『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』

TOHOシネマズ西新井、スクリーン3の前に掲示されたチラシ。

原作:東堂いづみ / 監督:志水淳児 / 脚本:井上美緒 / オリジナルキャラクターデザイン:稲上晃川村敏江香川久、佐藤雅将、高橋晃、中谷友紀子、馬越嘉彦 / キャラクターデザイン&作画監督青山充 / CG監督:加藤康宏 / 美術監督:西田渚 / 色彩設計:澤田豊二 / 撮影監督:高橋賢司 / 音楽:高梨康治 / 主題歌:モーニング娘。'15『イマココカラ』 / 振付:真島茂樹 / 声の出演:嶋村侑浅野真澄山村響古城門志帆東山奈央中島愛潘めぐみ、北川里奈、戸松遥松井菜桜子小堀幸生天目仁美福圓美里、田野アサミ、小清水亜美水樹奈々水沢史絵沖佳苗三瓶由布子樹元オリエ本名陽子、ゆかな、関智一オリエンタルラジオ中田敦彦、藤森慎吾) / 配給:東映

2015年日本作品 / 上映時間:1時間17分

2015年3月14日日本公開

2015年7月15日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video特装版:amazon|DVD Video通常版:amazonBlu-ray特装版:amazon]

公式サイト : http://www.precure-allstars.com/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2015/04/13)



[粗筋]

 春野はるか(嶋村侑)たちプリンセスプリキュアのもとに届いた、1通の招待状。それは一年中お祭りが催されるハルモニア王国からの、春のカーニバルへの誘いだった。今回はプリキュアと妖精たちが招かれており、はるかたちはそこで初めて、自分たち以外にも多くのプリキュアがいることを知る。

 はるかたちと、道中出会った愛乃めぐみ(中島愛)たちハピネスチャージプリキュアとを出迎えたのは、王国の大臣というオドレン(中田敦彦)とウタエン(藤森慎吾)のふたり。彼ら曰く、今年のカーニバルでは、妖精たちに日頃の感謝を伝えるためにも、プリキュアにも歌と踊りで参加して欲しい、とのことだった。歌うのは好きだが、たとえ学校のテストで歌う、というだけでも緊張するくらい、人前で歌うことは苦手なはるかは動揺するが、海藤みなみ(浅野真澄)と天ノ川きらら(山村響)に励まされ、はるかも舞台に立つことを承諾する。

 こうして始まったカーニバルの影で、しかし事件は既に動いていた。実はハルモニア王国は盗賊の手によって占領され、国王たちは幽閉、プリキュアたちが感謝を表現しているあいだにも、妖精たちは盗賊の手によって囚われていた。その盗賊とは誰あろう、はるかたちを出迎えたオドレンとウタエンだったのである。

 王国を奪ったあとで、国王たちがプリキュアを招待していた事実を知って焦った2人組だが、プリキュアたちを舞台に上げて、そのあいだに妖精たちと変身アイテムとを盗むことで彼女たちを無力化することをオドレンたちは目論んだ。

 出番を前に、はるかが戦々恐々とするあいだにも、オドレンたちの悪計は進む。果このままプリキュアたちはハルモニア王国ともども、オドレンたちの手に落ちてしまうのだろうか……?



[感想]

 歴代のプリキュアたちが集結し、力を合わせてひとつの敵、大きな脅威と対決する劇場版『プリキュアオールスターズ』も、本篇で7作目となった。“New Stage”と冠したシリーズを2014年の3作目で一段落させ、ふたたび仕切り直しての今回は、ミュージカル風の作りとなっている。

 もともと『ふたりはプリキュア』1作目のエンディングで既にダンスめいた要素はあったが、テレビシリーズ6年目の『フレッシュプリキュア!』で、作中のモチーフとしてダンスを採り上げたことが本格的なきっかけとなり、以降エンディングテーマは3DCGによるダンスを導入するのがお約束となった。それに合わせて、毎年秋に公開されるようになった劇場版でも、テレビシリーズと同じエンディングテーマが用いられ、幼い観客と一緒に踊るタイミングを設けるようになった。

 ミュージカルそのもの、と言えないのは、本篇の尺の大半が、こうした一連のシリーズでお披露目されたエンディングテーマとダンスを流用しているためである。ダンスがまだ本格的に用いられていなかった『Yes! プリキュア5 GoGo!』までのメンバーは、オープニングテーマにオリジナルの振付を施したものを披露しているが、馴染みのあるダンスはそのまま使う、という姿勢を貫いている。普通ミュージカルといえば、歌詞やダンスを物語の進行に沿って採り入れていくもので、本篇の扱いはむしろ“ヒットパレード”っぽい。2015年の新シリーズ『Go!プリンセスプリキュア』の面々が披露する歌や、悪役コンビの披露する歌はしっかりと物語の枠に入っていて、そこはしっかりミュージカルと断言できるが、全体としては“ミュージカル風”と表現するに留めておきたい。

 ほぼ全篇に歌とダンスがあるので、画面としては華やかになったが、率直に言って、ストーリー面ではだいぶ不満のある仕上がりとなっている。

 基本的に全シリーズ1コーラスと短め、そこに悪役用のものも含め新曲が加えられて“贅沢”と言われればそう見えるが、代わりに話を進めるために使える尺が圧迫され、内容はほとんどない、と言っていい。もともと催されるはずのカーニバルだった、という設定を敷衍して、クライマックスの敵は従来と違う角度から現れてくるが、それが面白さ、カタルシスに繋がっているか、と問われるといささか微妙だ。

 背景や展開そのものにも無理筋の印象は否めない。悪役は「国を盗んだ」と言うが、どうやって盗んだのか。“盗む”というと人目を忍んで気づかぬあいだに、というイメージだが、本篇の描写だと力で制圧したように思われる――そこまでの力はこの悪役にはなさそうだし、そこまでする度胸はなさそうだけれど。歌い踊らせているあいだに妖精やアイテムを奪う、という計画にしても、順番待ちという空白時間がある相手の目をどこまで誤魔化せるものか。ストーリー展開がだいぶ御都合主義的なので、そこに面白さを求めていくと恐らく本篇はまったくピンと来ないだろう。

 しかしそのぶん、映像的には本当に盛り沢山、と言っていい。このシリーズは“オールスターズ”と言い条、あまりにシリーズが長く続きすぎて、最近のプリキュア以外は申し訳程度の出番しか与えられないのが実情だったが、本篇においては、台詞こそなくても確実にワンコーラスと紹介パートで見せ場が与えられている。しかも、前述したように『プリキュア5』以前のプリキュアたちには新たにダンスが振り付けられたうえに、歌の合間に彼女たちの日常を切り取った映像が、恐らくはすべて書き下ろしで織り込まれているのだ。オールスターズでは物足りない想いを味わっていた旧シリーズのファンも、本篇はもう少し満足感を得られるのではなかろうか。

 また、本篇のために書き下ろされたミュージカルパートが、かなり出来がいい。作を追うごとに2Dとの違和感を埋めていき、近作では2Dさながらの活き活きとした表情を見せるまでになった3DCGの、自在なカメラワークで見せる華やかな映像はもちろんのこと、侮りがたいのがゲスト悪役だ。こちらは映像こそ手書きであるものの、歌はプリキュア以上にしっかりとミュージカルになっている。もともとリズムネタでブレイクし、近年では本職さながらのクオリティの歌とダンスをネタに組み込み発展させているオリエンタルラジオの歌唱力が発揮される中盤のシーンはけっこうインパクトが強い。

 また、芸人が演じたこの悪役がコミカルで、事態にさほど深刻さを感じさせないこともあって、本篇は終始陽性なムードを保っている。長篇でストーリー性を追求するとどうしても重いシーンが入ってくるもので、もちろんその“落ち込み”があるからこそ終盤のカタルシスが増すのだけれど、年少者が本来のターゲットである作品だと、それでさえも抱え込むのが辛い、という意見もあるだろう。最初から最後までほとんど“楽しい”という表現で片付けられる本篇は、これまでのふたつの3部作と異なる、“オールスターズ”ならではの魅力を引き出す試みとしては評価出来る。

 それでもやはり、ストーリー部分のぎこちなさは観ていて少々キツいものがあって、大人としての目線では辛い点をつけざるを得ない。しかし、そういう“冒険”に挑むのはこのシリーズらしいし、また同様の趣向を繰り返していくことで洗練させていくのもこのシリーズの美点だ。なかなか感想が書けないままほったらかしているあいだにそろそろ公開が迫りつつある次のオールスターズもどうやらミュージカルの体裁を取っているようだが、きっと着実に本篇以上の仕上がりを示してくれることだろう。



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