『SING シング(吹替・2D・TCX)』

TOHOシネマズ日本橋が入っているコレド室町2入口に掲示されたポスター。

原題:“Sing” / 監督&脚本:ガース・ジェニングス / 共同監督:クリストフ・“ゼベ”・ロードゥレ / 製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー / プロダクション・デザイン&キャラクター・デザイン:エリック・ギヨン / 編集:グレゴリー・パーラー / エグゼクティヴ・ミュージック・プロデューサー:ハーヴィー・メイソン・Jr. / ミュージック・スーパーヴァイザー:ジョジョ・ヴィラヌエヴァ / 音楽:ジョビィ・タルボット / 声の出演:マシュー・マコノヒーリース・ウィザースプーンセス・マクファーレンスカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリー、ニック・クロール、ガース・ジェニングス、ジェニファー・ソーンダース、ジェニファー・ハドソン、ピーター・セラフィノウィッツ、ベック・ベネット / 日本語吹替版声の出演:内村光良MISIA長澤まさみ斎藤司トレンディエンジェル)、大橋卓弥スキマスイッチ)、山寺宏一坂本真綾田中真弓宮野真守大地真央石塚運昇谷山紀章水樹奈々木村昴村瀬歩柿原徹也重本ことり佐倉綾音辻美優河口恭吾 / イルミネーション・エンタテインメント製作 / 配給:東宝東和

2016年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:石田泰子 / 日本語吹替翻訳:桜井裕子

2017年3月17日日本公開

公式サイト : http://sing-movie.jp/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2017/3/20)



[粗筋]

 ムーン劇場はいま、閉鎖の危機に瀕していた。幼い頃にその幻想的な世界に魅せられたバスター・ムーン(マシュー・マコノヒー内村光良)のため、父親が洗車の仕事で地道に貯めたお金を投じて買収した劇場だが、当のムーンが支配人となってからは鳴かず飛ばず、このままでは銀行に劇場を差し押さえられること必至の情勢だった。

 ムーンは起死回生の策として、オーディションを実施することにした。埋もれているエンターテイナーを発掘し、その過程をショーとして上演しようと目論んだのである。

 ムーンは有り金すべてと、なけなしの財産を換金して捻出する1000ドルを賞金にするつもりだった――が、ここで思わぬ間違いが起きてしまう。秘書を務める200歳のカメレオン、ミス・クローリー(ガース・ジェニングス/田中真弓)が誤ってゼロをふたつ多く記入してチラシを刷ってしまい、ムーンがそれに気づくよりも先にチラシは街中に撒かれてしまった。

 当然のように劇場にはオーディションを受けるため、歌声に自信のある人々が殺到する。そうとは知らず、ムーンは大喜びで選考を開始するのだった。

 性格は悪いがエンターテイナーとしてのセンスは抜群のネズミのマイク(セス・マクファーレン山寺宏一)、ギャングの息子だが悪事よりも歌声に自信のあるジョニー(タロン・エガートン大橋卓弥)など、ムーンはショーの構成も考慮して決勝進出者を選んでいく。だが、単独では物足りない、とダンサーのグンター(ニック・クロール/斎藤司)と組まされた主婦のロジータ(リース・ウィザースプーン坂本真綾)、反対にバンドを組んでいた彼氏とふたりではなく単独での出演を請われたパンクシンガーのアッシュ(スカーレット・ヨハンソン長澤まさみ)など、この選考に不満を抱く者も少なくない。

 しかし、いちばん無念だったのはミーナ(トリー・ケリー/MISIA)である。恥ずかしがり屋で人前に出ることを人一倍怖れているが、誰よりも歌を愛し、家族はその実力を信じていた。しかしオーディションに臨んでも結局歌う機を逸してしまい、落選となってしまう。帰宅したあと、家族に励まされ、ミーナはもういちどオーディションをしてもらうべく、ムーンの元に懇願に訪れるが、ショーの準備で忙しいムーンは、彼女に裏方としての協力を求めるのだった……。



[感想]

 ストーリーは非常にシンプルだ。様々なエンターテイナー候補が登場するが、こういう“閉鎖寸前の小屋を立て直す”という類の物語の定番をほぼ辿っている、と言っていい。

 チラシの飛び散り方であるとか、子沢山の主婦の様子であるとか、作品が様々な種類の動物たちが人間のような生活を送るファンタジー世界であるとはいえ不自然な描写が多いが、その辺は誇張やユーモアとして受け止められる程度だ。むしろ、こういう“跳躍”が認められる世界だからこそ、クライマックスの逆転劇も比較的許容しやすくなっている。

 ステージに立つ面々それぞれにキャラが立っており、各個でドラマを進行させる趣向も巧い。単純に、不遇を託っている、という共通項では括らず、それぞれが異なる理由から一歩前へ踏み出せずにいる、というかたちにしており、その描写は多彩だ。過度の引っ込み思案ゆえに人前で実力を披露できないミーナ、彼氏の言うがまま出会ったがゆえに自らの才能に気づかなかったアッシュ。父親に本心を打ち明けられず夢への道を閉ざされていたジョニーこそオーソドックスだが、他方で完全に性格の悪さで燻っているとしか思えないマイクのようなキャラクターもいる。それぞれの背景をパッチワークのように織り交ぜながら進行していくので、粗筋を拾い上げるとそれほど書くことはないように思えるが、全体での紆余曲折は非常に豊富に感じられる。

 だが、何よりも見事なのは音楽の使い方である。登場するのはおおむね聴き覚えのあるヒットナンバーばかりだが、それらをさながらヒーロー映画のヒーロー登場、変身のくだりよろしく絶好のタイミングで繰り出している。クライマックスはつるべ打ちだが、ここの登場順もまた、それぞれのインパクトを強められるよう計算が行き届いている。

 私は今回、この作品を吹替版にて鑑賞したが、本篇は日本語作品としての完成度もかなり高い。ミーナにはMISIA、ジョニーにはスキマスイッチ大橋卓弥という本職の歌手を配し、他のキャラクターにも多くは歌手活動もしている声優を起用している。例外はアッシュを演じた長澤まさみとお笑い芸人の斎藤司だが、いずれも歌唱力では決して引けを取っていない。斎藤など、キャラクターの振る舞いが彼の芸風に似ているせいもあってか見事なハマりようだ。

 だがやはり、本職を起用したジョニー、ミーナのインパクトは抜きん出ている。さすがに演技が達者とは言い難いが、芝居部分での拙さはキャラクターの持つ素朴さと思いのほかマッチしているし、それがあるからこそ、いざ歌った場面での輝きが際立つ。ゴリラとは思えないジョニーの気弱な喋り方があるからこそ甘く優しい歌声のパワーが増しているし、ミーナが歌う場面でのまさにゾウそのもののパワフルさにMISIAの歌声は実にしっくり来る。あの過剰な演出も、彼らの歌声だからこそ腑に落ちるものになっているのだ。声優経験のない人物を起用した吹替については厳しい声も上がりがちだが、本篇に関しては(演技の部分がどーしても許せない、とでも言わない限り)納得するひとのほうが多いのではなかろうか。

 動物たちが普通に文明を築いている点を抜きにしてもあり得ない話だが、そういう印象を強引に弾き飛ばしてしまうくらいのパワーがもたらす爽快感は逸品だ。代わり映えのない日常に気分が腐っているようなひとにお薦めしたい。



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