『呪怨 −ザ・ファイナル−』

新宿バルト9、ホールに掲示された大型テナントと、モニターで上映中の予告篇映像。 呪怨 ザ・ファイナル [Blu-ray]

監督:落合正幸 / 脚本:一瀬隆重落合正幸 / エグゼクティヴ・プロデューサー:高木ジム、今山武成、村田嘉邦、久保忠佳、江守徹 / プロデューサー:山口敏巧、平田樹彦 / クリエイティヴ・スーパーヴァイザー:一瀬隆重 / 撮影:岡田博文 / 照明:舘野秀樹 / 美術:尾関龍生 / 録音:松本昇和(J.S.A.) / 編集:深沢佳文 / 視覚効果:松本肇 / 特殊造形松井祐一 / 音響効果:柴崎憲治(J.S.A.) / キャスティング:北田由利子 / 音楽:硨島邦明 / 主題歌:Double『Circle of Life』 / 出演:平愛梨桐山漣、おのののか、柳ゆり菜、松浦雅、RIMI、中原果南、二田萌、黒島結菜袴田吉彦、小林颯、緋田康人、最所美咲、佐々木希 / 制作プロダクション:ダブル・フィールド / 配給:Showgate / 映像ソフト発売元:NBC Universal Entertainment Japan

2015年日本作品 / 上映時間:1時間31分

2015年6月20日日本公開

2015年11月6日映像ソフト発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon呪怨BOX(Blu-ray Disc):amazon]

公式サイト : http://www.juon-movie.jp/

新宿バルト9にて初見(2015/06/20)



[粗筋]

 ――妹の結衣(佐々木希)からの連絡が途絶えたことに、麻衣(平愛梨)は気を揉んでいた。憧れだった小学校教員の職について張り切っていたはずの彼女に、何が起きたのだろうか?

 やがて小学校から麻衣のもとへ、結衣の私物が送られてきた。その中には、結衣の受け持ちの生徒についての調査票や学級日誌も含まれていた。そこには随所に、異様な書き込みが残されていたのだった……

 ――女子高生の玲央(おのののか)には最近、新しい家族が出来た。不幸があって身寄りをなくした男の子を、母が引き取ったのだ。やって来た男の子は無口で、一切心を開く様子がなかったが、母親の帰りが遅い夜、招いた友達のまどか(松浦雅)には何故か突然口を開く。だが、そんな男の子――俊雄(小林颯)に、碧(柳ゆり菜)は戦慄するのだった……



[感想]

呪怨 −終わりの始まり−』で新たにリブートされたシリーズの、完結篇となる作品である。

 せっかくのリブートなのに、完成度の面でオリジナルより大幅に見劣りがしてしまった前作を受けての続篇であるから、はなからいささか条件は悪いのだが、それにしても更に見劣りがする出来映えとなってしまっているのが残念だ。

 このシリーズは、佐伯伽椰子という女性が抱いた恨みが1軒の住宅に凝り固まり、最初は住宅に関わった人々が、やがては僅かでも縁の生じた人々に次々と呪いが感染していく、という、無秩序に蔓延していく恐怖を、時系列をずらす、因果関係を相前後させる、という手法で描いて、脅威が観客の間近に迫ってくるかのような感覚をもたらすのが大きな魅力だった。傍流作品では必ずしもその縛りにこだわっていなかったものの、リブート作である前作と本篇は、その様式には則っている。

 だが、この“蔓延する感覚”の演出が、このリブート版はお世辞にも巧いとは言えない。リンクが妙に解りづらく、呪いの広がりも恣意的に過ぎて、感染力を実感しづらいのだ。

 もうひとつ大きな問題は、話の組み立てに“常識”の感覚の欠落があることだ。

 特に象徴的なのが、調査票や学級日誌の問題である。前作のヒロイン・結衣が行方不明になり、彼女の私物が家族である麻衣のもとに送り届けられたが、その中に何故か調査票や学級日誌が入っており、そこから麻衣は佐伯家と接点を持つことになるのだが、果たして学校側が、私物としてこうした資料を親族に渡してしまうことがあり得るだろうか? これらは担当学級についての重要な情報を記載しているわけで、後任の担当教諭にも必要なものだし、何よりも重大な個人情報でもある。おいそれと校外に出すはずがないし、処分するにしても、職員の家族に送りつけることはない。

 もちろん、それを承知の上で、麻衣の手許に届いたことが違和感として残ることを目論んだ可能性もある。しかしそれなら、会話やモノローグの中で、“どうしてこんなものを他人に手渡すのか”という疑問を示さなければいけないはずだ。もし意図的な描写だとしたら、このあたりに触れなかった軽率さはやはり問題と言える。

 余所の子を引き取る、という話に、思春期の女の子が背景を知ろうとしていなかったこともそうだし、怪奇現象が起きてからの人々の反応にも不自然さが目立つ。

 ホラーとは基本的に、不自然な事柄を如何に恐ろしいものとして描くか、恐ろしいものとして観客に認識させるか、にかかっている。そのためには、最低限の常識、現実に起こりえることを踏まえた上で描写する必要があるし、そこに物語独自の論理があるとしても、その論理を予め観客側に認識させなければ有効に機能しない。本篇は、そうした脚本設計の段階で大きな問題を孕んでいたために、ほとんどの要素が機能不全に陥ってしまったようだ。

 監督は日本のホラー映画ブームの初期から活動していた人物であり、決して素養がなかったわけではない。実際、怪奇描写だけなら印象的なものも少なくないのだ。しかし、脚本作りの段階での無思慮と、それを製作の過程でまったく取り除けなかったことが、本篇を“失敗作”としか呼びようのない有様にしてしまった。つくづく、勿体ないとしか言いようがない。



 ファイナル、と銘打ってはいるが、しかしこのシリーズ、まだ終わっていない。

 本篇が公開された年だったと思うが、エイプリルフールに、『呪怨』シリーズの伽椰子が『リング』シリーズの貞子と対決する、というニセモノの予告篇を発表した。これがやたらと好評を博し、「観てみたい!」という意見も出た結果、本篇のエンドロールあとに“製作決定”の特報が付され、2016年6月18日に本当に公開される運びとなった。

 オリジナルの『呪怨』もそうだが、『リング』は日本のホラー映画ブームの先駆け、ひいては日本のホラー映画のスタイルを世界的に認知させるきっかけとなった、極めて偉大な作品となっている。安易に続篇やリメイクを作ったところで、簡単に乗り越えられるわけではない。いっそのこと、こうした無茶苦茶なマッチプランに仕立てて、エンタテインメントと割り切って作ってしまう、というのは正解だろう――案外、本篇に足りなかったのは、そうした“割り切り”だったのかも知れない。



関連作品:

呪怨 −終わりの始まり−』/『呪怨』/『呪怨2』/『呪怨 黒い少女』/『呪怨 白い老女』/『THE JUON―呪怨―』/『呪怨 パンデミック』/『呪怨 ザ・グラッジ3

感染』/『シャッター』/『劇場版 怪談レストラン

20世紀少年<最終章>ぼくらの旗』/『アナザー Another』/『山形スクリーム