『ゲッタウェイ スーパースネーク』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン6前に掲示されたポスター。

原題:“Getaway” / 監督:コートニー・ソロモン / 脚本:ジョン・フィネガン、グレッグ・マクスウェル・パーカー / 製作:コートニー・ソロモン、アラン・ゼマン、キシュ・ディアマント、クリストファー・ミルバーン / 製作総指揮:ジュリアス・R・ナッソー、ウェイン・マーク・ゴッドフリー、ロバート・ジョーンズ、ボビー・ランゲロフ、ジョン・グッドマン、デニス・L・ペリーノ、クローディア・ブリュームフーパー、イアン・ハッチンソン、ジョエル・シルヴァー、スティーヴ・リチャーズ / 撮影監督:ヤロン・レヴィ / プロダクション・デザイナー:ネイト・ジョーンズ / 編集:ライアン・デュフレス / 音楽:ジャスティン・バーネット / 出演:イーサン・ホーク、セレーナ・ゴメス、ジョン・ヴォイトレベッカ・バディグ、ブルース・ペイン / 配給:Showgate

2013年アメリカ作品 / 上映時間:1時間30分 / 日本語字幕:種市譲二

2014年9月20日日本公開

公式サイト : http://getawaymovie.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2014/09/30)



[粗筋]

 ブルガリア、ソフィアの街を、シェルビー・マスタングGT500スーパースネークが暴走していた。歩道であろうと路地であろうと構わず駆け抜け、警察を手玉に取り、幾台ものパトカーをクラッシュで破壊していく様は、市民を嘲笑うかの如くだったが、スーパースネークの運転席に座る男の表情は固く、追い詰められていた。

 彼、ブレント・マグナ(イーサン・ホーク)は元は凄腕のレーサーだった。いっときはその運転技術を駆使して危険な仕事にも就いていたが、今は現役を退き、妻のリアン(レベッカ・バディグ)とともにソフィアで静かな暮らしを送っていた。しかしクリスマスのその日、家に帰ると、中は荒らされ、リアンの姿は消えていた。やがてかかってきた電話の声の主(ジョン・ヴォイト)は、自分の指示に従わなければリアンは二度と戻らない、と告げ、とある駐車場に駐められているスーパースネークを盗むよう命じる。

 周到にカメラや通信機器が用意されたスーパースネークを“奪った”ブレントは、声の指示に従い、クリスマスで華やぐ街で破壊行動に駆り出された。

 さんざん各所で騒動を起こし、ようやく与えられた小休止で、ブレントが恐怖と罪悪感に苛まれていると、突如車にひとりの少女(セレーナ・ゴメス)が乗り込んできて、ブレントの頭に拳銃を突きつける。

 てっきり強盗かと思ったが、少女は自分が車の持ち主だ、と主張する。だが、彼女の話は奇怪だった。警察から連絡があり、盗まれた車がブレントの休憩していた場所にあることを知らせてくれたのだという。どうして犯人の逮捕や車の確保をせずに、持ち主に連絡する必要がある?

 どうやら少女も、声の男の計画に巻き込まれているらしい。その意図を理解出来ぬまま、ブレントはふたたび暴走を命じられるのだった……



[感想]

 何はともあれ、警察、とりわけパトカーに恨みがあるなら必見である。本篇中、いったい何台の警察車両が潰されたことか。カーアクションのある映画ならたいていは何台か犠牲になるのが常だが、本篇は桁違いである。

 そうして無数のパトカーを葬るに至る激しいカーアクションが、本篇にはふんだんに盛り込まれている。乗用車を用いて市街地でやってみたい、と思うような無茶苦茶が可能な限りフォローされていて、ちょっとやんちゃな願望を胸に秘めているようなひとにとってもスカッとする内容だ。

 ただ惜しいのは、そのための背景と、主人公ブレントに対して強要される行為が必ずしもうまく結びついていないことだ。ごく大雑把に総括すれば、「要するにやらせてみたかっただけでしょ」ということになってしまい、少しでも理性的に観てしまうと、結末が快く受け入れられなくなる。

 もうひとつ、本篇で引っかかるのは、物語の鍵を握る同乗者となる少女である。思いがけず介入してしまったかのように見せかけて、黒幕の計画にも組み込まれた人物であり、最終的には物語の進行にも重要な役割を果たすキャラクターなのだが、その人物像も必然性もどうにもチグハグだ。あえて彼女を計画に組み込んだ理由がいまひとつ解らないこともそうだが、彼女の言動が全般にぶれていて、観る側は彼女に共感していいのか、疑いをもって観ていればいいのか判断をつけにくい。また、会話の内容からするとかなり頭のいい人物のようだが、それならブラントの行動と物云いがあまり一致しないことを早く訝り、協力はしないまでも、事情を確かめるなり、何らかの形で説得や交渉を試みるぐらいはしてもいいはずだ。動揺はしていたのかも知れないが、はじめから完全に悪党と割り切って接しているのがどうも設定とそぐわない。あそこでもっと理知的な振る舞いをしてくれないと、後半での活躍に説得力が生まれないのだ。

 本篇にはいちおう背景に謎や秘密はあるが、あくまで主役は破天荒なカーアクションの数々、という姿勢が窺える。そのわりには、謎や秘密の整理が不充分で、展開に唐突な印象を残してしまったり、特に少女を巡る描写でしこりを残してしまっているのが良くない。そのあたりで、折角の掟破りのアクションの数々が効果を損ねてしまった。

 その一方で、物語はクリスマスの出来事として描かれており、お陰で華やかな街が無法な乗用車によって破壊されていく、という様がある意味“楽しめる”のも本篇の魅力となっているのだが、そのために物語の時間帯が夜に集中してしまい、折角のカー・チェィスが少々見づらいものになっているのも勿体ない。車体のあちこちに仕掛けられたカメラの映像を流用したヴィジュアルにはセンスを感じるものの、アクションの見せ方としては必ずしもすべてが成功しているわけではないのだ。

 ただ個人的にはクライマックス、最後の追跡劇の見せ方はかなり出色の出来映えだった、と思う。この設定だからこそ可能な方法であると同時に、決して完成度は高くないものの、ドラマやサスペンスを介して築き上げた人物像が最も活きるくだりである。実は演者の顔はここではほとんど映らないのに、その表情が窺える、というのが見事なのだ。

 設定は魅力的だし、ちりばめられたカー・スタントの数々には優れた趣向が少なからず見受けられる。主人公を演じたイーサン・ホークは表情でこの人物に芯を通しているし、脚本時点でぶれていたと思われる少女に曲がりなりにも説得力をもたらしているセレーナ・ゴメスも健闘している。もっと丹念にブラッシュアップしていれば、と惜しまれるが、その意欲と熱意は確かに感じられる。何より、あんまり堅苦しく考えなければ、1時間半、スリルと興奮が味わえるはずである。



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