『トリプルX:再起動(字幕・3D・IMAX)』

TOHOシネマズ新宿、エスカレーター入口脇に掲示されたポスター。

原題:“xXx : The Return of Xander Cage” / 監督:D・J・カルーソー / 脚本:F・スコット・フレイジャー / キャラクター原案:リッチ・ウィルクス / 製作:ジョー・ロス、ジェフ・キルシェンバウム、ヴィン・ディーゼル、サマンサ・ヴィンセント / 製作総指揮:ヴィンス・トティーノ、スコット・ヘミング、リック・キドニー、グロリア・ボーダーズ、ザック・ロス / 撮影監督:ラッセル・カーペンター / プロダクション・デザイナー:ジョン・ビリントン / 編集:ジム・ペイジ、ヴィンス・フィリッポーネ / 衣装:キンバリー・ティルマン / キャスティング: / 音楽:ブライアン・タイラー、ロバート・ライデッカー / 出演:ヴィン・ディーゼルドニー・イェン、ディーピカ・パードゥコーン、クリス・ウー、ルビー・ローズトニー・ジャー、ニーナ・ドブレフ、トニ・コレットサミュエル・L・ジャクソン、ロリー・マッキャン、アイス・キューブハーマイオニー・コーフィールド、トニー・ゴンザレス、マイケル・ビスピン、アル・サピエンザ、ショーン・ロバーツ、ネイマール / RKフィルムズ/ワン・レース・フィルムズ製作 / 配給:東和ピクチャーズ

2017年アメリカ作品 / 上映時間:1時間47分 / 日本語字幕:種市譲二

2017年2月24日日本公開

公式サイト : http://www.xandercage.jp/

TOHOシネマズ新宿にて初見(2017/3/1)



[粗筋]

 そのとき、アメリカ国家安全保障局=NSAのアウグスタス・ギボンズ(サミュエル・L・ジャクソン)は上海で、有力な人材の勧誘中だった。話が佳境に入ったとき、突如として彼らの眼と鼻の先に、人工衛星が墜落したのだ。

 即座にNSAの幹部たちが召集された。衛星を兵器に変えたのは、“パンドラの箱”と呼ばれる、衛星を遠隔操作し、好きな地点に墜落させられるユニットである。極秘に開発されていたそれを何ものかが不法に用いたのだ。召集された幹部たちに、ギボンズと並ぶ権限を持つジェーン・マルケ(トニ・コレット)が詰問したとき、会議室の防弾仕様の天窓を突き破って、ひとりの男が降ってきた。男はNSAの精鋭たちを鮮やかに薙ぎ倒すと、“パンドラの箱”を奪い、仲間たちと共にあっという間に消え去った。

 精鋭を凌駕する身体能力、常識破りの作戦。これと同じような真似が出来るのは、ギボンズが熱心に進めていた、“トリプルX”の人材しかいない。

“トリプルX”と呼ばれた最初の男はその頃、とある港町に身を潜めていた。マルケは彼の所在を何とか炙り出し、協力を要請する。組織に所属するつもりは毛頭なかったその男も、縁の深いギボンズを見舞った事態に、重い腰を上げるのだった。

 そしてふたたびその男、ザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)は世界の危機に挑むことになったのである――



[感想]

 実はこれ、いちおうは『トリプルX3』である。裏で色々とあったようで、2作目はアイス・キューブ主演で作られたものの、あまり評判は芳しくなく、日本では劇場公開もされなかった。私自身はちゃんと鑑賞はしていないが、映像ソフトではリリースされているので、興味がおありならばそちらを観ていただきたい。

 だが、紆余曲折を経て、ヴィン・ディーゼル演じるザンダー・ケイジは蘇った――2作目の粗筋では“死んだ”と書かれていたから、本当に蘇った、としか言いようがない。

 本来なら、どうして死んだ扱いになっていたのか、何故そこまでして“消えた”のか、作中で説明があって然るべきだろう。しかし、本編においてその辺はあまり詳しく説明されていない。ざっくりと語られ、詳細は見送られている。

 そこに加えて、本篇の事件はどうも大雑把すぎる。終わってみて振り返ると、どうしてこんな方法が必要で、何故こんな展開になったのか、の説明は不充分だ。こういう背後関係があるとして、まともに話を練ったとしたら、もっとシンプルな作戦で良かったんじゃないの? と首を傾げずにはいられないだろう。

 だが、ぶっちゃけその辺の細かいところはどうでもいいのだ――大ヒットとなった第1作にしても、そうした細部がパーフェクトだったわけではない。

 この『トリプルX』の魅力は、エクストリーム・スポーツ界の伝説となった男が、その能力を武器に、世界の危機とド派手に戯れる、という設定を活かしきったことこそにある。必要なのは細部よりも、大胆でスリリングな“作戦”に、笑い混じりで挑むザンダー・ケイジという男の魅力をどれだけ見せるか、という点だったのだ。

 そういう意味で本篇は、あの魅力を待ち焦がれていた者からしてみれば、冒頭からシビれる描写の連続である。ユーモラスなプロローグに始まって、最初に描かれるのはザンダー――ではなく、彼と対決することになるジャンとその一味の襲撃だが、これが実に素晴らしい。

 ジャンを演じるはドニー・イェンである。ジャッキーは既にハードなアクションからは一歩退くことを表明し、ジェット・リーが持病のため一線を退いているいま、間違いなく香港最強のアクション俳優と言っていい彼が、冒頭からそのパワーを炸裂させる。速さに加え、拳や脚だけでなく意識的に射撃も採り入れたあのシーンを観ただけでも嬉しくなってしまう。

 そして、ドニーたちのお膳立てを経て遂にふたたびスクリーンに姿を現したザンダー・ケイジがまた見事だ。第1作を彷彿とさせる、エクストリーム・スポーツの手法を採り入れた計画を、さも楽しそうにこなしていく。冷静に考えれば危険極まりない手段を、このシークエンス終盤で明かされるどーでもいい目的のために選択するその様は、まさに第1作で見せた、このシリーズならではのユニークなヒーローの姿に他ならない。

 両者がお目見えすると、あとは快調に話を転がしていく。NSAのスタッフを翻弄しつつも、危険な場所へと悠然と踏み込んでいくザンダーと、それを堂々たる振る舞いでいなすジャン。型に嵌まらない作戦から、入り乱れた激しい戦闘、そしてジェットスキーを装着したバイクでの壮絶なチェイスと見せ場が途切れない。

 一連のプロセスを追っていくと、改めてここには当代随一のアクションの達人が集まってしまったのだ、と実感させられる。ドニーのスピード感は勿論だが、その仲間として珍しい金髪姿で登場するトニー・ジャーの圧倒的躍動感。それに比べると筋肉量の多いヴィン・ディーゼルは重々しいのだが、スタントでの経験値は豊富――というかたぶん現代のハリウッドではジェイソン・ステイサムと共にトップレベルだろう、その技術力を随所で発揮する。中盤以降に繰り広げられる、車が走る車道での格闘など、ドニー・イェン作品でも似たようなシチュエーションはあったが、あちらよりも重量感があり、それでいてスピード感にも溢れて凄まじい見応えがある。

 先に動機の説明が不充分、と指摘したが、ちゃんと流れを組み立て、いつの間にか終盤では、観る側が痛快を味わえるような活躍ぶりを引き出すために奉仕している、という意味では実によく練りこまれたシナリオと言える。詳しくは述べないが、序盤と終盤とで異なる構図を用意し、出来るだけたくさんのアクション映画愛好家を喜ばせよう、というサーヴィス精神の表れが、本篇のいささか歪なストーリー構成に繋がったと思われる。

 ならば、そこを理由に出来映えを云々するのは野暮だ。ハリウッド流アクションの寵児ヴィン・ディーゼルと香港流アクションの頂点ドニー・イェン、そこにタイの闘神トニー・ジャーを筆頭に様々なアクション、スポーツのエキスパートやアクション映画ならではの魅力をこれでもかとばかり詰めこんだ本篇の、ド派手で破天荒な面白さに、素直に身を委ねるだけでいい。

 キャストを大切にしたアクションの構成に、プロデューサーとして指揮を執ったヴィン・ディーゼルの成長を滲ませつつも、第1作で観客を魅了した、正義と共にスリルをも求めるユニークなヒーロー像をきっちり踏襲し膨らませてみせた、理想的な続篇である――私を含め、第1作を愛する者にとっては不本意だった第2作についてもきちんと敬意を払っているあたりも、非常に好感が持てる。



関連作品:

トリプルX

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