『オズの魔法使』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン1前に掲示された案内ポスター。 オズの魔法使 [Blu-ray]

原題:“Wizard of Oz” / 原作:L・フランク・ボーム / 監督:ヴィクター・フレミング / 脚本:ノエル・ラングリー、フローレンス・ライアソンエドガー・アレン・ウルフ / 製作:アーヴィン・ルロイ / 撮影監督:ハロルド・ロッソン / 美術:セドリック・ギボンズ / テクニカル・カラー・コンサルタント:ナタリー・カルマス、ヘンリー・ジャッファ / 編集:ブランシュ・せーウェル / 音楽:ハロルド・アーレン / 作詞:E・Y・ハーバーグ / 編曲:ハーバート・ストサート / 指揮:ジョージ・ストール / 音楽演奏:ジョージ・バスマン、マレー・カッター、ポール・マーカード、ケン・ダービイ、ボビー・コノリー / 出演:ジュディ・ガーランド、フランク・モーガンレイ・ボルジャーバート・ラージャック・ヘイリービリー・バークマーガレット・ハミルトン、チャーリー・グレイブウィン、パット・ウェイシー、クララ・ブランディック、トト / 配給:MGM映画 / 映像ソフト発売元:Warner Home Video

1939年アメリカ作品 / 上映時間:1時間41分 / 日本語字幕:金丸美南子

1954年12月25日日本公開

第2回新・午前十時の映画祭(2014/04/05〜2015/03/20開催)上映作品

2013年11月20日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon|製作75周年記念コレクターズ・エディション(Blu-ray Disc):amazon]

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/12/03)



[粗筋]

 叔父と叔母の営む農園に暮らすドロシー(ジュディ・ガーランド)に災難が降りかかった。常々彼女に意地悪な地主のガロチ夫人(マーガレット・ハミルトン)が、ドロシーの飼い犬トトに噛みつかれたことに激昂、トトを保健所に引き渡さなければ訴える、と言い出したのだ。トトは籠から抜け出しドロシーの元に戻ってきたが、ふたたび連れ戻されないためには家出するしかない、と考えて農園を飛び出す。

 しかし、偶然に出逢った千里眼のマーヴェル教授(フランク・モーガン)から、叔母が悲しんでいる姿が見える、と言われ、ドロシーは農園に戻った。そのとき、突如農園は竜巻に襲われ、横穴に逃げこむのが遅れたドロシーは、家屋もろとも竜巻に吹き飛ばされる。

 気づいたとき、家の外には見慣れない世界が広がっていた。戸惑う彼女の前に、北の魔女グリンダ(ビリー・バーク)と、“マンチキン”という小人たちが現れる。どうやら、家が落ちた際に、彼らを悩ませていた東の魔女を下敷きにしたことで、ドロシーは英雄視されてしまったらしい。

 叔母たちのことが気懸かりで一刻も早く農園に帰りたいドロシーに、グリンダたちは「黄色いレンガを辿った先にいる魔法使いに会えば、帰してくれるに違いない」と助言した。他に手の打ちようもなく、ドロシーは彼女たちの助言に従った。

 道々出会った、頭脳を持たない案山子(レイ・ボルジャー)、心のないブリキ男(ジャック・ヘイリー)、臆病者のライオン(バート・ラー)という、それぞれに切実な願いを抱えた者たちを道連れに、ドロシーは魔法使いを訪ねて、魔法の国オズを旅するのだった――



[感想]

 この作品を鑑賞してまず驚くのは、ドロシーが魔法の国に入った途端、それまでのモノトーンから一転、画面が極彩色に変わる、という趣向だ。

 製作されたのは1939年、まだカラー映画はさほど浸透していなかった時代だからこその大胆な趣向だが、これが結果的に“魔法の国”というシチュエーションが備える華やかさ、昂揚感を膨らませるのを大いに助けている。本篇より70年もの時を経て製作された『オズ はじまりの戦い』でも敢えてこの手法を踏襲しているが、オマージュを捧げる意味合いばかりではなく、表現としての効果も応用する狙いがあったのだろう。

 内容的には、いま観ると様々な点で技術の低さ、拙さが目についてしまうのは否めない。美術の完成度もそれほど高くないし、何箇所かで用いられる画面の合成もぎこちない。なまじカラーで製作されてしまったがゆえに、昨今の技術で映像のリファインを行った結果、粗がよけいに目立ってしまっているのも不幸な点と言えるかも知れない。

 しかしそれでも、当時駆使しうる技術の限りを尽くし、非現実の世界をスクリーンの構築しようとした意欲と努力とははっきりと窺える。工夫を凝らして構築された魔法の国のヴィジュアル、そこで繰り広げられる現実を超越した出来事や冒険の数々。技術の面から鑑賞すると未熟とはいえ、それが今となっては得がたい手触りを生み出しているのも事実だ。

 そして何より、物語として魅力的なのが重要だ。随所に埋め込まれたミュージカル・パートの華やかさと完成度も勿論だが、意外なほど波乱に富んだ物語になっている。序盤で遭遇する仲間たちをはじめとする不思議な生き物たち、ようやく逢うことの出来た“オズの魔法使”から突きつけられる要求と、それがもたらす新たな冒険と危機。ことここに及んで、風変わりなモチーフの数々にかなり明瞭な寓意が籠められていることが浮かび上がってくる趣向が巧みだ。これらはいずれも原作そのものの優秀さを物語る点だが、その美点を殺さず、映画的な工夫でもって活かしていることが、本篇をいまも鑑賞に耐えうる名作に昇華させているのだ。

 物語や楽曲の質の高さ、そして本篇に繋がる物語として構想された『オズ はじまりの戦い』の華美な映像を思うと、プロットや歌曲などを壊すことなくリメイクしてもよさそうにも思うが、しかし当時の技術に制約されたからこそ生じる、今となっては素朴な味わい、素直な表現の魅力をそのまま再現することは難しいだろう。仮に誰かが優れたリメイクを実現したとしても、本篇はスタンダードとしていつまでも愛され続けるのではなかろうか。



関連作品:

風と共に去りぬ

ザッツ・エンタテインメント

オズ はじまりの戦い』/『恋は邪魔者

メリー・ポピンズ』/『チャーリーとチョコレート工場』/『アナと雪の女王