『きんいろモザイク Pretty Days』

新宿バルト9、11階ロビーにまとめて展示されたキャラクター別スタンド5種。

原作:原悠衣(芳文社・刊) / 監督、構成&絵コンテ:天衝 / 副監督&演出:名和宗則 / 脚本:高橋龍也 / 絵コンテ&演出:山本天志 / 絵コンテ:清水聡 / キーアニメーター、プロップデザイン&作画監督:谷拓也 / 総作画監督植田和幸 / 美術設定&美術監督:柴田千佳子 / 作画監督:小関雅、片岡英之 / 撮影監督:熊澤裕哉 / 編集:武宮むつみ / 音響監督:明田川仁 / 音楽:川田琉夏 / 歌:Rhodanthe* / 声の出演:西明日香田中真奈美種田梨沙内山夕実東山奈央佐藤聡美大西沙織田村ゆかり諏訪彩花中津真莉潘めぐみ村川梨衣 / プロデュース:GENCO / 配給:Showgate

2016年日本作品 / 上映時間:約1時間

2016年12月3日日本公開

公式サイト : http://www.kinmosa.com/

新宿バルト9にて初見(2016/12/10)



[粗筋]

 アリス・カータレット(田中真奈美)と九条カレン(東山奈央)が日本にやって来てから、2度目になる学校祭の準備が始まった。

 カレンは去年に続いて、クラスの演劇で主役を張ることになった。その衣裳と脚本を手懸けることになったのは大宮忍(西明日香)である。普段はすっとぼけたところのある忍も、この大役には奮起したようで、連日唸っている。

 カレン、忍と同じクラスの小路綾(種田梨沙)は裏方としてふたりを支える立場だが、最近いつにも増して悩んでいる。猪熊陽子(内山夕実)と忍とは中学で一緒になって以来の付き合いだが、アリスやカレンが引っ越してきて以来金髪への執着を募らせている忍にとって、自分はどういう存在なのか、不安を覚えているのだ。

 劇の準備を手伝っているとき、アリスとカレンが疑問を口にする。勉強の面では心許ない忍は、どうやってこの高校に合格したのか? 忍が席を外している隙に、陽子は3人が中学の頃に経験した、高校受験の日々を語りはじめるのだった……。



[感想]

 テレビで2期にわたって放送され好評を博したアニメシリーズの劇場版である。

 最近は、劇場版単品でも成立する内容に仕立てる場合もままあるが、本篇の場合はテレビシリーズの知識は必須と言っていい。何の予備知識もなしに鑑賞した場合、たぶんどこを楽しめばいいのか解りにくいはずだ。

 シリーズの主人公、というか、要となるキャラクターは、大宮忍である。見た目も振る舞いも大和撫子風だが、外国と金髪に異様な憧れを抱いていて、将来は翻訳家になることを夢みている。そのくせ英語はからっきしで、本気を出さないと他の学課の成績も思わしくない――という、だいぶ個性が強いキャラクターだ。以前にイギリスに留学した経験があり、そのときに親しくなったことがきっかけでアリスが来日、それを追ってカレンもやって来た、という経緯がある。一方で、猪熊陽子は忍といちばん付き合いの古い幼馴染みで、本篇の視点人物となる小路綾は中学校でふたりと知り合い、親しくなった。

 つまりこのメインキャラクター5人は、大宮忍を中心にして結びついている。彼女がいることで初めて綾にアリスとカレンとの縁が生じるわけだ。これはシリーズを通しての大前提なのだが、この点を把握していないと、彼女が味わう疎外感、忍との友情についての不安、といった感情の出所が理解しづらい可能性がある。本篇はそれが発端となっているだけに、ここを掴み損ねると乗りづらいのは確かだ。

 他方で本篇は、全体のトーンがシリーズ本篇とちょっとずれている、という点もポイントなのである。いささかピントのずれた言動が目立つ忍と、彼女と一風変わった絆を築いているアリスを軸とする本篇のノリは、いわゆる日常をテーマにした漫画の流れを汲みつつもしばしばシュールでブッ飛んだものなのだが、視点を綾に据えたうえ、半分以上をアリスとカレンが加わる前、中学校時代に絞っているため、通常よりも描写がシリアスだ――まったく真面目というのではなく、随所にコミカルなやり取りはあるし、基本的なキャラクター性は不動、とりわけ忍の言動のユニークさは中学時代も健在なので、シリーズに親しんでいればいちおう馴染めるが、そこにはシリーズと違う雰囲気を味わわせる面白さを優先した印象が強い。

 初見のときにいちばん問題となるのは、そういう表現を選択したために、高校受験のくだりを語り終えて、高校での学校祭の場面に入ってからの描写とのバランスが崩れてしまっている点だ。演劇を軸とした一連の描写は『きんいろモザイク』という作品の個性、面白さの基本に舞い戻りつつ、ほとんどのサブキャラも網羅した豪華な仕上がりとなっているが、如何せん、高校受験のパートとあまりに不釣り合いなのだ。

 受験期の辛抱に辛抱を重ねたような描写を経てきた、従来のシリーズからのファンにとっては、解き放たれるような爽快感のあるくだりであろうが、予備知識がなく、特徴的なノリに馴染めなかった人は、よけいに違和感を募らせるはずだ。絶対にそうだ、とは断言しないが、一見さんにとっては敷居が高い作品であるように思う。

 しかし、繰り返しになるが、シリーズをある程度知っている人にとっては充分に楽しい仕上がりとなっていることは断言していい。綾を視点人物にしたがゆえのムードの違いも、“アリスとカレンがいなかった頃の3人”という、原作ではあまり多く描かれていない部分を覗かせるという意味で興味深いし、その回想を経ることで、現在の賑やかさ、愉しさにも違った味わいが出てきている。劇場版ならではの一風変わった試みとしても、シリーズの魅力を再認識させるうえでも効果的な趣向だ。

 大スクリーンで鑑賞するには少々描線がよれているような印象を個人的には受けたが、そこは好みの問題でもある。少なくとも、キャラクターの可愛さを損なうような描き方はしていない。

 いまのところTVシリーズは第2期で止まっており、原作の進行具合から推測しても、第3期までは間が空きそうな気配がある。ヤキモキしているファンにとって、本篇は嬉しいプレゼントになるはずだ。TVシリーズ未体験のひとが、あえて最初にアプローチするのに適した内容とは言い難い――が、試してみるのは止めない。ただ、これでハマった場合、アリス&カレン不在の中学時代に惹かれたのだとしたら、本篇に戻るのは少し考えたほうがいいだろう。学校祭のくだりが楽しかった、というなら、是非とも本篇も鑑賞することをお薦めする。きっと、本篇がもっと楽しめるはずだ。



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