『ポッピンQ』

ユナイテッド・シネマ豊洲、売店端に展示されたポップとキーヴィジュアル。

原作:東堂いづみ / 監督、絵コンテ&音響監督:宮原直樹 / 脚本:荒井修子 / 企画&プロデュース:松井俊之 / プロデューサー:金丸裕 / キャラクター原案:黒星紅白 / キャラクターデザイン&総作画監督:浦上貴之 / 絵コンテ:平山美穂、高橋祐哉 / 色彩設計:永井留美子 / 美術監督:大西穣 / 美術設定:坂本信人 / 撮影監督:中村俊介 / CGプロデューサー:横尾裕次 / CGディレクター:中沢大樹 / 編集:瀧田隆一 / 音楽:水谷広実&片山修志(Team-MAX) / 声の出演:瀬戸麻沙美井澤詩織種崎敦美小澤亜李黒沢ともよ田上真里奈石原夏織本渡楓M・A・O新井里美石塚運昇山崎エリイ田所あずさ、戸田めぐみ、内山昂輝羽佐間道夫小野大輔島崎和歌子 / アニメーション制作:東映アニメーション / 配給:東映

2016年日本作品 / 上映時間:1時間45分

2016年12月23日日本公開

公式サイト : http://www.popin-q.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2016/12/29) ※“スーパー・プレミア・ミーティング”ダイジェスト上映付き



[粗筋]

 春。間もなく中学卒業を控えた小湊伊純(瀬戸麻沙美)だが、彼女はまだいまの生活に未練があった。

 最後となる陸上の県大会で満足のいく走りが出来ないまま、同級生の三橋ナナ(戸田めぐみ)の後塵を拝した伊純は、その後も後輩の深町美晴(田所あずさ)を付き合わせて、延々練習を続けている。だが、未だに自己ベストを更新出来ずにいるところへ、両親が突如として高知から東京への転居を決めてしまった。

 卒業と共に、伊純は多くの心残りを抱えたまま、東京に越さなければいけない。納得がいかなかった。卒業も引っ越しも拒絶したいあまり、伊純は卒業式の日、逆方向に向かう電車に乗ってしまう。

 気づいたとき、伊純は見知らぬ海に着いていた。その浜辺で伊純は、奇妙に輝く破片を拾う。駅から改めて戻ろうとして、改札に触れたとき、閃光が迸り――気づくと伊純は、見知らぬ空間にいた。

 戸惑う伊純の前に現れたのは、“ポコン”(田上真里奈)と名乗る不思議な生き物だった。ポコン曰く、ここは“時の谷”と呼ばれる世界で、並行する世界の時間を司るところなのだという。それがいま、ある理由から危機に陥っており、“時のカケラ”を持つ5人が力を合わせることで、危機を脱することが出来るのだという。

 そうして伊純は、他のところで“時のカケラ”を拾った4人の少女たちと引き合わされるのだが、世界を救う手段とは、その4人と息を合わせて踊ることなのだという。卒業式まで約1時間、時の流れの異なる“時の谷”ではだいたい10日間のあいだに使命を果たさなければ、帰れなくなってしまう。

 大変……なのだけど、伊純も他の少女たちも、困惑を禁じ得なかった。みな、自分たちの“場所”に帰りたくない、何らかの理由を持っていたのである――



[感想]

 東映アニメーションが『プリキュア』シリーズを通して研鑽を重ねてきた3Dアニメの技術は、世界的に見ても特異なレベルに達しているのではなかろうか。

 単純に質感の再現や滑らかな動き、という点に着目すれば『ベイマックス』や『ファインディング・ドリー』といったディズニー&ピクサーのライン、『ミニオンズ』シリーズのイルミネーションなどといったハリウッドの最先端を担うスタジオのクオリティには及ばないのだが、こと“3Dで2Dに近い魅力を作り出す”という技術にかけて、いまの東映アニメーション、とりわけ『プリキュア』シリーズに携わるスタッフ以上の技術を持つところはたぶん稀だろう。

 本篇はそういう意味ではまさに最先端のスタッフがその技術を活かせるオリジナル作品として構想したと推測される。予告篇で垣間見える設定や世界観からもそれが窺えたので、『プリキュア』シリーズを高く評価している私としてはチェックせざるを得まい、と思い、公開間もなく劇場に駆けつけた。

 それ故に、ある程度は期待通りであった、とは言えるのだが――率直に言って、単品の映画として鑑賞すると、何とも物足りない出来になってしまったのも否めない。

 異世界に導かれ、世界を救う使命を帯びた女の子たちが、変身の力を身につけて危機に臨む――というアウトラインはほぼプリキュアのまま、と言っていい。だが本篇は、『プリキュア』シリーズが対象にしていたよりも上の年齢層を狙ったことがプロローグからも察せられる。卒業を間近に控え、成績が伸び悩む部活や勉強、そして進路に悩むヒロインたちの姿が描かれるが、ナレーションで補うこともなく、説明的な会話も最小限の本篇はそのあたり、小さな客層が多少理解しづらくても仕方ない、と割り切っているようだ。

 だが、そうして少し上の層を狙った話運びにしては、肝心の冒険のくだりに入るあたりで、少女たちの心情をかなり軽んじて描いているように思える。いくら順応性の高い者でも、いきなり異世界に連れこまれ、“世界を救って欲しい”と言われたら戸惑うだろうし、その方法がダンスだと聞けば、もうちょっと色々な反応があるはずだ。しかも、見ず知らずの4人の少女と力を合わせる、ということに対する抵抗もあまり感じられないのは不自然に映る。

 これに限らず、本篇はイベントれぞれのきっかけが全般に唐突で、説得力に欠いている。子供向けという大前提があればまだしも、『プリキュア』よりも上の年齢層を志向した作りにしては、作りの幼稚さが目立ってしまっているのだ。特に、クライマックスの出来事に結びつく要素の伏線が不充分なのはいただけない。提示された要素から推測するのは可能だが、ああいう状況が生じるには序盤から意識的な伏線を用意しておかないと、取って付けたようにしか見えなくなる。この部分についてはたとえ子供向けとして製作した、と捉えても高く評価は出来ない。あのくだりが不自然であるために、本来カタルシスを与えられるのは最後のダンス・シーンのはずなのに、インパクトはその手前の出来事が上回ってしまっている。

 映像のクオリティについてはほぼ期待通りと言っていい。初期の『プリキュア』における3DCGは、多少目聡い人ならすぐに気づくくらい2Dとの違和感が強かったのだが、本篇はうっかりすると気づかない間に3Dに入ってしまっているくらい自然な出来映えだ。手書きでは厄介すぎるカメラワークが増えることでそうと気づけるが、2Dの描線や暖かみを見事に再現した3DCGは、「もうこれで全篇作ってもいいんじゃ……?」という気分にさせるほどだ。一方で、だからこそ2Dの場面では手書きならではの変化も加えていて、映像的な見所には事欠かない。

 趣向だってそれぞれは悪いものではないし、キャラクターも魅力的なのだが、如何せん趣向をうまく盛り上げることが出来ていないので、キャラクターの魅力も活かし切れていない。せっかく絵は可愛いし、ダンス・シーンのクオリティも極めて高いというのに、非常にもったいない、と言わざるを得ないのだ。

 恐らくこうなってしまった一因は、製作者側がはじめからシリーズ化を狙っていたせいもあるのではなかろうか。何故こう断言できるか、は観ていただければ解るはずだ。シリーズ化を目論むこと自体は悪いことではないが、すべての観客がそれを知っているわけではなく、エンタテインメントとして提供している以上、出来る限り本篇ひとつのなかでひととおりの決着、カタルシスを演出しなければいけないのに、そこを怠ってしまったことが、テレビシリーズを踏まえつつも映画の中で話を決着させる劇場版の『プリキュア』よりも劣った印象を与えてしまっているのだろう。

 繰り返すが、狙いは悪くない。キャラクターにも魅力があるし、それを絵として動かす技術も優れている。ただ、1篇の映画として観たときに、それらを有効に使えていないのが本篇の弱みなのだ。

 もし無事に続篇が公開されることがあれば、私は劇場まで足を運ぶつもりだが――実現を危ぶむような出来映えなのが本当に残念でならない。



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