『ずっと前から好きでした。 〜告白実行委員会〜』

ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~(イベントチケット優先販売申込券付)(完全生産限定版) [DVD]

原作&音楽:HoneyWorks / 監督:柳沢テツヤ / 脚本:成田良美 / アニメーションプロデューサー:河井敬介 / プロデューサー:斎藤俊輔 / キャラクターデザイン&総作画監督藤井まき / 美術設定:綱頭瑛子(KUSANAGI) / 美術監督:海野有希(KUSANAGI) / プロップデザイン:宮豊 / 色彩設計:小島真喜子(Studio.Road) / CG:伴善徳 / 撮影監督:関谷能弘(グラフィニカ) / 編集:肥田文 / 音響監督:長崎行男 / 音響効果:今野康之(スワラ・プロ) / 音響制作:マイルストーン音楽出版 / 声の出演:戸松遥神谷浩史梶裕貴阿澄佳奈鈴村健一豊崎愛生代永翼麻倉もも緑川光雨宮天 / アニメーション制作:Qualia Animation / 配給&映像ソフト発売元:Aniplex

2016年日本作品 / 上映時間:1時間3分

2016年4月23日日本公開

2016年10月26日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://www.honeyworks-movie.jp/1st/

DVD Videoにて初見(2017/1/4)



[粗筋]

 榎本夏樹(戸松遥)一世一代の告白は、撤退に終わってしまった。

 彼女が片想いしている相手は、隣の家に暮らす幼馴染みの瀬戸口優(神谷浩史)だ。優の妹・雛(麻倉もも)とも仲がいいため、夏樹は日頃から優の家に出入りするくらいで、気の置けない間柄なのだけど、それが災いしてしまった。いざ告白したはいいが、「練習だから」とごまかしてしまい、以後も“本番”まで練習に付き合って欲しい、と言ってしまう。

 しかし、夏樹のこの告白に、優も内心では動揺していた。練習ということは、他に本命がいる、という意味でもある。夏樹の恋が成就するなら、手伝ってやりたい。けれど、夏樹が“本番”に臨む瞬間を想像すると、胸がざわつくのだった。

 そんなある日、ふたりの同級生である綾瀬恋雪(代永翼)が突如、大幅なイメージチェンジをしてきた。セミロングの髪に眼鏡、という女の子のような雰囲気だった恋雪が髪をばっさり切り、眼鏡も外したのである。女子のあいだでにわかにちやほやされるようになった恋雪だったが、彼が見ているのは夏樹だけだった。

 夏樹とは同じバンドのファンだった恋雪は、ライブチケットを入手して夏樹を誘う。憧れのバンドのライブにはしゃいで、おめかしして出かけようとした夏樹だったが、出がけにゲームソフトを返しに来た優に見られてしまい、妙に険悪な雰囲気になってしまう。気晴らしにライブを心から楽しもうとした夏樹だったが、歌詞のフレーズに、と胸を衝かれるのだった――



[感想]

 ほぼ全篇、告白のトキメキだけで出来ている作品、である。

 もともと、ミュージシャンやイラストレーターのユニットであるHoneyWorksが配信していた、青春のワンシーンや恋のときめきを描いた動画をベースにした作品らしい。私はそちらについては、本篇が劇場公開されるまでまったく知らないし、未だに観ていないので、どの程度原作を踏襲しているのかは解らないのだが、そういう経緯を知ったうえで鑑賞すると、このひたすらにトキメキだけで組み立てたような作りにも納得がいく。

 そう考えないと、1時間のわりに話を盛りすぎ、そのくせ間延びしている、という妙な印象を与える作品、と言わざるを得ない。何せ、中心となる榎本夏樹を巡る出来事は、縮めればせいぜい20分程度で語れそうなものだし、そのあいまに夏樹のエピソードとは直接繋がらない格好で、彼女の友人や周辺の人物のロマンスもこまめに鏤められているのだ。盛り沢山、という雰囲気はあるのだが、個々のエピソードが積極的に結びつかないために散漫な印象になるのも当然だろう。要は、それぞれのエピソードがバックで流れる歌をベースにしているため、それらを盛り込もうとした結果なのだが、1篇の物語として眺めた場合、こうした歌の要素を思い切って刈り詰めることが出来なかったために、1時間の尺に似つかわしくない間延び感を生んでしまっている。

 また、恐らくは歌の内容が先にあったせいだろう、ところどころ登場人物の言動に不自然さが出てしまっているのも気になる。いちばん顕著なのは夏樹の行動だ。“告白の練習”とごまかしてしまっている現状、迂闊に男子と親しくしているところを優に見られれば、誤解されることは気づきそうなものだ。そのことを自覚していれば、恋雪の誘いにああも簡単に頷くことはたぶんあり得ない。警戒心が乏しい、恋雪をまったく恋愛対象として意識していない、と捉えれば辛うじてなくもないが、それを悟ったあとの恋雪との接し方も、いささか無神経すぎる。照れ隠しでうっかり撤退してしまった彼女を応援してあげたいところなのだけど、想いを寄せてくれた相手へのこの無神経な振る舞いは、多少なりとも気遣いながら物語を鑑賞する者の反感を買って、感情移入を妨げてしまう。詰まるところ、物語の作り手に、配慮が足りていないのだ。

 と、ストーリーの練り込みでいまいち評価出来ないのだが、しかし最初に断言したように、告白のトキメキだけをひたすら表現する、という意味においてはかなり理想的な作りと言っていい。個々のエピソードの結びつきこそ弱いが、ほとんどの出来事は、切ない思慕と、それをどうやって伝えるか、という煩悶に集約されている。夏樹の友人・あかり(阿澄佳奈)に崇拝的な恋心を抱き、その振る舞いにいちいちトキメキながらも、どうやって近づくか模索している蒼太(梶裕貴)、気心が知れているのであまり自分を意識していない美桜(豊崎愛生)との距離感に悩んでいる春輝(鈴村健一)、それぞれのエピソードは夏樹と優の物語にこそ絡んでこないが、作品全体のドキドキ感を繋ぐ役割は果たしている。本篇の中におけるそれぞれの恋の顛末も、夏樹と優との展開にはない余韻を演出していて、作品の印象を膨らませている。

 もとが音楽なので、作中で終始、それぞれのエピソードや登場人物の心情を反映した楽曲が織り込まれているのも、作品を見事に彩っている。物語のほうを先行して作ると、ここまで多彩な楽曲を盛り込むのは難しいはずで、そこは間違いなく本篇ならではの魅力となっている、と言えよう。

 純粋なお話として、1篇の映画としては及第点をつけられないが、告白のトキメキを体感する、という観点においては極めていい仕事をしている作品である。間延びした印象はあれど、尺自体も1時間程度と非常に手頃なので、まさにデート・ムービーにうってつけかも知れない。



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