『プリキュアドリームスターズ!』

ユナイテッド・シネマ豊洲が入っているららぽーと豊洲入口脇に掲示されたポスター。

原作:東堂いづみ / 監督&キャラクターデザイン:宮本浩史 / 脚本:坪田文 / 演出:佐藤宏幸、村上貴之 / オリジナルキャラクターデザイン:中谷友紀子、宮本絵美子、井野真理恵 / 総作画監督:中谷友紀子 / CGディレクター:鄭載薫 / CGプロデューサー:野島淳志 / 美術監督:倉橋隆 / 色彩設計:澤田豊二 / 撮影監督:中村俊介、高橋賢司 / CGアニメーションスーパーヴァィザー:金井弘樹 / 製作担当:澤守洸 / 音楽:林ゆうき / 主題歌:木村佳乃『君を呼ぶ場所』 / 声の出演:美山加恋福原遥村中知藤田咲、森なな子、かないみか高橋李依堀江由衣早見沙織齋藤彩夏嶋村侑浅野真澄山村響沢城みゆき東山奈央古城門志帆阿澄佳奈木村佳乃山里亮太南海キャンディーズ)、ライス(関町知弘田所仁) / アニメーション制作:東映アニメーション / 配給:東映

2017年日本作品 / 上映時間:1時間19分

2017年3月18日日本公開

公式サイト : http://www.precure-dreamstars.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2017/3/24)



[粗筋]

 宇佐美いちか(美山加恋)は奇妙な夢を見た。鳥居の立ち並ぶ浅瀬を、さくら(阿澄佳奈)と呼ばれた女の子と、しずく(木村佳乃)と呼ばれた青い狐が2匹の狛犬に追われて逃げる姿。やがてさくらは、大きな鳥居の向こうに開かれた異空間に送り出されて逃げ延びるが、しずくは狛犬に捕らえられてしまった――

 自分の夢なのに自分が登場していないことを訝っていたいちかだったが、自分の街の片隅に、あの大鳥居によく似た場所を見つける。開花が遅れているせいか、花の咲いていない桜が立ち並ぶ階段の先に、何と夢で見たさくらがいた。驚くいちかの前に、更にあの狛犬までが現れて、さくらに襲いかかる。

 いちかはキュアホイップに変身して急場をしのぐが、狛犬は手強く撃退出来ない。しかし、さくらがしずくから託されたミラクルサクライトの力で次元を超え、キュアカスタードこと有栖川ひまり(福原遥)、キュアジェラートこと立神あおい(村中知)、キュアマカロンこと琴爪ゆかり(藤田咲)、キュアショコラこと剣城あきら(森なな子)を連れてきて、何とか狛犬を退けることが出来た。

 理由は解らないが、どうやらいちかはさくらの暮らす“桜が原”での出来事を夢で目撃したらしい。捕らわれたしずくを救い、桜が原を取り戻すために、さくらはカードに記されたアイテムを持つひとびとに助けを求めようとしていた。

 そのうち1枚に記された“カップケーキ”がキュアホイップたちを示しているとしたら、他にふた組の助けが要る。そこでいちかたちは二手に分かれ、さくらの開く扉を抜けて、カードに描かれた暗号が示すひとびとを探すことにした。

 いちか、ひまり、あおいが送られたのは魔法界、ゆかりとあきらが送られたのはノーブル学園。そこにいたのは、彼女とは別のプリキュアたちだった――



[感想]

 2009年から始まった、歴代プリキュアが一堂に会する『プリキュアオールスターズ』のシリーズは、しかし実のところ、最初からけっこう無理を孕んでいた企画でもあった。最初こそ実質3チームで、合わせても11人とそれほど人数は多くなかったけれど、毎年のように3人から5人の新規メンバーが加わることで、もはや1時間ちょっとの尺では紹介しきれないほどヒロインだらけになってしまった。しかも、本来小学校低学年くらいまでの女の子をターゲットにしたシリーズであるはずなのに、テレビでの本放送が10年も前、というキャラクターまで存在している有様となっている――それはそれで色々と趣向を凝らすことも出来ようが、本来のターゲットにとって親しみにくい部分を増やすリスクを負うことにも繋がる。

 8年目にして仕切り直した本篇は、“ドリームスターズ”と銘打ち、2015年度の『Go!プリンセスプリキュア』、2016年度の『魔法つかいプリキュア!』、そして現行の『キラキラ☆プリキュアアラモード』までの3年間に登場したプリキュアたちだけに絞った。この範囲なら、本来のターゲットにとっても親しみやすいし、その親として作品に接してきた世代にとっても把握しやすい内容に出来る。適切な判断だと思う。

 そしてもうひとつ、本篇で特筆すべき点は、これまで以上に3DCGを活用していることだろう。物語は異世界から始まるが、この異世界パートはすべて3DCGを用いて描かれている。鳥居に灯籠そして桜といった日本を象徴するようなモチーフを立体的にリアルに描いた背景のうえで、暖かみや柔らかさを感じさせるキャラクターたちが躍動する。このプリキュアシリーズではエンディングテーマにて導入し始めたのを皮切りに、次第に3DCGの扱いを拡大していったが、その都度じわじわと技術を向上させ、いまや日本でもトップレベルのクオリティを実現してしまった。近年は同時上映の短篇作品をすべて3DCGで制作する、という試みを重ねていたので、本篇のように積極的に導入したのも頷ける。

 そのうえで更に、従来のプリキュア映画でお馴染みだった観客参加の趣向にも新たな工夫を施している。以前からこのシリーズでは年少の観客向けに入場特典としてライトを配布、プリキュアがピンチのときにそれを使ってプリキュアを応援してもらう、というかたちで作品への参加を促す、という趣向を採り入れていた。今回、そこから先に進め、3DCGの特性を活かして、さながら劇中のキャラクターが壇上に現れて応援を呼びかける、という表現に発展させた。率直に言えば、ストーリー的には少々不自然な成り行きではあるのだが、純真な観客の関心を惹く手法としては有効であるし、こういうチャレンジ精神はこのシリーズには相応しい。

 ただ、この趣向の盛り込み方もそうなのだが、全体に背景の描写や動機付けを軽んじている感があるのが惜しまれる。そもそも鴉天狗がなにを狙っているのか、とかどうしてしずくが自分を助けるための手懸かりを持っていたのか、とか様々な事情がほとんど説明されていない。説明すること自体は必要とは言えないが、背景を仄めかせる、窺わせるような奥行きを用意することを怠っているので、どうも世界観が上っ面だけに見えてしまう。これなら、いちかたちの世界とはまるでリンクしない別世界の出来事、とされたほうが納得がいく。

 しかし、それでもドラマの盛り上げ方はさすがに堂々たるものだ。プリキュア側のキャストを絞ることで、ゲストキャラを軸に映画ならではのドラマを構築し、感動と興奮をしっかりと演出している。如何せん背景にうもひとつ芯が通っていないために少々腰が弱くなってしまった感もあるが、この状態でも牽引力を作り出せるテクニックには感心させられる。

 実は本篇のクオリティを一段押しあげているのは、ギャグの扱いの巧さではないか、と私は考えている。もともとドタバタを随所に挿入して笑いを誘う工夫は旧作でも普通に施していたが、本篇は特に効果的に用いている。たとえば、ノーブル学園にあっさりと馴染んでしまうゆかりやナチュラルに“王子様”っぷりを発揮するあきらの様子は、まだデビューしたての彼女たちのキャラクター性をうまく活かして印象づけている。次第に物語はシリアスさを増していくが、そこに細々と笑いを挟むことでガス抜きする工夫をしている。とりわけクライマックスでのひと幕など、ガス抜きとしてだけでなく純粋にユーモアとして出し方が絶妙だ。お世辞にも声の演技が達者とは言えないお笑い芸人の起用も、本篇に限っては奏功している。

 全体の完成度としては、このシリーズのなかでも決して最高の水準ではない。だが、何かしら新しい趣向、工夫を施し、新たな楽しみを創出しようという姿勢は明白だ。小さな女の子をターゲットに据えながらも、その実、現代の日本アニメーションの先端を行くシリーズの真価をはっきりと示した作品である。



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