本日のお買い物

 うふ。うふふ。うふふふふふふふ。

 思えばミステリ読者になってウン十年、その最初の頃に刊行を切望していた1冊が鮎川哲也の『白樺荘事件』でした。“鮎川哲也と十三の椅子”と称したシリーズの1巻として刊行が予告されていたものです。この頃はほぼ翻訳ミステリ専門であった東京創元社が企画したものであり、山口雅也北村薫有栖川有栖宮部みゆきといった面々のデビュー作を刊行したことでも伝説的ですが、公募によって13番目の作品として採用されたのが、のちに爆発的な人気を博した今邑彩だった、という点でも極めて重要なシリーズでした。

 最晩年に至ってもアンソロジーの編纂などに活躍されていた著者ですが、しかしもともと寡作であったこともあり執筆は遅れ、けっきょく完成しないまま他界、『白樺荘事件』は幻の作品になってしまったのです。一時は別の作家が加筆して完成させる、という噂も流れてきたのですが、けっきょくそれも刊行されることはなく、時間だけが過ぎていきました。

 そして発表から四半世紀以上を経て、ようやく本の形で上梓されたわけです。肝心の『白樺荘事件』は未完のままとなりましたが、この作品の雛型であり、実はこちらも復刻を待ち望んでいた『白の恐怖』は全篇が収録されているのが嬉しい。

 先に解題をざっと斜め読みしたところ、どうも『白樺荘事件』は『白の恐怖』が後半部分の雛型となる予定で、実は鮎川氏が生前に執筆した約350枚では『白の恐怖』の部分にも辿り着いていなかったらしい。それ故に、本書の編者である日下三蔵氏は、繰り返し鮎川作品復刻の企画を実現に移されていますが、『白樺荘事件』がどのように形になるのか不明瞭な状況で『白の恐怖』を復刻することには二の足を踏んでいた模様。このたび、著作権継承者から論創社に連絡があったことを契機に、原型の『白の恐怖』や単行本未収録の絵物語などを併せた形での復刻が実現した、という経緯のようです。

 発売予定が出てからずーっと楽しみにしてましたが、何が理由だったのか延期を繰り返していてヤキモキしていたところ、先日ツイッターで呟いたように、論創社のフェア開催に併せて、書泉グランデでは既に入荷している、という情報を掴み、たまらずに今日、このためだけに出かけて買ってきてしまいました。ああ、ほんとーに嬉しい。完全に好事家向けの内容なので、懐にはちょっとこたえる価格ですが、いいのです。

 他の書店では未だに発売されていませんが、既に現物が存在しているので、たぶん今週あたりから市場に出回り始めるのではないでしょうか。興味のある方はもうしばらくお待ちください。待てない方は私のように書泉に走れ。