『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン1入口に掲示されたチラシ。

原作、監督&脚本:神山健治 / キャラクター原案:森川聡子 / 総作画監督佐々木敦子黄瀬和哉 / 演出:堀元宣、河野利幸 / ハーツデザイン原案:コヤマシゲト / メカニックデザイン:清水洋、伊津野妙子(石森プロ) / クリーチャー・デザイン:クリストフ・フェレラ / エフェクト作画監督竹内敦志 / 色彩設計片山由美子 / 美術監督:鮫島潔、日野香諸里 / 3D監督:塚本倫基 / 3Dレイアウト:佐藤千織 / 撮影監督:田中宏侍 / 編集:村上義典 / 音楽:下村陽子 / 主題歌:森川ココネ『デイ・ドリーム・ビリーバー』 / 声の出演:高畑充希満島真之介江口洋介古田新太高橋英樹釘宮理恵高木渉前野朋哉清水理沙 / 制作プロダクション:シグナル・エムディ / 配給:Warner Bros.

2017年日本作品 / 上映時間:1時間51分

2017年3月18日日本公開

公式サイト : http://www.hirunehime.jp/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2017/3/25)



[粗筋]

 間もなく東京オリンピックの開会を迎える2020年夏。

 倉敷で暮らす森川ココネ(高畑充希)は近ごろ、奇妙な夢を立て続けで見ていた。機械の力が支配する国王のもとに、魔法使いの姫君が生まれたことで始まる悲劇と冒険――それは幼い頃、ココネの父モモタロー(江口洋介)が寝物語に語ってくれたものだった。

 授業中でもやたらに眠りこけてしまい、その都度物語が進むことを訝っていたココネだが、ある日、現実でも事件が起きた。モモタローが突然、警察に逮捕されてしまったのである。

 その日はココネの母・イクミ(清水理沙)の命日だった。急な出来事に困惑しながらもひとり墓参したココネは、そこに彼女がずっと身近に置いているぬいぐるみが備えられているのを発見する。中には、古びたタブレットが押し込まれていた。

 家に戻り、ふたたび眠り込んだココネの夢の中でも、物語は急転していた。魔法使いの姫君エンシェンの協力者となっていたピーチのもとを、王の家臣であるベワンが訪れ、ふたりを捕らえようとしたのだ。

 ココネが目醒めると、何ものかが家のインターフォンを鳴らしている。モニターに映ったのは、夢に登場するベワンとよく似た渡辺一郎(古田新太)という男だった。まさにそのとき、捕らわれてる父からのメッセージがココネの元に届く。この男が現れたら気をつけろ、という言葉と共に添えられていた写真には、渡辺の姿があった――



[感想]

 これはSFと呼ぶべきなのか、ファンタジーと捉えるべきなのか。

 ただ、いずれにしても、非常に計算と配慮の細かに施された作品であるのは間違いない。序盤は「いったいなにが起きてるんだ?」と困惑するが、次第にピースがひとつひとつ結合していき、全体像が見えてくる。謎解きの驚きと興奮がきちんと演出された物語には、ジャンルなど詮索無用、と言わんばかりの牽引力が備わっている。

 とは言い条、けっこう乱暴な跳躍や、考証の不自然さが見受けられることも指摘せざるを得ない。

 たとえば物語の重要な鍵を握るタブレットである。詳しいことは省くが、本篇が2020年の近未来を時代背景にしていることを思うと、このタブレットは存在自体がいささか不自然だ。あり得なくはないが、恐らく今となってはまともに動かないか、OSの進歩について行けず無用の長物になっている可能性が高い。

 また、物語の鍵となる技術の扱いも同様だ。それが本篇においてココネが投げ込まれる冒険の契機となっているが、現実としてそこまでの価値を保ちうるのか。これを狙わなければにっちもさっちもいかなくなっているひとびとは、さすがにちょっと無能すぎやしないだろうか。この技術が実際に開発されたであろう時期を思うと、現実には使えないレベルになっている可能性のほうが高い。

 とはいえ、このあたりは森川ココネを冒険に誘い、導くためのガジェット、と捉えれば、許容範囲と言っていいだろう――それを許容出来るか否か、でまず観る者を選んでしまっているリスクはあれど、ストーリーを転がし、終盤での逆転を作り出していく、という意味では十二分に機能している。

 また、ファンタジー的な組み立てで、一見不条理な展開を重ねているように映るが、ほとんどの出来事が合理的に解釈出来る作りになっている。夢の出来事自体が現実とリンクする妙もさりながら、現実の奇妙な展開も、きちんと説明がつくように考えられているのだ。

 しかし、そのすべてを物語のなかで説明することはしていない。不親切のようでもあるが、そこに“読み解く”楽しさがあるのは確かだ。

 そして、読み解きながら鑑賞したとき、あのクライマックスが本当の意味で機能する。

 恐らく、漫然と物語を置い、向こうから答えを提示してくれることを期待しながら鑑賞していると、あのクライマックスは不自然なご都合主義に思えてしまうのではなかろうか。だが、過程が意味するところを把握した上で観ていると、あのクライマックスに迸る、ある人物の想いが観る者に強烈に響いてくる。冒険映画の最高潮を、あれほど堪能させてくれるひと幕は、それほど世の中に溢れているわけではない。

 たぶん観客がいちばん知りたい“謎”が置き去りになっていることや、企み抜かれたプロットの要求ゆえ、と察しはついても、科学技術関連がやはり不自然であることなどの不満は尾を引く。かなり積極的に物語を読み解かないと伝わりづらい、というハードルがあるぶん、こうした不満がよけい強く感じられるのも惜しいところだ。

 ただ、そうした欠点を考慮に容れても、非常に見応えのある力作であることは間違いない。これだけの意欲と熱量のある、それもオリジナルの長篇アニメーション作品が劇場公開作品として扱われているのは、けっこう嬉しいことだと思う。



関連作品:

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