“We shall never surrender.”

 きのうまでは作業でまったく身動き取れず、今月は中旬も終わろうとしている今になってもまだ『おしゃれ泥棒』しか映画館では観てない、という有様でした。一段落したらすぐさま劇場に馳せ参じたくなるのは当然です……っていうか、きのうには決着することを見越して、今日付けのチケットが購入出来るようになる日曜深夜にはさっさとネット経由で席を確保してたりする。

 久々の映画鑑賞に選んだ劇場はTOHOシネマズ新宿、鑑賞したのはクリストファー・ノーラン監督最新作、ドイツ軍によって包囲された港町からの撤退の様子を、複数の視点を軸に圧倒的リアリティで描きだした戦争サスペンスダンケルク(字幕・IMAX)』(Warner Bros.配給)。公開後の報道で、一般スクリーンだとかなり不本意な形でしか上映出来ない、という事実を知ったため、是が非でもIMAX版で観ておきたかったのです。……本篇開始直前、隣の席に座ろうとした男性が私のポップコーンを引っかけてぜんぶぶちまけてしまい、急ぎ廊下に戻って係員の方に簡単な清掃とポップコーンの交換をお願いしてきたために、冒頭のテロップ部分だけ見落としてしまいましたが、まあそこだけだったので良かった。

 それにしても、噂通りの傑作でした。ストーリーと言えるほどのストーリーはない、登場人物の背景についても、民間の小型船所有者やその周囲については多少仄めかしているものの、ほとんど描くことなく進んでいく。しかしその過程が実にスリリングで迫力がある。そもそもは3万人を救出する程度の人員しか派遣されず、それも英国兵優先、部隊によっては後回しにされる、という事実が仄めかされる。そんな中で必死に救助艇に乗り込もうと画策するものの、絶え間ないドイツ軍の攻撃によって救いの手が繰り返し無に帰してしまう。このひとりの若き兵士の眼を借りることで、その絶望的な戦況を観客に実感させると同時に、時間軸の異なる視点を絡めていくことで、全篇に緊張感を織り込むことにも成功している。戦争映画として充分すぎる説得力とインパクトを備えながら、この手法によって、さながらヒッチコックのサスペンスを観るような趣を作品にもたらしているのです。

 ハンス・ジマーの不穏で変化に富んだスコアも活きた、初の実話ベースながらノーランらしさに満ちた傑作。例によって“アカデミー賞最有力”という文句が聞こえてますが、これに関してはその可能性、かなり高いと思います。

 出来たらハシゴしたかったところですが、時間割のうまく噛み合う作品がなかったので、とりあえずこれ1本だけ。