『フューリー』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン入口受付の奥に掲示された巨大タペストリー。

原題:“Fury” / 監督&脚本:デヴィッド・エアー / 製作:デヴィッド・エアー、ビル・ブロック、イーサン・スミス、ジョン・レッシャー / 製作総指揮:ブラッド・ピット、サーシャ・シャピロ、アントン・レッシン、アレックス・オット、ベン・ウェイスブレン / 撮影監督:ローマン・ヴァシャノフ / プロダクション・デザイナー:アンドリュー・メンジース / 編集:ドディ・トーン,ACE / 衣装:オーウェン・ソーントン / ヘア&メイクアップ・デザイナー:アレッサンドロ・ベルトラッツィ / 音楽:スティーヴン・プライス / 出演:ブラッド・ピットシャイア・ラブーフローガン・ラーマンマイケル・ペーニャジョン・バーンサルジェイソン・アイザックス、アナマリア・マリンカ、アリシア・フォン・リットベルク、スコット・イーストウッド / 配給:KADOKAWA

2014年アメリカ作品 / 上映時間:2時間14分 / 日本語字幕:松浦美奈 / 字幕監修:浪江俊明 / PG12

2014年11月28日日本公開

公式サイト : http://fury-movie.jp/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/11/28)



[粗筋]

 1945年4月、追い込まれたドイツ軍は“総力戦”と称し、最後の足掻きをしていた。国民すべてを兵力と捉え、老若男女の別なく動員したのである。

 対する米軍も、着実に制圧しつつあったが、しかし過酷な消耗戦を強いられていた。独軍の誇る戦車ティーガー武装、装甲において米軍の戦車群より秀でており、米軍の戦車は各地で撃破されている。

 ドン・“ウォーダディ”・コリアー軍曹(ブラッド・ピット)をリーダーとする戦車、愛称“フューリー”は各地の激戦を生き抜いてきたが、ドイツ侵攻のなか、副操縦士のレッドを失ってしまった。命からがら辿り着いた前線基地で、新たな任務とともに補充された人員は、よりによって新兵だった。

 コリアーのもとに配属されたノーマン二等兵(ローガン・ラーマン)にしても、これは“手違い”としか思えない事態だった。本来彼はタイピストとして訓練を受けており、人に銃口を向けた経験もない。だが、既に次の任務を控えていたコリアーは問答無用でノーマンを副操縦席に座らせた。

“フューリー”らに課せられた任務は、抵抗を続ける街の制圧である。当初、別の部隊の軍曹が指揮を執っていたが、ノーマンが森の中に潜んでいた伏兵に気づきながらも引き金を引くのを躊躇したことがきっかけで指揮官は絶命、コリアーが小隊長の役割を受け継ぐことになった。

 それからわずか1日のあいだに、ノーマンは戦争の凄惨さと、その重みを知ることとなる……。



[感想]

 率直に言えば、本篇を構成する要素はとことんベタだ。第二次世界大戦末期のドイツが舞台で、新兵の視点から物語は綴られる。敵味方問わず重ねられる蛮行、それでも垣間見える情や弱さが誘う感動。ごく大雑把に抽出していくと、本当にありきたりの話に思える。

 ただ、この作品にはそれらに“芯”が通っている。安易にキャラを立てているわけではない、しかし生身の感触を観る者にもたらす登場人物たちが、過酷な現実にそれぞれのスタンスで向き合っているのが解る。本篇は決して実話に因っているわけではないはずなのだが、細部に説得力が備わっており、ひとつひとつの行動、反応に納得がいく。それが本篇の迫力に繋がっている。

 本篇で描かれる“作戦”はさほど緻密なものではなく、全般に行き当たりばったりだ。だが、本当に終盤にさしかかった最前線で繰り広げられる細かな衝突というのは、実際ああしたものになるのが当然だろう。求められる任務のためにはスピードが尊ばれ、充分な情報を集め万全を期す、などという真似が出来るはずもない。当然のように多くの死者が出るし、ノーマン二等兵のように戦闘経験どころかろくに訓練も受けていないような兵士が補充されるが、それで歩みを止めるわけにも行かない。コリアー軍曹の淡々とした態度や、隊を離れたときに見せる沈痛な表情が象徴的だ。

 そんななかで辿り着いた街における、兵士たちの休息の取り方もまた印象深い。街の女たちといっときの情事を楽しむ者たちがいる一方で、コリアーだけは違った形でこの余暇を利用する。このスマートな振る舞いには心和むものがあるが、それも“ここが戦場である”という現実が破壊するのだ。ぞのごく当たり前なことが、観る者の胸を軋ませる。

 こうした過程の描写が緻密であり、堅牢であるからこそ、クライマックスのくだりが引き立つ。最後の穏やかな時間に繰り広げるやり取りは大枠としてははベタだし、戦略と呼べるほど練られていない策で臨む戦いは内容的には凡庸かも知れない。しかし、ここに至るまでに向き合ってきた現実、それぞれの心象が、最後わ忘れがたいものに変えている。

 本篇は撮影において、現存する第二次世界大戦当時の戦車を実際に用いたらことでも話題となっている。本物ならではの重量感や威圧感、それが動くヴィジュアルのインパクト、こうした本物が存在しているからこその戦闘表現などの点も、本篇に意義をもたらしているが、そればかりではないのだ。細部へのこだわりが、フィクションだということさえ忘れさせる、出色の戦争映画である。観たあとで、物語のあとについて想いを馳せずにいられないくらい、この物語には力がある。



関連作品:

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