『キラキラ☆プリキュアアラモード』というテレビシリーズの世界観を凝縮した内容、と言っていい。

 物語は冒頭からハイペースで展開する。特に説明もなく、シエルのパティシエコンテスト参加と、それに伴う仲間たちの渡仏の様子が描かれたかと思うと、すぐに前座よろしく最初の戦闘が始まる。そこで描かれるトラブルから、シエルの過去と繋がるジャン=ピエールとの再会があり、本筋へとなだれ込んでいく。やもするとついていけなくなりそうなほどのハイペースだが、テレビシリーズを彷彿とさせるテンポで伝わりやすく飽きさせない。

 このシリーズではお約束でもある、いささか強引な設定や展開も、このスピード感あってこそ、ではあろうが、丸め込まれるように受け入れてしまっている。ジャン=ピエールのすっ飛んだスイーツへの情熱、それについていって何故か評価されているシエルの奇妙さ、などツッコもうと思えば幾らでもツッコめるポイントが満載なのだが、完全に勢いに持って行かれてしまう。かと思うと、そうして違和感を突き抜けてしまった描写を急に汲み取って笑いに還元してしまう場面もある。このシリーズらしいリズムを保ったまんま、絶妙な匙加減で観客を揺さぶってくるから、否応なく魅せられてしまう。

 翻って、恐らくテレビシリーズに接していなければ「あれ? どうしてそうなる?」という疑問が解消されないまま話が転がっていくことにモヤモヤしそうだ。シリーズで既に説明済の要素については詳述を省くのは、観る側の忍耐力に大幅な制約のかかる児童向け作品としては正しい考え方だが、このシリーズは特に跳躍が激しいので、他の劇場版以上に、テレビシリーズでの予習が必須となる作品と言えよう。

 しかし、その大前提さえクリア出来れば――あとはそれがよほど肌に合わない、という場合を除けば、本篇はほぼ不満がない仕上がりだと思う。6人目のプリキュア、キュアパルフェを軸に構築された1本芯の通ったドラマ、盛り沢山の変身とアクション・シーン。シリアスに主題を描き出す一方で、このシリーズのプリキュアだからこそのユーモアをちりばめて笑いを誘うことも忘れていない。こうした子供向け作品のユーモアは、やもすると狙いすぎて大人としては苦笑いするしかない出来になることもしばしばだが、本篇の場合はけっこう本気で笑わされるはずである。個人的には、あるキャラの変身についてのネタと、最後の最後で出てくる大ネタがツボだった。あれ、どう始末をつけるんだ? と首を傾げていたものだから、なおさらに。

 テレビシリーズの個性を存分に盛り込みつつ、劇場版ならではの完成度の高いヴィジュアルと派手な見せ場もふんだんに織り込んでいる。

 しかしその一方で、もはや定番となった、観客からの応援を求めるプロセスは健在ながら、もうひとつの定番であったはずのダンスパートは外されている。『プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪ 奇跡の魔法!』でミュージカル仕立てにまで挑んでしまったことでいちど総決算が済んでしまった、という事情もありそうだが、ダンスを抜いてもサーヴィスは充分、といった判断もあったのではなかろうか。

 シリーズも14年目となり、“ダンス”や“スイーツ”といったヒロインに付け加える要素にもそろそろ頭打ちになってきた感は否めない。だが少なくともいまのところ、そうした行き詰まりよりも、余裕さえ滲ませた充実感のほうが濃密だ。個人的に“プリキュア”シリーズは現代日本アニメーションの精髄、と思っているが、そのことを改めて確信させてくれる1本であった。



関連作品:

劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart』/『劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち』/『ふたりはプリキュア Splash Star チクタク危機一髪!』/『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』/『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』/『フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』/『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』/『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』/『スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』/『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』/『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』/『Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』/『魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!

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