『X−MEN:フューチャー&パスト(3D・字幕)』

TOHOシネマズスカラ座、スクリーン入口の階段前に掲示された、ヒュー・ジャックマンのサイン入りポスター。

原題:“X-MEN : Days of Future Past” / 監督:ブライアン・シンガー / 脚本:サイモン・キンバーグ / 原案:ジェーン・ゴールドマン、マシュー・ヴォーン、サイモン・キンバーグ / 製作:ローレン・シュラー・ドナー、ブライアン・シンガー、サイモン・キンバーグ、ハッチ・パーカー / 製作総指揮:スタン・リー、トッド・ハロウェル、ジョシュ・マクラグレン / 撮影監督:ニュートン・トーマス・サイジェル / プロダクション・デザイナー:ジョン・マイヤー / 編集&音楽:ジョン・オットマン / 衣装:ルイーズ・ミンゲンバック / 出演:ヒュー・ジャックマンジェームズ・マカヴォイマイケル・ファスベンダージェニファー・ローレンスハル・ベリーニコラス・ホルトエレン・ペイジピーター・ディンクレイジショーン・アシュモア、オマール・シー、エヴァン・ピーターズ、ダニエル・クドモア、ファン・ビンビン、エイダン・カント、ブーブー・スチュワート、イアン・マッケランパトリック・スチュワート / バッド・ハット・ハリー/ドナーズ・カンパニー/サイモン・キンバーグ製作 / 配給:20世紀フォックス

2014年アメリカ作品 / 上映時間:2時間12分 / 日本語字幕:松崎広

2014年5月30日日本公開

公式サイト : http://www.foxmovies.jp/xmen/

TOHOシネマズスカラ座にて初見(2014/06/24)



[粗筋]

 これは未来の話。

 世界は危機に瀕していた。ボリヴァー・トラスク博士(ピーター・ディンクレイジ)が基礎を設計した対ミュータント兵器・センチネルはミュータントのみならず、将来的にミュータントの遺伝子を残す可能性のある人間をも“駆除”し、世界には一握りの人間を残すばかりになっていた。

 かつては敵対していたプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)とマグニートー(イアン・マッケラン)は共に手を携え、最後の賭けに打って出ることを決める。鍵を握るのは、キティ・プライド(エレン・ペイジ)だった。彼女は被験者の意識を過去の世界に送り、現在の状況を変える能力を持っている。
 アメリカ政府がセンチネルの本格的な開発に着手した理由は、その危険性をいち早く察知したミスティークことレイヴン(ジェニファー・ローレンス)がトラスク博士を殺害したためであった。そのことで政府は却ってセンチネルの必要性を認識し、捉えたミスティークの遺伝子をベースにセンチネルを最強の兵器へと完成させてしまった。つまり、ミスティークに暗殺を踏み止まらせることが出来れば、現状を変えられるかも知れない。

 しかしキティの能力は、2週間程度であればともかく、遠い過去に送るとなれば精神への影響が著しい。心が壊れてしまう危険がある。この危険な使命が遂行できるのは、異常な恢復能力を持つミュータントであるウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)だけだった。

 過去の世界を変えるのにどれほどの時間を費やすのか解らない。力を全開にすれば、いずれセンチネルに捕捉されてしまう。だが他に、この窮地を打開する術はなかった。

 かくして過去の世界――1973年に飛んだローガンは、ミスティークを探すため、ふたりの人物の協力を仰ぐべく接触を試みる。若き日のプロフェッサーXことチャールズ(ジェームズ・マカヴォイ)と、マグニートーことエリック(マイケル・ファスベンダー)のもとへ――



[感想]

 昨今、アメコミ原作による映画は完全にハリウッドのメイン・ストリームを締めるものになった感がある。ハード、シリアス、コメディ・タッチとトーンは違えどスリルと冒険に彩られた作品群2は、年齢を問わず惹きつける力があるからだろう。とりわけ、『アベンジャーズ』というかたちで同時期に製作されているヒーローたちを一堂に集め、それを軸に作品世界を膨らませていったマーヴェル・スタジオの存在は大きい。

 だが、同じマーヴェル作品でありながら、その『アベンジャーズ』には加わっていない(原作では合流しているものもあるそうだ)この『X−MEN』のシリーズは、他のマーヴェル作品のみならず、アメコミ原作作品のどれとも異なる存在感を放っている。

 最も大きな理由は、2000年に作られた第1作から、すべて同じ世界観、かつ基本的には同じ俳優によって撮られていることだ。

 センセーションを巻き起こしたクリストファー・ノーラン版『バットマン』や、ユーモアで彩り大人の娯楽として評価された『アイアンマン』が3作で完結する一方、『スパイダーマン』がキャスト・スタッフを一新して仕切り直され、『ファンタスティック・フォー』も全面的リブートが発表されている。CGを多用しているとは言い条、基本的には若者が選ばれるヒーローたちを、延々同じ人物が演じ続けることが難しく、観る側もそれに付き合い続けることが難しいから、こうしてあちこちが区切りがつけられているのかも知れない。

 比較すると、このシリーズの、14年に亘ってスタッフ・キャストが連携している、という状況がかなり特殊であることが解るはずだ。扱いの低かったキャラクターの俳優が入れ替わったり、同じ名前で立ち位置が変わったり、2011年に製作された『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』において“X−MEN”誕生の経緯を描くために若き日を別の俳優が演じる、といった変化が打ち出され、スピンオフである『ウルヴァリン』のシリーズも加えると、監督やスタッフも違ってはいるのだが、1作目のブライアン・シンガー監督や製作陣が何かしらのかたちで携わり、きちんと一脈通している。実際、本篇に先行する『ウルヴァリン:SAMURAI』にしても、物語は直接繋がっているわけではないが、そのラストは本篇の展開を仄めかしていた。

 それほど長寿となったこのシリーズの、『ウルヴァリン』を含めると7本目の劇場用作品となる本篇には、2作目のあとでシリーズの表舞台から離脱、製作や原案に携わるのみだったブライアン・シンガーが監督に復帰し、またシリーズでも特に高い評価を受けた『X−MEN:ファースト・ジェネレーション』の監督&脚本が原案に名を連ね、いわばオリジナルのスタイルで、特に評価の高かったスタッフのアイディアを採り入れたかたちで製作されている。本家マーヴェル・スタジオが『アベンジャーズ』サーガで爆発的に支持されていることに触発された――というのはちとうがち過ぎかも知れないが、この布陣からも製作者の気合のほどが窺える。

 しかもキャストのほうも、まさにこのシリーズの“オールスター”状態だ。全作に登場している(『ファースト・ジェネレーション』にもオマケ程度だが顔を出している)ウルヴァリンを筆頭に、ストームやミスティーク、途中からエレン・ペイジに変わったキティ・プライドらが登場するばかりか、シリーズの要たるプロフェッサーXとマグニートーに至っては、若き日と後年のふた組が共演している。詳しくは書けないが、他にもお馴染みの顔が多く連なっており、シリーズを通して鑑賞してきたひとならこれだけで嬉しくなる。

 過去と未来、双方で同時に危機が発生し、そのなかで可能な限りたくさんのミュータントたちを登場させ、見せ場を作る――こんな、無謀すぎるようにしか聞こえない挑戦を、本篇はしかし、ストーリー的に見事に成立させてみせた。

“タイムスリップ”がどの程度、歴史に影響を与えるのか、それが当事者にとってどのように感じられるのか、という点をあまりに軽く見ているように思うが、それは正直なところ、多少は無頓着でいたほうが作り手にとっても観客にとっても心地好い、というのは恐らく製作者も自覚している。その中で、歴史改変とは別のところにルールを課し、プロフェッサーXとマグニートーという指導者の、未来と過去とでの意識の違いをドラマの肝として巧く操り、観客の関心を絶え間なく惹き続ける。未来のプロフェッサーの泰然とした姿に対し、心身共に荒れている若きチャールズの、ときどき見せるユーモアが利いている。

 登場するミュータントが多いだけに、それぞれに際立った見せ場をふんだんに用意する、ということは難しく、好きなキャラクターを存分に堪能できる、というわけではないのだが、ウルヴァリンやクイックシルヴァー(エヴァン・ピーターズ)、またちょっとでも名前のあるミュータントたちはいずれも、それぞれの能力を活かした戦い方で魅せてくれる。クイック・シルヴァーの異常な行動速度を活かした“瞬殺”ぶりは本篇でも特にインパクトが強いし、未来のパートでは旧シリーズでは考えられなかったチームプレイが見られるのも、シリーズを通して観てきた者には感慨深い。そのうえで、攻撃力最強である若きマグニートーが終盤で見せる暴走ぶりは、このオールスターズのクライマックスを彩るに相応しい迫力である。尺を伸ばしすぎない範囲で詰めこんだ“見せ場”の数々に、飽きるいとまは皆無だ。

 そして何より本篇の見事なのは、結末である。このシリーズが追い求めてきたテーマに合致する、かつ過去の出来事を無駄にせずに総括するエピローグは、本篇だけ見ても感動的だろうが、シリーズをずっと追ってきた者ほど胸に響くはずである。

 14年にわたって積み上げてきたものを無駄にしない重厚さと精緻さとを実現した、堂々たる総決算と言っていい――実際には既に新たな続篇が、再度のブライアン・シンガー監督登板、そして若い頃のキャラクターによるストーリーにて製作されることが発表されており、シリーズのファンにはまだお楽しみが待っている格好だが、とりあえず本篇に接して、映画界でも稀有の歴史を重ねてきた感慨に浸るのも悪くない。



関連作品:

X-MEN2』/『X-MEN:ファイナル ディシジョン』/『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』/『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』/『ウルヴァリン:SAMURAI

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