『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(字幕・2D・TCX)』

TOHOシネマズ日本橋が入っているコレド室町2入口に掲示されたポスター。

原題:“Miss Peregrine's Home for Peculiar Children” / 原作:ランサム・リグズ(東京創元社潮出版社・刊) / 監督:ティム・バートン / 脚本:ジェーン・ゴールドマン / 製作:ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング / 製作総指揮:デレク・フライ、カッテルリ・フラウエンフェルダー、ナイジェル・ゴストゥロウ、イヴァナ・ロンバルディ / 撮影監督:ブリュノ・デルボネル / プロダクション・デザイナー:ギャヴィン・ボケット / 編集:クリス・レベンソン / 衣装:コリーン・アトウッド / 音楽:マイク・ハイアム、マシュー・マージェソン / 出演:エヴァ・グリーンエイサ・バターフィールド、クリス・オダウド、アリソン・ジャニールパート・エヴェレットテレンス・スタンプ、エラ・パーネル、フィンレー・マクミラン、ローレン・マクロスティ、ラフィエラ・チャップマン、ヘイデン・キーラー=ストーン、ジョージア・ペンバートン、マイロ・パーカー、ピクシー・デイヴィース、キャメロン・キング、ジョセフ・オドウェル、トーマス・オドウェル、ルイス・デイヴィソン、キム・ディケンズジュディ・デンチサミュエル・L・ジャクソン / 配給:20世紀フォックス

2016年イギリス、ベルギー、アメリカ合作 / 上映時間:2時間7分 / 日本語字幕:稲田嵯裕里

2017年2月3日日本公開

公式サイト : http://www.foxmovies-jp.com/staypeculiar/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2017/2/6)



[粗筋]

 ジェイク(エイサ・バターフィールド)の祖父エイブ(テレンス・スタンプ)が亡くなった。何かに襲われている、と電話でジェイクに訴えたあと、荒らされた自宅のそばにある森の中で、両目を刳り抜かれた姿で倒れていた。

 今際の際、祖父はジェイクに「あの島に行け」と言い残した。理解できずに困惑するジェイクは、そこに奇妙な化物が出没するのを目の当たりにする。

 エイブの死は野犬の仕業、と警察に結論づけられ、ジェイクの目撃はショックの影響と判断された。しかしジェイクを担当したセラピストのゴラン医師(アリソン・ジャニー)は、トラウマから脱却するためにも、祖父が言い残した“あの島”を訪れるよう提案する。

 かつて祖父は、ポーランドでのユダヤ人迫害から逃れるため、イギリスはウェールズのとある島にある児童保護施設に預けられていたという。その保護施設には、一般社会では受け入れられない特殊な能力を持った子供たちが集められていた、という話を、祖父はジェイクに繰り返し物語っていた。複数の奇妙な写真と共に語られる出来事を、幼いジェイクは信じ切っていたが、学校で語って変人扱いされ、更には父・フランク(クリス・オダウド)から写真もニセモノと断言されたことで、祖父と距離を取るようになっていた。

 ジェイクは父の付き添いで、かつて祖父が預けられていた保護施設のあるケルン島を訪ねる。だが、その保護施設はとうの昔に廃墟となっていた。地元のひとびとの話によれば、保護施設は1943年9月3日、ドイツ軍の空襲を受け、そのときに住人はすべて亡くなった、というのだ。

 しかし奇妙なことに、ジェイクがこの島を特定するきっかけとなった、保護施設の責任者ミス・ペレグリンからの手紙には、2年前の日付が記されている。訝るジェイクの前に、突如として彼らは現れた――



[感想]

 原作付きであり、それどころか脚本完成後に参加が決定した、という話が冗談にしか思えないほど見事な“ティム・バートンの映画”である。

 情報量が多いので粗筋ではそこまで辿り着いていないが、やがて登場する“奇妙なこどもたち”の生態、描写はまるで『シザーハンズ』の拡張版だ。胴の靴を履いていないと浮いてしまう少女、身体の中に蜂を飼う少年、何故か頭巾をかぶって暮らしている双子、等々。いずれも確かに、一般社会では暮らしにくく、迫害されかねない特徴の者ばかりだ。

 いちおうは一般社会で育ってきたジェイクも、しかし祖父が語った“奇妙なこどもたち”の姿を鵜呑みにしていたがゆえに、学校では疎外されていることが窺える。他方、祖父の異様な訴えに、疑念と鬱陶しさを滲ませつつも駆けつける様子から、祖父への親愛の情がいまも残っているのが察せられる。祖父の昔話を表面的には拒絶したいまでも、ジェイクはある意味で“奇妙なこどもたち”の一員だった。

 だからこそ、どこかひねくれているが、自分の本質を剥き出しにして暮らしていける世界に接したとき、ジェイクは自然に馴染んでしまうのだ。この、一般社会の枠からはみ出した者も受け入れてくれる世界、という発想は、手法や着地点は異なれど、ティム・バートン作品に一貫して見られるものだ。本篇の場合、それが“閉じた世界の中で確立している”がゆえに、他の作品以上に監督の持つ率直な感情、慈しみの眼差しが反映されているようであり、格別に監督らしさが際立って感じられるのだろう。

 しかも、ただ“奇妙なこどもたち”にとって快いばかりではなく、この特殊な世界観ならではの波乱、冒険もしっかりと凝縮されている。こどもたちが異能者であるからこそ襲いかかる危険、彼らが暮らす空間の特殊性がもたらす制約と、奇想天外な冒険。こどもたちの特異さと、幾分ワガママにも思える振る舞いにもうひとつ共感が持てないひとでも、この不可思議な展開と冒険には自然と惹きこまれてしまうはずだ。

 世界観と物語の構造に大きく貢献したイマジネーションはそのまま、興奮に満ちたクライマックスにも寄与している。極めて厄介な敵と、シンプルだがこの世界観ならではの手法で対峙し、そこではそれぞれが自らの力を活かし、立ち向かおうとする。決して全員が戦略的に役だっている訳ではないけれど、それぞれに意志を持って決戦に臨み、皆に見せ場があるのがまた快い。

 エピローグもまた秀逸だ。敢えて過程を端折っているが、そこに登場する人物の佇まいが、経験してきた冒険を如実に物語り、端折っているからこそ感動を膨らませる。ここに至るまでに突き固めてきた世界観とエピソードとが、ダイジェストで語られた、描かれざる冒険に説得力を持たせると共に、ロマン溢れる結末を演出する。

 あのラストシーンは、異端であること、特異な世界に生きていることへの祝福に他ならない。登場人物たちに安住の地を与えるとともに、彼らの姿に共感し、冒険を共にしてきた観客をも物語の中に受け入れる。幾分、現実を逃避しているかのようにも思える終幕は、ひとによっては腑に落ちない可能性もあるが、本篇の世界観、キャラクターの描き方、その悩みに親近感を覚えるようなひとにとってはとても心地好い。

 撮る作品それぞれに相通ずる世界観を織り込みながらも、時代に添って変化し発展してきたティム・バートン監督だが、本篇はそんな監督自身のキャリア全体をも包括してしまうくらいに、彼らしい傑作であると思う。『アリス・イン・ワンダーランド』の妙にお行儀のいい作りに納得のいかなかったひとも、本作には満足できるのではなかろうか。



関連作品:

シザーハンズ』/『PLANET OF THE APES/猿の惑星』/『ビッグ・フィッシュ』/『チャーリーとチョコレート工場』/『ティム・バートンのコープスブライド』/『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』/『アリス・イン・ワンダーランド』/『ダーク・シャドウ』/『フランケンウィニー

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