『青鬼 THE ANIMATION』

初日舞台挨拶つき上映にて当選してしまった、登壇者サイン入りポスター。

原作:noprops / 監督:濱村敏郎 / 脚本:我孫子武丸 / キャラクター原案:坂井久太 / キャラクターデザイン:桜井正明 / 美術ボード:駄菓子 / 色彩設計中央東口 / 題字:雨宮慶太 / 音響制作:ダックスプロダクション / 音楽:柳田しゆ / 主題歌:志方あきこ『隠れ鬼』 / 声の出演:逢坂良太喜多村英梨水島大宙佐倉綾音森嶋秀太野島健児日笠陽子東地宏樹 / アニメーション制作:スタジオディーン / 配給:Asmik Ace

2017年日本作品 / 上映時間:1時間

2017年2月11日日本公開

公式サイト : http://aooni-anime.com/

TOHOシネマズ新宿にて初見(2017/2/11) ※初日舞台挨拶つき上映



[粗筋]

 文化祭を間近に控え、民俗学研究会の部長・高木淳子(喜多村英梨)は、校舎の裏に広がる山を舞台とした伝承を掘り下げることを提案した。

 部長が着目したのは、山中に“桔梗鬼”と呼ばれる青い鬼が出没し、人間を食らう、という趣旨だった。部長はそれが、ネットで無料ゲームとして公開し、のちにメディアミックスされるほどの人気を博した『青鬼』を彷彿とさせることに気づき、軽い気持ちで『青鬼』の作者にメールを出してみたという。結果、作者がこの高校のある界隈の出身であり、まさにその『青鬼』の伝承を下敷きにゲームを作った、と認めたというのだ。

 部員たちの提案していたテーマにも触れており、何より一般生徒の関心を惹くことも出来る。部長は部員の真鍋晃司(逢坂良太)に、作者の取材のために東京まで同行することを命じ、残る3人には地元のひとびとに“桔梗鬼”について聞き込みをしてくるように指示した。

 だが、それから間もなく、部長のもとを警察が訪ねてきた。『青鬼』の作者が自宅のマンションから転落死したのだという。警察は自殺か事故か調査しているようだが、取材の約束をしたあとで自殺することがあるとは考え難い。部員の皆月花梨(佐倉綾音)は事件の背景に“桔梗鬼”があるのでは、と推測し、村上章一郎(水島大宙)もそれに便乗する。部長は不幸を軽々しく扱うことに躊躇いを見せたが、その可否を判断するためにも取材は続けたほうがいい、と説得され、思案の末に提案を呑む。

 彼らは気づいていない。『青鬼』の恐怖は既に、他人事ではなくなっていたのだ――



[感想]

 劇中で触れられているゲーム『青鬼』は実在する。本篇はその世界観をベースに、原作とも、これまでに製作されたメディアミックス作品とも異なる設定、登場人物で構築された作品である。ゆえに、原作についてほとんど知識のないまま鑑賞しても問題はない。実際、かく言う私自身、原作の存在および本篇と相前後して製作されたコメディタッチのTVシリーズ『あおおに 〜じ・あにめぇしょん〜』を予習に鑑賞した程度で臨んだが、充分に楽しめた。

 原作はホラーゲームとして有名だが、本篇をホラー映画として鑑賞すると、率直に言ってそれほど怖さは感じない――こちらがすっかりホラー映画慣れしてしまっている、というのもあるだろうが、選んでホラー映画を観に行くような人種なら、恐らく同様の感想を抱くはずだ。調査や状況の積み重ねが続く序盤はもちろん、“そのもの”が登場するようになる中盤以降も、それほど慄然とする場面はない。もうちょっと演出上で恐怖を膨らませる工夫があれば、という印象だった。

 ただ、“怪奇”を軸に描くミステリとしての完成度は極めて高い。不完全な会報についての疑問、『青鬼』の原作者の死、といった謎を鏤め、随所で推理を展開していく。窮地に陥ったときにも、状況から推理を重ねて事態の打開を試みる。間近に命の危険が迫っているために、その過程は非常にスリリングでさえある。

 原作についてほとんど何も知らないまま私が本篇を鑑賞したのは、脚本を『かまいたちの夜』などを手懸けた小説家・我孫子武丸が担当していたからだが、本篇のこうした持ち味には、脚本担当のそうした経歴が培ったセンスが存分に活かされている。序盤からきっちりと伏線が張り巡らされ、段階的に昇華されていくあたりはさすがの手際だ。趣向としては基本的なものなので、ある程度すれっからしのミステリ愛好家なら、作り手が隠そうとしていることを見抜くことは難しくないが、それでもその向こう側にある真相は、伏線の巧みさとも相俟って強い衝撃をもたらすはずだ。

 惜しむらくは、3Dによるキャラクターの造形がいまひとつ洗練されていないことである。もちろんある程度は自然な動きを再現出来ていることも否定はしないのだが、如何せんハリウッドではもはや実写に迫るクオリティの作画を可能にしているし、日本でも『プリキュア』シリーズのように2Dの魅力を損なわないレベルに達しているところもあるなかでは、いささか見劣りするのも致し方のないところだろう。日本的な背景の美しさは表現出来ているし、実写や手描きのアニメならPG12くらいのレーティングは施されそうな描写も、いくぶん無機質に感じられる3Dでの描画であるがゆえに全年齢対象とすることを認められた、と思われることを考えれば、洗練が足りていないのも決して悪いことではなかったとも言えるが、出来ればもう少し表情の描き方に生身の手触りを再現して欲しかった。

 しかし、映画としては充分に面白い。短い尺に収めた分いささか駆け足になっている印象もあるのだが、翻って、尺に対して内容が詰まっている、とも言える。もともとがゲームというかたちで、様々な分岐や変化が起きる媒体で描かれる物語の感覚を、如何にして映画という手法で再現するか、という論点からすれば、優秀な出来映えだろう。



 なお、上でちらっと触れた『あおおに 〜じ・あにめぇしょん〜』であるが、こちらはキャラクターや舞台は原作を下敷きにしているが、しかし内容は完全なギャグだ。本篇とスタッフ、キャストは近いが、まるっきり別物なので、私のように本篇の予習のために観る、なんて真似をする必要はない。

 ただ、同じ3Dで作画された作品ではあるが、本篇のような固さ、ぎこちなさを感じるところは少ない。キャラクターがデフォルメされていることと、基本がギャグなので、多少のぎこちなさも作品のシュールな空気に貢献しているがゆえだろう。やたら流血する場面があったり、グロテスクなシチュエーションも多数盛り込まれているが、3Dであることが本篇以上に奏功して、薄気味悪さよりも滑稽さが際立っている。

 同じ原作をベースにしてもここまで違うものになる、という意味でも興味深いが、3D表現が与える印象の違い、表現に対する貢献の違いという面から、本篇と比較しつつ鑑賞してみるのも面白いかも知れない――本当に方向性はまるで違うので、そのことは念頭に置いたうえで。



関連作品:

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