『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』

シネマサンシャイン池袋、1階のゲームセンター柱にラッピングされたヴィジュアル。 LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門 通常版 [Blu-ray]

原作:モンキー・パンチ / 監督、演出、キャラクターデザイン、メカニックデザイン作画監督小池健 / 脚本:高橋悠也 / クリエイティヴ・アドヴァイザー:石井克人 / 企画:加藤州平、加藤良太 / プロデューサー:浄園祐 / 撮影監督:田沢二郎 / 美術監督:田村せいき、金森たみ子、村本奈津江 / ヴィジュアルコーディネーター:斎藤裕子 / 色彩設計:茂木孝浩 / タイトルデザイン:関口修男 / デザインワークス:山下敏幸 / 編集:笠原義宏 / 音響監督:清水洋史 / 音楽:ジェイムズ下地 / 声の出演:浪川大輔栗田貫一小林清志沢城みゆき山寺宏一土師孝也 / アニメーション制作 テレコム・アニメーションフィルム / 製作&著作:トムス・エンタテインメント / 配給:Showgate / 映像ソフト発売元:KADOKAWA

2017年日本作品 / 上映時間:50分

2017年2月3日日本公開

2017年5月26日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video通常版:amazon|DVD Video限定版:amazon|DVD Video amazon限定版:amazonBlu-ray Disc通常版:amazonBlu-ray Disc限定版:amazonBlu-ray Disc amazon限定版:amazon]

公式サイト : http://goemon-ishikawa.com/

シネマサンシャイン池袋にて初見(2017/2/8)



[粗筋]

 鉄をも切り裂く斬鉄剣を携えた用心棒、石川五ェ門(浪川大輔)。のちにルパン三世(栗田貫一)、次元大介(小林清志)の仲間となる彼も、当初は遺恨によりルパンを狙うひとりだった。

 その頃、五ェ門はヤクザの親分に目をかけられ、用心棒として雇い入れられていた。カジノが営まれる豪華客船での初仕事の最中、突如爆発が起こる。様子を確かめに機械室に向かった五ェ門は、手斧でボイラーを破壊する男と遭遇する。

 折しも客船に侵入し、大量の札束を奪い去るところだったルパンは、五ェ門と戦っている相手がホーク(土師孝也)であることに気づく。ひとりで一個師団を壊滅させるほどの戦闘能力の持ち主ながら、バミューダ空爆により死亡したはずが、のちに殺し屋として闇の世界に現れたことから、“バミューダの亡霊”と怖れられている男だった。このとき、ホークが狙っていたのは、船でひと仕事していたルパンだった。五ェ門との戦いを放棄し、ホークはルパンを追い始める。

 五ェ門がホークに手を焼いているあいだに、ヤクザの親分は船内で発生した火災に巻き込まれて命を落としていた。葬儀の席で一家の者により吊し上げにされた五ェ門は、3日以内に仇を取ることを約束する。

 当のホークは、巻き上げた大金を積み上げ、次元、峰不二子(沢城みゆき)と共に祝杯を上げていたルパンを襲撃した。大金を諦めて逃走するルパンたちの前に五ェ門が現れ、単身でホークと対峙する。

 このときも五ェ門の腕は確かだった。だが、ホークの反射神経はそれを凌駕していたのだ。五ェ門渾身のひと太刀を、ホークはあっさりといなしてしまった――



[感想]

 長年、漫画ファン、アニメファンに親しまれてきた『ルパン三世』を、TV媒体では難しいハードな表現でスタイリッシュに再構築した『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』に続くシリーズ第2作(テレビシリーズ『峰不二子という女』を含めれば3作)である。

 前作では、狙われた次元大介のためにルパンがその頭脳を発揮する場面が見られたが、本篇は前作の流れを引き継ぎつつも、どちらかと言えば脇役に引っ込んでいる印象だ。

 題名通り、このエピソードの主人公は、ルパン一味の最強の用心棒・石川五ェ門なのである。ルパンを標的として現れたホークとの戦いに気を取られ、雇い主を死に至らしめる、という失態を犯した五ェ門が、ホークと対峙し、敗北を喫する。そこからしばらく物語は、凡人には理解不能の行動で自らの未熟さと向き合う五ェ門の姿を中心に追うことになる。ルパンがその姿を見届け、他方でふたたびルパンたちを狙って行動を再開するホークや、更に彼らを追う銭形警部の動向も描写されるが、すべては五ェ門に集約されていく。

 それ故に本篇は単独で鑑賞すると、肝心なところがほとんど描写されていない、という不満を覚える。劇中、ホークがルパンを標的にしている背景は前作で仄めかされているし、本篇の出来事の幾つかは前作からの伏線を引き継いでいることが察せられる。それらはこの『峰不二子という女』『次元大介の墓標』そして本篇と続いてきた流れを引き続きシリーズとして膨らませていく狙いがあってのことだと察せられるが、本篇だけを取りだして鑑賞するとそこが伝わらず、ただ説明不足に陥ってしまっている。なまじ前作が、謎を先送りにしつつもシリーズ化の意向を明確に窺わせる作りだっただけに、その説明も投げ出してしまった感のある本篇が物足りなく、勿体なく思える。

 だが、シチュエーションや描写の格好良さ、という点では極上だ。賭場が開かれた和風の豪華客船を舞台に繰り広げられる戦い、五ェ門が敗北を喫するくだりのドライで重みのある描写。修行の場面では、様式美を誇張したシチュエーションを何度も繰り出してくるが、いっそ冗談としか思えないその手段が、しかし“石川五ェ門”というキャラクターにはハマっていて、やけに格好いい。そして、そうした過程を経て開眼するさまが実に爽快だ。

 これは『次元大介の墓標』もそうだったが、流血や殺人の描写が、テレビシリーズと比べて容赦がなく激しい。序盤ではホークが気を吐くのみだが、開眼した直後の五ェ門の荒ぶる様は息を呑むほどに強烈だ。アニメにおいて、ここまで生々しく重量感に富んだ立ち回りにはお目にかかった覚えがない。このくだりだけでも一見の価値がある、と言い切っても構わないくらいだ。

 シリーズものの1篇、という位置づけが明確すぎるがゆえに、単品での完成度を問われると控えめの評価をせざるを得なくなるが、より歌劇で大胆な大人向けの『ルパン三世』というスタンスを選択したシリーズの中で、石川五ェ門というキャラクターの魅力を引き出す、という意味では完璧な出来映えである。



関連作品:

LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』/『ルパン三世 カリオストロの城(MX4D)

魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!