『壊れた心』

TOHOシネマズ日本橋、5階廊下に掲示されたポスター。

英題:“RUINED HEART: Another Lovestory Between A Criminal & A Whore” / 監督&脚本:ケヴィン / 製作:ケヴィン、ステファン・ホール、アチネット・ビラモアー / 撮影監督:クリストファー・ドイル / 美術:フランシス・ゼーダー / 編集:カルロス・フランシス・マナタド / 音響デザイナー:ファビアン・シュミット / 振付:ミア・カバルフィン / 音楽スーパーヴァィザー:ステファン・ホール / 音楽:ブレッツェル・ゴーリング、ケヴィン / 出演:浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン、アンドレ・プエルトラノ、ケヴィン、ヴィム・ナデラ / 日本配給未定

2014年フィリピン、ドイツ合作 / 上映時間:1時間13分 / 日本語字幕:間瀬康子

第27回東京国際映画祭コンペティション上映作品

日本公開未定

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/10/28)



[粗筋]

 フィリピンのスラムで、組織の暗殺者を務める日本人(浅野忠信)。だが、暴力を振るわれていた娼婦を助けてしまったことから、絶望的な逃避行に身を投じる――



[感想]

 ちょうど本篇を鑑賞する少し前あたりから映画感想に割く時間がかなり制限されてしまい、一般公開される予定のない作品や、鑑賞自体が遅れてしまい劇場公開が終了した、ソフト化が近い作品などを後回しにしてきたのだが、本篇のようにその後、本当に劇場公開の予定が立たない作品の扱いがあとになって難物になっている。特にこの作品のように、台詞でストーリーを語らず、全篇がイメージで構築されているようなものだと、これだけ時間が経つと、よほどクオリティが高くないと印象に残らないのだ。

 ただ、当時のメモを参照すると、鑑賞当時でさえ細部の辻褄についてはほとんど理解を放棄している。もしかしたら舞台となっている土地の常識に接していないと理解が難しい点があるのかも知れないが、それにしても奔放すぎて、観客それぞれに解釈するにしてもちょっといたずらに幅が広すぎる。

 そのうえ、全篇にわたって音楽が鳴り響き、しかも台詞が少ないから、なまじ美術やカメラワークにこだわりが窺えるだけに、まるで長篇のPVを見せられているような印象が強い。それ故、雰囲気を好きになる人はいるかも知れないが、物語性を汲み取ったり、そこに情緒を感じ取ろうとする向きには、恐らく最後までピンと来ない仕上がりである。何せ、いま思い出そうとしてもまったく蘇ってこないのだが、鑑賞直後に書いたメモにさえ、作中登場する犯罪組織がいったい何をやっている連中なのか解らない、と書いてあるくらいなのである。

 ただ、とにかく映像の残すインパクトは強い。終盤の逃走劇や、終盤の構図などは記憶に残っている。特に本篇で面白いのは、作中随所で、やたらと浅野忠信を間近から捉えた映像が挿入されていることだ。これらのカットはどうやら、浅野忠信演じる殺し屋が包帯を巻いて吊している腕の何処かに仕込まれているらしい――いったいあの包帯にどういう意味が、という疑問は序盤からあったはずだが、他のカメラから察しがつくところにあえてカメラを潜めて、撮影した絵を採り入れる、という発想はなかなか面白い。その動きの化け強い映像も、編集によって本篇のテンポを崩さないように用いている、そのセンスが優れていることも認めねばならないだろう。

 とはいえ、浅野忠信が出演しているにも拘わらず日本での配給が未だ決まっていない(決まっているのかも知れないが、半年以上経って情報を出せる段階にすらない)という事実からも、受け手を極端に選ぶ作品であることは察しがつくのではなかろうか。独特の魅力と熱気はあるのだけれど、正直なところ私には積極的にオススメはしづらい内容だった――記憶を辿る限りは。もういっかい鑑賞して確かめてみたくても、今のところその手段がないのも歯がゆいのだが。



関連作品:

バトルシップ』/『47RONIN』/『清須会議』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド

愛の神、エロス』/『海洋天堂』/『ラビット・ホラー

ストリート・オブ・ファイヤー』/『ウィ・アンド・アイ』/『地球、最後の男

RAIN』/『バンコック・デンジャラス』/『レイン・フォール/雨の牙』/『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン