『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2D・字幕)』

TOHOシネマズ渋谷、スクリーン6入口に掲示されたポスター。

原題:“Captain America : The Winter Soldier” / 監督:アンソニー・ルッソジョー・ルッソ / 脚本:クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー / 製作:ケヴィン・ファイギ / 製作総指揮:スタン・リー、ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンゾ、マイケル・グリロ / 撮影監督:トレント・オパロック / プロダクション・デザイナー:ピーター・ウェナム / 編集:ジェフリー・フォード / 衣装:ジュディアナ・マコフスキー / 音楽:ヘンリー・ジャックマン / 出演:クリス・エヴァンススカーレット・ヨハンソンセバスチャン・スタンアンソニー・マッキーコビー・スマルダーズエミリー・ヴァンキャンプヘイリー・アトウェルロバート・レッドフォードサミュエル・L・ジャクソン / マーヴェル・スタジオ製作 / 配給:Walt Disney Studios Japan

2014年アメリカ作品 / 上映時間:2時間16分 / 日本語字幕:林完治

2014年4月19日日本公開

公式サイト : http://cap2.jp/

TOHOシネマズ渋谷にて初見(2014/04/19)



[粗筋]

 ヒーローたちの混成チーム“アベンジャーズ”の戦いが終わったあとも、リーダー格である“キャプテン・アメリカ”ことスティーヴ・ロジャーズ(クリス・エヴァンス)は“S.H.I.E.L.D.”のために働いていた。

“ブラック・ウィドウ”ことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)と共に遂行した、“S.H.I.E.L.D.”所属船舶の奪還作戦で、しかしスティーヴはナターシャがひとりだけ別行動を取ったことに不審を覚える。実は彼女は、船舶のデータを抜き取る別の任務をS.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)から帯びていた。

 スティーヴの詰問に対し、ニックは「すべての情報を共有する必要はない」と嘯く。そしてスティーヴに、ずっと秘密に進めてられていた計画の一端を明かした。それは、蓄積した膨大なデータに基づき、危険人物を予め排除するための防衛システムだった。ニックはこのシステムに自信を持っているが、スティーヴにはそれは正義ではなくただの“恐怖”としか思えなかった。

 そんな矢先、突如としてニック・フューリーが何者かによって襲撃を受ける。どうにかスティーヴの自宅に逃げこむものの、そこも嗅ぎつけられ、スティーヴが襲撃者を追ったものの取り押さえることも出来ず、そのあいだにニックの身体は冷たくなっていた。

 直前にニックがスティーヴに与えた忠告は、「誰も信じるな」。その言葉が示唆する通りに、ニックを失ったS.H.I.E.L.D.本部に赴いたスティーヴを、特殊部隊が襲撃する。鍛え抜かれた精鋭も、スティーヴの身体能力を凌駕することは出来なかったが、そんな彼に、互角に対峙する敵が現れる。

 果たして、S.H.I.E.L.D.内部で何が起きているのか。味方がごく限られているこの状況で、“キャプテン・アメリカ”に活路はあるのか……?



[感想]

 マーヴェル・コミックのヒーローを結集した、近年最大級のスペシャル・ムービー『アベンジャーズ』に参加したヒーローの中でも、キャプテン・アメリカの位置づけは特異と言っていいのではなかろうか。

 ヒーローたちはみな特殊な境遇にいる者だが、キャプテン・アメリカはもともと純然たる軍人、しかも第二次世界大戦当時の人物だった。もともと貧弱ですらあった肉体を実験により強化してヒーローとなり、壮大な野望と対峙するも、運命の悪戯から氷づけとなり、気づけば現代にいた。肉体は若いが年齢的には老人、かつての友人もほとんど鬼籍に入っており、孤独故にメンタリティも老成している。他の誰よりも記憶に残り、期待を背負っているが故に、『アベンジャーズ』では名前通りにキャプテン役を担う格好となった。作品自体も、『アベンジャーズ』の企画が本格的に動いたあとで作られたため、第1作はほかのマーヴェルヒーロー作品よりも如実にアベンジャーズ』にリンクした作りとなっている。

 そのくせ、このキャプテン・アメリカはほかのヒーローたちと比べて、際立った特徴というものがない。ハルクは怒りによって変身し、アイアンマンは技術者が自ら設計したスーツに身を包んでいるので常に進化を繰り返す。マイティ・ソーに至ってはそもそも神様だ。独立した作品が製作されていないホークアイや、本篇にも登場するブラック・ウィドウでさえ、解りやすい特徴がある。しかしキャプテン・アメリカだけは、本質的には“普通の人間”なのである。飛べるわけではなく、突出した弓の技術があるわけではなく、スパイの技能に長けているわけでもない。人間が普通に持つ身体能力のポテンシャルが高められているだけでしかないのだ。

 しかし、そういうシンプルな能力だからこそ、他のヒーローたち以上に、ある意味で正統派のヒーローとしての活躍が出来る。たとえばアイアンマンが狭いエレベーターの中で破壊のエキスパートたちと肉弾戦を繰り広げることはないだろうし、空を飛ぶ兵器に辿り着くために四苦八苦することもない。神であったり、組織から排除される存在だったハルクが、こうして組織の内部に巣くう陰謀と対決する機会などはあまり得られないだろうし、そんなシチュエーションを無理矢理用意するのは不自然だ。かといって、『アベンジャーズ』という、この極端に個性の異なるヒーローが競演することで生じる軋轢もドラマの一部となるような作品で、本篇で描かれたような陰謀とは対決出来ない。

 つまり、ここで描かれているのは、まさに“キャプテン・アメリカ”というヒーローの特徴に極めて相応しい事件であり、正統派のヒーローものの趣を備えたエピソードなのだ。だから、『アベンジャーズ』の他の作品にあるのとは異なる――そして、ある意味ではヒーローものに対していちばん素直に欲しい、と感じる類の興奮とカタルシスが、本篇にはある。

 内部から蝕まれていく組織、誰が敵か味方か解らない状況、そして攻撃を仕掛けてくるのはこれまでにない強敵。そういう状況のなかで、思わぬかたちで巡り逢う戦友や、手を貸してくれるひとびとの存在が希望をもたらす。『アベンジャーズ』以外のところから登場する新たな味方の使い方は無論だが、敵の位置づけも巧妙だ。『アベンジャーズ』ではなく、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』から引っ張ってきた要素がスティーヴを翻弄すると共に、彼の意思、覚悟を問いかける。

アベンジャーズ』含むマーヴェル・コミックのシリーズは作を追うごとにクライマックスが派手になっているが、本篇もかなり盛大な展開である。しかし、映像自体を支えるのはあくまで“キャプテン・アメリカ”の、空を飛んだりビームを出したりは出来ないが、桁外れの身体能力がある、というヒーロー像に相応しいアクションの数々である、というのも快い。圧倒的なスピードとパワーで多数の敵を圧倒する一方、タイトルにもある“ウィンター・ソルジャー”との決戦では、そのずば抜けた戦闘能力を激しくぶつけ合う。そこに滲む葛藤や、キャプテン・アメリカなりのヒーローとしての意識がまた、このシークエンスに悲愴な味わいを加えている。マーヴェル作品は、本格的に製作されるようになった当初からドラマとしての見せ方が巧いものばかりだったが、もはやその質は安定している、と言っていい。

 マーヴェル・ユニヴァースの作品はそれぞれアクションの見せ場が際立ち、単品でのカタルシスの組み立て方が絶妙なので、単独で鑑賞しても面白いのは間違いないのだが、それでも出来る限りすべての作品に目を通したほうがいい、と言わざるを言えないのが憎いところである。だがそんななかでも、“キャプテン・アメリカ”の今回のエピソードは次のヒーロー再結集に向けて、非常に重要なターニング・ポイントを描いている。2015年に公開が予定されている『Avengers : Age of Ultron』を鑑賞するつもりの方は、他の作品を飛ばしても、本篇だけは取り漏らすべきではないだろう――あれを愉しみにしていて本篇を外す、なんてひとがいるとはどーしても思えないんだけど、念のため。



関連作品:

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー

インクレディブル・ハルク』/『アイアンマン』/『アイアンマン2』/『マイティ・ソー』/『アベンジャーズ』/『アイアンマン3』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド

ウェルカム・トゥ・コリンウッド

ファンタスティック・フォー:銀河の危機』/『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』/『ヒッチコック』/『ロボコップ(2014)』/『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』/『ブラック・スワン』/『リンカーン/秘密の書』/『ザ・リング2』/『スノーホワイト