怪し会八雲2017 in 松江洞光寺。

 宍道湖に沈む夕陽を眺めつつ、徒歩にて赴いたのは、昨年と同じ洞光寺です。昨年、下見も含めて数回訪れているので、もはや迷う理由がありません……ただ、いっかい覚えたルートが裏口から入るものだったのは失敗だった。いっかいも山門側から入ってない、というか、山門をちゃんと見たこと自体ないぞ。

 少々ゆったりと移動してしまったせいか、既にけっこう列が出来ていて、着席出来たのはだいぶ端っこ。それでもこのイベントは、どの席でも充分に演者との距離は近いので、あんまり気にはなりません。ただ、正面からお顔を拝見したいなら、早めに来なきゃ駄目ですけど。

 全員が本堂に着席し、落ち着いたところで、照明が落ち、いよいよ開演。上演内容によりますが、このイベントは基本的に始まるときは真っ暗になる。前日の松江ゴーストツアーもそうですが、やっぱり怪談には闇が似合います。手燭を携え現れた座長・茶風林氏が演者の使う5本の蝋燭に火を点し、そのあとで演者が集って、朗読が始まります。

 最初の演目は、小泉八雲原作『がま』、続いて『閻魔大王の前で』。どちらも民話的なアプローチの話です。ひとりでテキストを読み上げるのではなく、役柄ごとに役者を割り振って演じることの出来るここの朗読スタイルだと、会話主体がしっくり来る。この洞光寺の本堂はかなり広い代わり、蝋燭の光がけっこうあたりを大きく照らしてしまい、東京の会場のような暗闇、強い密閉感は演出しづらいのですが、だからこそ民話的な、とぼけた会話もよく合います。

 3つ目の演目は、木原浩勝氏原作『四人目』。こちらはのちに木原氏・茶風林氏と同じく松江観光大使FROGMAN氏によってアニメ化されているので、詳しくはそちらをご覧ください。木原氏の最近の作品としてはかなり慄然とする話ですが、ヴィジュアルでないと伝わりづらい内容を、語りで巧く演出していました。

 ここでお清めの時間です。もともと酒好きゆえにこの“怪し会”を企画した茶風林氏にとってはメインイベントでもある。ここ松江での“怪し会”では毎回、松江の地酒を選んで紹介されていたそうですが、今回のお酒は特に茶風林氏がご執心だったようで、交渉の末にようやく提供できたらしい。

 銘柄は、王祿。厳密な温度管理が必要なため、蔵元に認められなければおろしてもらえず、購入出来るのはごく限られた店舗だけ、という幻のお酒です。

 しかしそんなにも厳しく管理されているだけあって、非常に美味しい。飲み口は思いのほか柔らかく、味わいは深い。怪し会にもずいぶん参加して来ましたが、個人的にはこれがいちばん好きです……しかし、ものがものだけに、他の回のように瓶詰めでのおかわりの提供はなく、お土産には出来ませんでした。そのぶん、その場でお金を支払って、いつもより多めに呑んでしまった。

 お清めも済んで、ふたたび朗読の始まりです。4つ目の演目は、『ニッカリ青江』。こちらはこのイベントのオリジナル作品。実在する名刀とその逸話を題材にしたお話です。松平家の前に短期間、松江藩主であった京極忠高が拝領した、ということから選ばれたのでしょうが……なんとなく、『刀剣乱舞』に寄せているような気がしました。とうらぶについてほとんど知識がないので、そー思ったに過ぎませんけど。

 最後の演目は、“青柳の話”。ふたたび小泉八雲の原作です。密命を帯びた侍が旅先で巡り会った娘と結ばれるが、実はその娘は……という、民話寄りの怪談。怪し会は最後の話をしんみりと締めくくることが多いのですが、これもしっとりとした内容です。先の話がいささかユーモラスだったぶん、沁みました。

 というわけで、全演目が終了。『四人目』を除くとセレクトした話が民話寄りで、怖い、というよりはちょっとほっこりとする印象でした。お酒が非常に美味しかったこともあって、いい気分でホテルに戻りました……途中でちょっとした失敗をやらかして酔いが醒めましたが、なにをやらかしたのかは内緒。



 なお、直後に書くタイミングを逸し、そのまんまずるずると時間が経ってしまい、あろうことかほぼ11ヶ月後にこれを書いております。酒が入ったせいもあって(そして若干呑みすぎたせいもあって)記憶は余計に曖昧で、細かく書けてません。来年は、っていうか今年はもっと細かく書けるよう、早めに手をつけます。

 ……しかしそれ以上に、こんどこそはちゃんと正面から入らないと……そして、明るいうちに正面からの様子を撮影してこないと。