『fuji_jukai.mov』

TOHOシネマズ新宿、スクリーン1入口に掲示されたチラシ。

監督&脚本:坂下勝己 / 製作:藤原寛 / エグゼクティヴプロデューサー:片岡秀介 / スーパーヴァイザー:黒井和男 / プロデューサー:安永洋平、鈴木久留美、木谷真規、柴田浩行 / 出演:大熊杏実、大隣望鈴、小日向雪、山里亮太椿鬼奴家田荘子、佐藤仁美 / 制作プロダクション:エクセリング / 吉本興業製作 / 配給:KATSU-do

2016年日本作品 / 上映時間:1時間24分

2016年9月30日日本公開

公式サイト : http://fuji-jukai.com/

TOHOシネマズ新宿にて初見(2016/10/06)



[粗筋]

 心霊スポットのレポートのために青木ヶ原樹海を訪れた撮影隊は、遊歩道の道端に落ちたスマートフォンを発見する。そこには、衝撃的な映像が記録されていた……。

 スマホの所有者と見られる女子高生の名はアミ(大熊杏実)。ネットで彼女と知り合い、自殺したがっている、と知ってついてきたみーたん(大隣望鈴)とヒナタ(小日向雪)と共に、樹海の奥深くへと踏み込んでいく様子が記録されていた。

 何故死に赴くのか、理由を明言しないアミと、そこには深くこだわらず、人の死を面白がっているかのようなみーたんとヒナタ。だが、そんな3人の背後に、迫り来る気配があった……。



[感想]

 もはや手垢がつきすぎた感のある主観視点スタイルのホラーだが、しかし一方で、それだけ撮りやすく、未だ工夫の余地がある手法である、というのも事実だろう。

 本篇は、撮影機材として登場するのがスマホであることを除けば、セオリー通りと言っていい。ただそれだけに、行間を埋められないぎこちなさが目立ってしまっている。特に気になるのは終盤も近づいたあたり、アミとヒナタが諍いを起こすくだりである。このシチュエーション、表現はいかにも現代的で面白いのだが、直後、まるでそのくだりがなかったかのような会話が続いていることにどうしても拭えぬ違和感がある。

 主観視点撮影の手法を取っていると、こういう省略もしばしば行われるし、リアリティを生み出す効果も認められるが、あくまでフィクションである以上は配慮が求められるはずだ。省略するにしても、省略したやり取りを観客に想像させる工夫は必要だろう。本篇は全般に、こうした配慮が不充分であるため、想像でおぎなう面白さよりも、何かが足りない不満に繋がってしまっているのは否めない。

 細かいことだが、スマホで撮っているわりには異様に手ブレがないのも気になるところである。メインとなるアミスマホは常に自撮り棒に固定されていることが視点の位置から窺えるのだが、それにしてはブレがなさ過ぎる。観客への配慮、という意味では、主観視点スタイル特有の激しく揺れる映像は、こと大スクリーンで鑑賞すると悪寒を催すことがあるので、敢えて姿勢制御の装置が組み込まれたカメラを採用しているのだろう。個人的には許容したい部分でもあるのだが、ここにももうひとつ工夫が欲しかった。

 思慮の乏しさが散見される本篇だが、しかし、この手法“ならでは”の物語を組み立てた意欲は高く評価できる。詳しくは触れないが、終盤の出来事と巧みに共鳴する描写の数々に、観終わってから唸らされるはずだ。

 発見された映像に、それとは別のくくりで撮影された、という体裁のインタビューを挿入しているのも奏功している。それぞれは俳優が演じているのだろうが、組み込まれた情報は恐らく虚実が入り混じっており、発見された映像をうまく補強している。

 やや中弛みの印象があることや、終盤の展開に驚きよりも“期待外れ”を感じてしまう恐れもあるだけに、安易にはお薦めしづらいのだが、作り手の意欲や姿勢に好感の持てる仕上がりであることは間違いない。



関連作品:

邪願霊』/『放送禁止』/『ノロイ』/『POV 〜呪われたフィルム〜』/『ある優しき殺人者の記録

幼獣マメシバ