『シーズンズ 2万年の地球旅行(日本語ナレーション)』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン5入口に掲示されたチラシ。

原題:“Les Saisons” / 監督:ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾ / 脚本:ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾ、ステファン・デュラン / 製作:ジャック・ペラン、ニコラ・エルゴシ / 撮影:ステファン・オプティ、ミシェル・バンジャマン、ジェローム・ブヴィエ、ロラン・シャルボニエ、フィリップ・ガルギ、エリック・ギシャール、ロラン・フルト、シルヴァン・マイヤール、クリストフ・ポティエ、ジャン・ワレンシク / 録音:フィリップ・バルボ、マルティン・トディスコ、ジェローム・ウィシア、アルメル・マエ、ジェラール・ランス / 編集:ヴァンサン・シュミット / 音楽:ブリュノ・クーレ / 日本盤テーマソング:Crystal Kay『Everlasting』(Universal Music) / 日本語版ナレーション:笑福亭鶴瓶木村文乃 / 配給:GAGA

2016年フランス作品 / 上映時間:1時間37分 / 日本版脚本&演出:三井瑠美 / 日本語版監修:新宅広二

2016年1月15日日本公開

公式サイト : http://gaga.ne.jp/seasons/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2016/1/16)



[粗筋]

 地球の氷河期は2万年前、最低気温に達した、と言われる。その頃の動物は、如何にして寒さに順応できるかが種の存続の鍵だった。適応出来た種だけが、この時代を生き延びることが出来た。

 およそ1万年前、気候の大きな変動が起こり、生命の春が訪れた。大地には多彩な植物が生い茂り、広大な森を築く。そしてそこに、多くの生き物たちが見事な共生関係を形作っていった……



[感想]

 ドキュメンタリー映画、とりわけ自然を題材としたものの制作は難しい。取材によっては想定していたような内容にならないこともしばしばだろうし、制作者たちの用意していた主題に沿った内容だったとしても、それが面白いかどうかは語り口次第だ。仮に場面場面が興味深く、観る側に強く訴えかける問いかけに導くことが出来たとしても、全篇通して観客の関心を引き続けることは容易ではない――はっきり言ってしまえば、眠い仕上がりになってしまう。

 本篇を手懸けたジャック・ペランとジャック・クルーゾの監督コンビは、渡り鳥の生態を驚異の至近距離で撮影した『WATARIDORI』で成功を収めた実績がある。極めて警戒心の強い野生の渡り鳥を、育てるところから始め、人間や撮影機材に慣らしたうえで、間近からその生態を捉えた映像と、多彩な渡り鳥を採り上げつつも物語性を感じさせる語り口は、映画としても充分な見応えがあった。

 その後、同コンビは対象を海に縁の深い静物に絞った『オーシャンズ』を撮影した。こちらも新開発の機材を多数用い、生物たちの特性に寄り添うことで驚くべき映像を多数採り上げていたが、あいにく物語性を構築しきれず、決して映画としての質は高くなかった。最終的に、人間による環境破壊に警鐘を鳴らすような内容にしているが、そこでCGを用い、実態とは一致しない描写を加えたりしたために、テーマの掘り下げに不充分な印象を残すことになったのも問題だったと思う。

 本篇は舞台を陸に移し、森に生きる動物を中心に追っている。『WATARIDORI』のときと同様に被写体となる動物を根気よく追って集めた映像の数々は目を瞠るものがある。狩りをする映像は、様々なパターンを含めて多く見受けられるのだが、本篇のようにオオカミが野生のウマを狙う光景は恐らくこれまでに例を見ないだろうし、縄張りや牝を巡って争うヒグマ同士、バイソン同士、という光景もまた貴重だ。これらは動物の習性についてきちんと学び、辛抱強く追ってきたからこその収穫と思われ、その映像だけでも価値は大きい。

 また、こうした自然を題材としたドキュメンタリー作品が陥りがちな、一貫した物語を構築出来ないが故の退屈さを、昔から生態を変えていない動物の姿を追うことにより、約2万年の生物史、というかたちで補おうとした工夫は評価出来る。生物たちの姿を追う一方で、随所に語ろうとしている時代の文明水準相応しい人間をちらつかせ、作品に筋を通す、というのは巧い趣向だ。終盤で提示されるメッセージへの移行も、このお陰でスムーズなものになっている。

 だが惜しむらくは、それでもやはり全体をひと筋にまとめ切れていない。ひとつひとつの映像は貴重だ、と感じられるが、全体を通すとメリハリに乏しく感じられる。メッセージ自体の意義について考える前に意識が分散してしまうのだ。個人的な話だが、本篇を観賞した日は眠りが不充分だったことも手伝って、終盤手前くらいまでは起きているのもしんどかった。

 肝心のメッセージにしても、最後で思慮の浅さをやや露呈した格好だった『オーシャンズ』よりは納得できるが、少々説得力を欠く嫌いがある。大規模な開発、森林伐採が多くの動物たちに新たな冬を齎した、という発想はその通りと言えようが、その前の“里山”的な自然の変化はあまりに特定の地域を意識しすぎているように思う。確かに人類がその発展のために多くの自然を作り替えていったことは確かだろうが、語られているほど大規模な影響を残せたかどうか。ああした、自然の営みを人間の生活の一部とする発想はそれこそ“里山”という概念のある日本のような、比較的狭い土地でこそ成立するもので、そこまで多くの生態系を乱すところまで行っていたかにはやや疑問を覚えた。

 しかし、考え方としては示唆に富むものであり、興味深いのは確かだ。この主題に沿って集められた映像も重い。

 主張の是非はともかく、野生動物という制御の出来ない被写体を相手に、これだけの映像を集め、地球史を概観するかのような感覚を生む物語を構築し、メッセージに充分な力をもたらしていることは評価出来る。

 細かいことなど考えず、動物たちの貴重な映像だけでも充分に楽しめるだろう――ただし、鑑賞にあたっては体調に留意し、予めしっかり睡眠を取っておくこどをお勧めする。さもないと、細部が記憶からこぼれてしまうかも知れません。



関連作品:

WATARIDORI』/『オーシャンズ

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